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【NCC 2016 SF DAY1】ブロックチェーンの本質とは何か。計り知れない可能性とその課題、社会への影響を考える。

 11月4日、5日の2日間にわたり、THE NEW CONTEXT CONFERENCE SAN FRANCISCO(以下、NCC SF)が開催された。今年7月に東京で開催されたTHE NEW CONTEXT CONFERENCE TOKYOは、BlockchainとAIをテーマに、国内外からスピーカーを招き、最新の技術やその周辺で生まれるビジネスについて活発な議論が展開された。NCC SFでは、BlockchainとBiotechの分野で、「Social Impact of Blockchain」「Collaboration with Microbes」をメインテーマとし、国際色豊かなスピーカーが2日間、最新の研究事例やビジネスの取組みについて発表した。サンフランシスコでの開催は、今年で4回目となったが、これまでにも増して盛り上がりを見せ、各テーマに対する関心の高さがうかがえた。

 DAY1は「Social Impact of Blockchain」と題し、ブロックチェーンが社会に与える影響について多角的な視点からディスカッションを行った。セキュリティ、技術標準化、スケーラビリティ、教育といった各分野での専門家を招き、ブロックチェーンが社会に浸透するための方法について議論が行われた。

 本記事では、NCC SF DAY1のダイジェスト映像と、各セッションで議論された内容の概要をスピーカーごとに紹介する。

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DAY1 Social Impact of Blockchain ショートムービー

<Keynote>

スピーチ:Adam Back氏(CEO & Co-Founder, Blockstream Corp.)

Adam Back氏は広い視点からブロックチェーンを語った

ブロックチェーンは何を意味し、社会に何が提供でき、なぜ今多くの人がブロックチェーン技術に期待し、既存のインフラにどう使われるかを広い視点で語った。具体的には、ブロックチェーンと既存の金融機関との比較、スマートコントラクトの解説、ビットコインと秘密鍵、パブリックとプライベートブロックチェーンの対比などを行った。

<Session1> Can we depend on the the Blockchain? Dealing with System Security

ブロックチェーンのトランザクションフローについて語ったEric Lombrozo氏

ブロックチェーンのセキュリティについて語ったThaddeus Dryja氏

スピーチ:Eric Lombrozo氏(Co-Founder / Co-CEO and CTO, Ciphrex Corp.)

ブロックチェーンでトランザクションが行われるフローやソフトフォークとハードフォクをわかりやすく解説。また、インターネットプロトコルとブロックチェーンプロトコルを比較し、ビットコインプロトコルレイヤーが下から Consensus > P2P/Propagation/Relay > Off-chain Protocols/APIs > Applicationsであることを説明。

スピーチ:Byron Gibson氏(コンサルタント)

米政府官公庁がブロックチェーンをどう考えているのか、セキュリティの問題は何かを説明。分散型台帳のセキュリティは3つの問題があるという、すなわち 1) データの整合性 2)重複使用されない方法 3) システムの整合性。これに加え、ガバナンスの問題、経済リスク、インセンティブなど多岐に渡る観点から現状の課題を示した。

スピーチ:Thaddeus Dryja氏(Founder & CTO, Lightning Labs)

ブロックチェーンのセキュリティを厳しくすることと、使いたい機能をつけることは表裏一体であると語った。全体の3分の1のお金が移動されてしまたDAOの例、Mt. Goxの例を出し、事件後の混乱についても言及。ブロックチェーンのセキュリティを固めながらどう使いたい機能をつけていくかが重要と説明。

<Session2> Who owns Blockchains? Public, Private and Standardization

JPXでのブロックチェーン応用事例について語った吉濱佐知子氏

ブロックチェーンの標準化についての議論

 

スピーチ:Brian Behlendorf氏 (Executive Director, Hyperledger)

HyperledgerはLinuxの基盤を作っており、それを企業に展開し企業がアプリケーションを作っているビジネスモデルを説明。複数の組織で台帳を共有することで、スマートコントラクトやブロックチェーン技術の拡張が可能なことを示した。

スピーチ:吉濱佐知子氏 (Manager, Blockchain Technology, IBM Research – Tokyo)

今年JPXが行ったブロックチェーンのPoCを解説。既存のCentral Security Depositoryでは各投資家がいくら持っているのか把握するのに莫大なコストと手間がかかる。4つの要件、1) パーミッションネットワーク 2) スマートコントラクト 3) セキュリティ・プライバシー保護 4) 監査できる環境 を満たしながらブロックチェーンでPoCを行って見えた結果や課題を共有した。

