Open Innovation Platform
FOLLOW US

【NCC 2016 TOKYO DAY2】人間と人工知能が共生する社会を作るために必要なこと

2005年から始まり今回で13回目となる、THE NEW CONTEXT CONFERENCE*のDAY 2はAI(人工知能)に関するセッションであった。(DAY 1 ブロックチェーンの真実の記事は こちら

オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の研究で、今後10~20年で47%の仕事が機械に取って代わられるという内容が日本のメディアにも取り上げられ、衝撃を受けた人も少なくないのではないだろうか。本カンファレンスでは、そのような「人間」対「人工知能」ではなく、どうやって人間と人工知能が”共生”することで豊かな生活が送れるのか、人々の生活が変わるかに関して国内外の有識者を招いて様々な観点からディスカッションが行われた。
本記事では、各セッションで議論された内容の概要を紹介する。

 THE NEW CONTEXT CONFERENCE全コンテンツのアーカイブ映像はDG Lab協賛企業(法人)のみの限定配信です。DG Lab 協賛企業の詳細は こちら をご確認ください。

*THE NEW CONTEXT CONFERENCE:伊藤穰一がホストとなり、最先端のインターネット技術やその周辺で生まれるビジネスについて、国内外における各分野の有識者と議論を深める場。ウェブサイト:http://ncc.garage.co.jp/

また、次回のTHE NEW CONTEXT CONFERENCEは下記にて開催予定です。

日時:2016年11月4日-5日
場所:サンフランシスコ DG717(717 Market Street, Suite 100, San Francisco, CA)

DG LabのFacebookページ にてスピーカー情報、チケット情報などアップデート予定ですので、ご興味ある方は フォロー お願いします。

「NCC 2016 TOKYO DAY2」人工知能との共生 ダイジェスト映像

<Keynote1> 人工知能の過去・現在・未来

2日目最初の基調講演は北野氏による人工知能について

Speech:北野 宏明氏(ソニー・コンピュータサイエンス研究所)

《概要》人工知能が、ゲームやクイズなど正解のある問題に対してだけでなく、自動運転やサッカーなど「正解」がない問題に対してもリアルタイムで最適解を出せるようになったとロボカップの事例を交えて講演した。さらに2050年までに人工知能が自ら仮説を立てて、検証し、ノーベル賞級の発見をする目標への道すじについて独自の見解を述べた。

<Session1> インタラクティブ・エージェント

人間とAIがどう共生していくかを議論したパネルディスカッション

AIのコールセンター活用事例を紹介したJoshua氏

Speech:Joshua Lachter氏(ASAPP)

《概要》AIと人間のインタフェースの事例として、コールセンターにおける活用事例を紹介。会話データが最も集まるコールセンターでのやり取りをコンピューターに学ばせることで、人間のように文脈を理解した自然な会話をすることができるAIの開発に活かせる可能性を示唆した。

Speech:米倉 千貴氏(オルツ)

《概要》ユーザーの人格をコピーし、本人に替わってコミュニケーションをしてくれるパーソナルAIについて講演した。パーソナルAIは、音声合成技術を用い、ユーザーの言葉、パターンの解析を行う。コールセンターにおける活用事例として、ある従業員の人格を96.6%真似することができた事例に関する紹介もあった。

Panel Discussion:伊藤 穰一/北野 宏明氏/Joshua Lachter氏/米倉 千貴氏/Rei Inamoto氏(Inamoto & Co.)

《概要》AIにクリエイティブな仕事ができるのか、AIに人間のような曖昧さを持たせることはできるのかといったトピックを中心に、人間とAIがどのように共生していくべきかという議論を行った。その中でも、「カワイイ」文化が根付き、ロボットを題材としたマンガ等が多数存在する日本ならではの強みを生かしながら事業を進めていくべきだという意見が出た。

<Keynote2> 人工知能とどう向き合うか

MITメディアラボSandy氏の基調講演

Speech:Alex “Sandy” Pentland氏(MITメディアラボ)

《概要》「Network Intelligence」をテーマに、本質的に人間が得意な「社会的ネットワークを用いた能力」と、AIが得意な「最適化、記憶などの能力」の整理がなされた。その上で、AI開発の際は、人々がより良い仕事、特にネットワーキングなどの社会的能力を活かせるようなものにしていくべきだと主張した。

<Session2> ライフサイエンス / ヘルスケア

AIのライフサイエンス/ヘルスケアへの活用を北野氏とディスカッション

Speech:島原 佑基氏(エルピクセル)

《概要》AIの医療分野での活用事例について講演した。CTやMRIなど医療画像が膨大化している一方、医師不足が深刻で、医療画像診断の領域においては、AIの活用が求められている。深層学習、集団学習、能動学習という3つのアルゴリズムの組み合わせを用いた医療画像自動診断システムを紹介した。

Speech:中村 晃一氏(Idein)

