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【CEATEC 2016レポート①】人間と機械の共生への一歩

 10月4日から7日まで千葉・幕張メッセで開催されたCEATEC 2016。今年はCPS (Cyber-Physical System) / IoTをコンセプトに「つながる社会、共創する未来」というテーマの下、前年に比べて22%多い648の出展社がブースを構えた。登録来場者も14万5180人と前年比9.1%増だった。様々な展示の中でも注目を集めたのが、AI(人工知能)を応用した製品や試作品だった。

「人間と成長できるAI」の実演

 AIに関する展示の中で、ひときわ注目を集めていたのはオムロンの卓球ロボット「フォルフェウス」だ。同社は昨年のCEATECでも同様の展示をしており、対戦相手の位置と球の動きを1秒間に80回計測し、球の軌道を予測して打ち返す世界初の「卓球コーチロボット」として「ギネス世界記録2017」で紹介されている。今回展示したバージョンでは、新たに機械学習機能を搭載し、対戦する人間のレベルに合わせて球を打ち返すようになった。具体的には、ボールの位置や速度だけでなく、対戦する人間の表情や興奮度合いなどを学習して、相手のレベルや状態に合わせて球を打ち返すことを可能にした。「人と機械がお互いに成長していけるという点が今回のフォルフェウスの大きなポイントになっている」(オムロン 技術・知財本部センシング研究開発センタ画像センシング研究室長 川出雅人氏)。

 オムロンはこの技術の用途を卓球ロボットに限定しているわけではない。機械が人間を一方的に置き換えるのではなく、機械と人間が共生する社会の醸成に向け、様々な用途への利用を想定している。例えば、工場のロボットにフォルフェウスを応用すると、人間の体調をモニターし、人間に足りない部分を理解して補完することが可能になる。研究や生産の現場で、機械と人間が協調しながら効率よく作業を進めていくことが当たり前になる日が近いかもしれない。

AIテーマを続けて、次はAIサービスを提供するロボットに向かった。

 富士通のブースでは、同社の研究所が開発したAIロボット「ロボピン」を展示していた。ロボピンは7月に東京国際フォーラムで開かれた展示会で初公開した6つの自由度(6 degrees of freedom)の小型ロボットだ。

 「ユーザーに、ロボットに対して人間的な感覚を感じさせる」というコンセプトを元に、ロボピンが生まれた。これまでのロボットは「人間の形はしているけれど感情が感じられない」というイメージのものが多かった。このため、例えばカスタマーサービスの役割を与えてもユーザーに良い印象を持ってもらうのが難しかった。富士通はロボピンを、こうした問題の解決を目指して開発した。AIを使ってユーザーの感情を理解し、その感情に合わせてロボピンも感情を表現する。今の時点でロボピンが表す気持ちは「ご機嫌」「元気」「眠い」「不機嫌」だが、これからはより多くの感情を表現できるようにする。

カスタマーサービスの将来

 ロボピンのユースケースはいくつか想定しているが、今回実演したプロトタイプは、店や会場で客の案内役になる用途に向けたものである。こうした目的に向けたロボットは他社も手がけている。他のロボットと比べた際のロボピンの最大の特徴は、複数のロボピンが互いにネットワークで通信し、いわゆるマルチロボットシステムを構成できるところにある。複数のロボットを連携させることで、顧客のニーズにうまく応えらえるようになると富士通は考えている。

 富士通は東京オリンピックが開催される2020年には、観光客の案内役として実用化することを目指してロボピンを開発している。観光客の性別、言語、各競技の開催日程などを理解し、それぞれの趣向や属性に合わせた情報を伝えるアプリケーションなどを想定している。マルチロボットシステムを構築できることを生かして、それぞれのユーザーに関する情報を周辺のロボピンと共有し、そのユーザーが別の場所で別のロボピンと会ったら、前の情報を利用して、その人に合った情報を伝えるといった機能の実現を目指している。

セキュリティでもAIに話題

 CEATEC中に会場内で開催されたIoTとサイバーセキュリティに関するパネルセッションでもAIが話題に上がった。IoTが発展していくと人間の生活が便利になっていく一方で、攻撃されるポイントも増えるためセキュリティリスクも高くなっていく。こうしたリスクを軽減するにはAIによるセキュリティの確保が重要になるという。
 パネルディスカッションに先立って、内閣府本府参与でパロアルトネットワークス副会長を務める斉藤ウィリアム浩幸氏が講演を行った。斎藤氏は、今後IoTを発展させるためには、サイバーセキュリティ対策をしっかりと進めることが必要と語った。特に日本は、国を挙げてサイバーセキュリティへの取り組み方を変えないと国としての成長が妨げられると主張していた。このためにもIT企業の成長を促進することが不可欠という。

 これを受けてパネルディスカッションでは、2020年の東京オリンピックに向けて、日本国内ではどのようなサイバーセキュリティ対策に取り組む必要があるかについて議論した。現在の技術では既知の脅威からサイバースペースを守ることはできるが、未知の脅威に対しては対応することが難しいため、システムの安全な動作環境をAIに学習させ、未知の脅威からもサーバースペースを自律的に守ることができるような新たなセキュリティ技術が必要になるという声が多かった。

CEATECから感じたAIの将来

 これまでのAIの人間との関係は、付加的な技術や雑用などの作業をやらせるようなつながりがあった。しかし、これからは人間が手を出さずにAIが自律的に成長していくような世界になっていくという方向性が、今回のCEATECで 展示された商品やサービスから感じられた。生産からサービスやセキュリティに至るまで、AIと人間が共生できる領域は幅広いと再認識した。

関連リンク

■オムロン株式会社
http://www.omron.co.jp/innovation/forpheus.html

■富士通株式会社
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/09/28-3.html

■Official Robopin Intro Video
https://www.youtube.com/watch?v=-EU8ApRpEIs

■Dark Trace
https://darktrace.com/technology/#machine-learning

■斉藤 ウィリアム 浩幸
http://saitohome.com/ja/about/

【お問い合わせ】
DG Lab
TEL:03-6367-1001
E-MAIL:info@dglab.com

編集部 Written by
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