<Session3> How will Blockchains Reach the Wider World? Scaling Blockchain technology

ブロックチェーン規制の現状について語ったElizabeth Stark氏

 

ブロックチェーンをスケールさせるための議論

スピーチ:Elizabeth Stark氏 (Co-Founder & CEO, Lightning)

インターネットが誕生し、発展していく段階でどういった規制ができたか時系列に説明し、ブロックチェーンの現状の規制を言及。Lightning Networkがどのように動くかを例とともに説明した。

スピーチ:Ryan Shea氏 (Co-Founder & CEO, Blockstack Labs)

分散化の利点はInnovation, Inclusion, Independence, Information Securityの”4I” で表せると言った。かつてインターネットに置いてE-mailが、コンテンツ配信ではBitTorrentが分散化システムとなった。2009年に新たなBitcoinという分散化システムができたが、3つの問題を抱えていると課題をあげた。それは、1) Complexity 2) Security 3)Scalabilityであり、Blockstackはこれらの解決を目指している。

スピーチ:Kazue Sako氏 (Senior Engineer, NEC)

暗号化プロトコルとは何かを例を用いて説明。技術はすばらしいが、普段の生活と暗号化プロトコルにはギャップがある。それは暗号化プロトコルが難しすぎるからだが、ブロックチェーンを使うことでその技術が一般の人にも使われるようになるのではないか、と未来を予測した。

<Session4> Who makes Blockchains? Growing the Blockchain Engineer Community

Jeremy Rubin氏

ブロックチェーン開発者教育についてのディスカッション

スピーチ:Tess Rinearson氏 (Software Engineer, Chain)

エンジニアコミュニティをどう作り上げていくか、具体的な取り組みを話した。120名の高校生を対象にレクチャーを行ったり、1週間の暗号通貨ブートキャンプを行ったりした。また、Chain Communityを作り知識の共有を促進し、さらにSlackを用いて知識共有だけではなくディスカッションを行う場を作りコミュニティを構築、活性化していることを紹介した。

スピーチ:Jeremy Rubin氏 (co-founder of Tidbit, the MIT Bitcoin Project, and the MIT Digital Currency Initiative)

Jeremy氏がビットコインマイナーからディベロッパーに変わった経験から、エンジニアになるために必要なステップをFoundation > Dev.Environment > Biginning to Code Bitcoin > Contributing の4つにわけそれぞれを詳しく解説した。また、基本的なアドバイスとして良書の紹介や、コミュニティに所属することの重要性も説いた。

<Session5> How will Blockchains Evolve? Advanced in Academic Research

Ethan Heilman氏

アカデミックな視点からブロックチェーンの今後について議論

スピーチ:Ethan Heilman氏 (Researcher, Boston University)

ビットコインが現在抱えるプライバシーとスケーラビリティの問題に対し、Tumble bitをPayment Hubとして使うことで解決するアプローチを説明。1)エスクローフェーズ 2) ペイメントフェーズ 3) キャッシュアウトフェーズの3フェーズに分けて考えることの重要性も説いた。

スピーチ:Shin’ichiro Matsuo氏 (Research Affiliate- Director’s Liaison for Financial Cryptography, MIT Media Lab / Co-Founder, BSafe.network)

ブロックチェーンをセキュアにするためのアカデミックの立場のアプローチを講演。現在、ブロックチェーン技術を用いて商業化されているものもあれば、実証実験されていることもあるが、セキュアであるという確証がない状態であると言う。インターネットの発展において政府主導で技術検証するのに約10年かかった過去を示し、現在のプロックチェーンはその検証するフェーズに来たのではないかと持論を展開した。

スピーチ:Benedikt Bunz氏 (Stanford University)

ブロックチェーンを用いて新たなカテゴリを作る取り組みを話した。現在は両替所を使い取引を行っているが、完璧ではないと言う。Prove Solvency(支払い能力の証明)を行い監査を行うことでより安全な取引ができ、ゼロ知識証明により匿名化された状態でトランザクションできる可能性を示した。

<Blockchain Art Gallery>

NCC SFの会場となったDG717のエントランスには、アーティストのcryptograffitiが製作したブロックチェーン関連のアート作品を展示した。本物のクレジットカードや契約書を粉砕し、世界地図を描いた「Global Disruption」や、Bank of Americaのロゴをモチーフにした「Blockchain」などが展示された。cryptograffitiの詳しい情報はこちら

「Global Disruption」(2015)

「Brave the Halving」(2016)

「Blockchain」(2016)

THE NEW CONTEXT CONFERENCE DAY2 Collaboration with Microbes の記事はこちら

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