《概要》IoT時代におけるAIの活用について、取得したデータの解析よりもIntelligent Sensor(センサー自体がデータを解析して意味のあるデータを送信する)に注目して講演した。今後、技術の発達により、さらに深いデータが取得できるようになった際、取得したデータをどのように有効活用するかが課題だと指摘した。

Panel Discussion:北野 宏明氏/島原 佑基氏/中村 晃一氏

《概要》医療分野におけるAIの活用方法、ビジネス化について議論した。診断支援や治療だけでなく、予防や基礎研究など、AIの活用領域の裾野が広いことを指摘した。一方で、人間とAIの接し方も課題となる。AIの方が正しい答えを出す確率は高いものの、最終的に責任を取るのは人間であるため、システム設計、責任の所在を決めておくことが重要との指摘があった。

<Session3> 自動運転とロボット

AIのロボット/自動車への応用を事例と共に紹介したセッション

Speech:乙部 一郎氏(ZMP)

《概要》自動運転に使われている技術の紹介があった。大きく分けて認知、判断、操作というプロセスに分けられ、画像・音声認識などの認識技術、周囲の環境把握と行動計画などの総合的でより高度な判断と行動に関わる技術について、実例を交えながらの説明があった。

Speech:山崎 史敬氏(イクシスリサーチ)

《概要》特殊用途(主に災害用、点検用)に使われるロボットについての紹介があった。人が介入することができない領域にて必要となるロボット像は、シンプルな構造で丈夫、そして必ず動作し目的を達成すること。現場作業員の人手不足が叫ばれている中、今後はデータ解析の効率化や報告業務のサポートなどが求められる。

Panel Discussion:伊藤 穰一/乙部 一郎氏/山崎 史敬氏

《概要》人間参加型(human-in-the-loop)の機械学習では、データからだけではなく、人間的な視点から機械に学習を行わせている。いわゆる「トロッコ問題」と呼ばれる倫理問題や、人間の判断とロボットの判断のどちらを優先させるのか、AIを組み込んだ製品の製造物責任などの議論が行われた。

<Session4> 最前線

汎用人工知能から他分野と人工知能の融合可能性を探ったパネルディスカッション

意識をもった人工知能に関して講演する金井氏

Speech:福田 剛志氏(日本IBM)

《概要》コグニティブ・テクノロジーが可能にする未来について、IBM社のワトソンの事例を用いながら講演した。ワトソンは、医療、金融、保険、教育、顧客体験の改善など幅広い分野で利用されている。しかし、機械学習によりデータをインプットしているため、人間の脳と比較して、消費電力など効率性に課題があると指摘した。

Speech:齊藤 元章氏(ペジーコンピューティング)

《概要》次世代AIエンジンによって仮説の立案を行い、次世代スパコンによって仮説の検証を行うことで、最強の科学技術基盤を創ることを目指しているというビジョンのスピーチがあった。さらには、次世代スパコンとAIエンジンを使うことで、新しい概念の創出、人智を超えた発想・着想を実現し、汎用人工知能(AGI)や特異点の創出を構想していることも述べた。

Speech:金井 良太氏(アラヤ・ブレイン・イメージング)

《概要》意識を持ったAIをテーマに、意識の作り方、意識の判定方法などに関して講演した。深層学習により、ある現象をモデル化した後、自らがそのモデルを実行することで仮説検証を行い、さらに現実と離れた世界を想像することができるAIを創ることを目指している。これにより知覚、検証、思考ができるAIの創造を示唆した。

Panel Discussion:伊藤 穰一/福田 剛志氏/齊藤 元章氏/金井 良太氏

《概要》汎用人工知能(AGI)について広範な議論がなされた。AGIがいつ実現するのか、AGIが意識を持つとどうなるのか、AGIをどのように教育するのか、コンピューテーションとバイオテックとの融合、AGI開発の世界競争、AGIが世界を支配する可能性など、未来を見据えラディカルなディスカッションとなった。

<Session5> 人工知能と倫理

NCCのトリを飾ったパネルディスカッション

Panel Discussion:伊藤 穰一/Alex “Sandy” Pentland氏/北野 宏明氏/中村 晃一氏

《概要》AIと人間の共生に向けて、AIのガバナンスという観点から、世界基準でのルール作りやAI設計時のアルゴリズム、AIに対する倫理観の形成などについて話し合われた。人間と機械の二項対立ではなく、お互いがお互いをコントロールできる仕組みを作ったり、責任の所在を明確にしたりするべきだという議論があった。


THE NEW CONTEXT CONFERENCE   DAY1 ブロックチェーンの真実 の記事はこちら

【次回のTHE NEW CONTEXT CONFERENCE情報】
日時:2016年11月4日-5日
場所:サンフランシスコ DG717(717 Market Street, Suite 100, San Francisco, CA)

DG LabのFacebookページ にてスピーカー情報、チケット情報などアップデート予定ですので、ご興味ある方は フォロー お願いします。

【参考】カンファレンスの様子を掲載いただいたメディア(一部紹介)

Written by
現在、世界各地で起こっているイノベーションを発信し、現場の声をお届けします。