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VR技術が切り拓く新しい開発プロセス、没入型デザインへの挑戦

2017年2月27日〜3月3日の5日間、サンフランシスコのモスコーニセンターでゲーム開発者向けの世界的カンファレンス、「Game Developers Conference 2017」(GDC)が開催された。同会場では、「Virtual Reality Developers Conference」(VRDC)も同時開催。昨年の11月のVRDCは小規模なものだったが、今回は50以上のセッションが計画され大幅にスケールアップしたほか、GDC展示フロアのブースには、VR関連のプロダクトやデモも多く出展され、期間中は多数の企業からVR/AR関連の新作発表やリリースが行われた。

VR領域で目を引いたのは、3Dデザイン、エンジニアリング、エンターテインメントソフトウェアの業界最大手Autodeskの取り組みだった。同社は、産業界でのVR活用を積極的に推進し、新たなデザインの可能性を切り拓こうとしている。本記事では、Autodeskの活動とそこから得られた知見を披露した、Autodesk、新技術担当ディレクターのブライアン・ペネ(Brian Pene)氏のセッション「Immersive Design: Enterprise Applications for Virtual Reality」の様子を紹介する。

VR技術が切り拓く新しい開発プロセス、没入型デザイン(Immersive Design)への挑戦

「VR技術の利用は、ゲーム・エンターテイメントを越えて、開発・デザイン領域へと進出している。VRは複雑なプロジェクトを理解することに役立てられ、より早く多くの情報を基にした判断を可能にする。VRの特性である「完全な没入感」「空間認知」「想像を超えるインタラクティブ性」が高度なシミュレーション・デザインツールと相まって、ビジネス・産業向けのデザインプロセスを創造性にあふれた、高効率かつ連続的なものにする。それこそが没入型デザインである。」

ペネ氏は、同社が提供する開発ソリューションで、デザインの対象が既に実現しているかのような、人間の感覚に訴えかけるようなシミュレーションを可能にする没入型デザインについてこのように語った。

「ゲームやメディアと異なり、産業向けの開発プロジェクトは実際のモノが対象となるため、非常に複雑で、時に人命にも関わり、莫大なコストやプロジェクトの白紙化などがリスクとして伴う」セッションの冒頭、ペネ氏はこう語り、同じVR技術を扱うのでも、産業向けソリューションにはより高い性能や精度、信頼性が求められることを強調した。

AutodeskはVR/AR技術を自社プロダクトに取込むため、昨年4名のインターンの協力を得てプロジェクトを実施した。メンバーは多分野をまたぐように選んだ。さらに、Unreal EngineやUnityに加え多数のプログラミング言語を使える開発者であり、人間工学的デザインにも詳しい者が採用された。このプロジェクトチームには高レベルな課題を与え、毎週2つのプロトタイプを作り、週の終わりにはフィードバックを得て、デザインへと昇華する、というサイクルを繰り返した。インターンシッププログラムの終わりには、これらの総括としてVRアプリケーションを開発した。

開発エピソードのひとつとしてペネ氏が語ったのが、メニュー機能の開発である。音声によるコントロールはあるかもしれないが、キーボードやマウスなどがない状態でいかにウィンドウズのように分かりやすく使いやすいメニュー機能を用意するかは大きな課題であった。VRは新しい空間インターフェースを提唱しており、これまでにない「深さ」がある。そこに現存のツールを持ち込んでメニュー開発を進めた。このために取り入れたのがMarquee(Internet Explorerが独自に追加した、文字や絵をスクロールする際に使用するタグ)のコンセプトである。以下の画像はあくまでプロトタイプだが、今回のインターシッププログラムの終わりにはアプリケーションの一部としてこういったメニュー機能も組み込んだ。このほか、各種シーン、例えば工場などをいかにレイアウトさせるか、などインターンプログラムを通してVRならではの難しい挑戦にいくつも取り組んだという。

このようにしてAutodesk社で編み出された産業向けソリューション、そこに活用されている没入型デザイン(Immersive Design)を導入すると、開発プロセスに実際にどのような変化が起こるのだろうか。

ペネ氏によれば、多くの産業向け開発プロセスは現在、2Dの小さなスクリーン上で行われている。しかし複雑な開発プロジェクトであれば、扱う情報は3Dに止まらず、時間軸も扱い4Dにまで及ぶ奥深いものとなり、立体的でリアリティのある視覚効果が求められる。没入型デザインを活用することで、例えば車の開発においては、チーム間でデザインプランの確認をする機能や、クレイがなくても車体をモデリングできる機能などを用いて、より写実的で没入感が高い開発プロセスを実現できるようになるという。

さらに、ペネ氏によれば、より良いビジネス判断を行うために、開発時のコミュニケーションにVRデータをどのように活用するかも今後の重要な課題だ。視覚データをVRで表現するだけでなく、それ以外のデータをいかにVRの世界に持ち込むか、といった点で、クライアントが取り組むプロジェクトごとに、そこで取り扱われるデータの要求に応える必要がある。

今後の目標としては、VR技術を用いた没入型デザインを発展させ、開発や製造のプロセスをよりスマートにし、デジタルインフォメーション・用いられる機器・そのほか現実世界に関する人々の理解を深めることを目指して、産業向けソリューションの開発が進められる。

関連リンク

http://www.autodesk.co.jp/
http://www.autodesk.co.jp/products/revit-family/overview

Written by

DG US
DG Lab Haus Executive Writer

DGUS, Inc.でDG Lab関連の各種業務を担当。米国ミシガン州立大学を経て立命館大学経営学部経営学科を修了後、デジタルガレージに入社。Y Combinator出身のAdTechスタートアップのローカライズ担当を務めたのち、決済事業部門のグローバルアライアンス業務を担当。国内外大手決済事業者向けのソリューション提供、Fintechスタートアップとのビジネスデベロップメントなど、多様な業務に従事。2016年のDG Lab発足以降、DGUSサンフランシスコオフィスを、R&D機能を有したDG Labのグローバル拠点へと発展させるべく活動中。