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VRをより楽しむ工夫あれこれ CEATEC JAPAN 2017レポ 

KDDI総研の16台のカメラを使った自由視点VRの展示

KDDI総研の16台のカメラを使った自由視点VRの展示

 アジア最大級の家電・情報技術の展示会「CEATEC JAPAN 2017」が10月3日から6日まで、千葉市の幕張メッセで開催された。出展数は昨年より多く667社・団体で、そのうち新規出展者数は327社・団体にのぼり、観光や印刷、地方自治体などこれまではあまり見られなかった業種からの出展も多かった。

 会場内で目立ったのは、AI関連の展示や車の自動運転技術などだ。一方VR・AR技術に関するものでは、VR空間を体験するだけの展示はあまり見られず、普及期に入って明らかになってきた、現状のVR体験の弱点を補う試みをいくつか見ることができた。

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 まず注目したのは、緑色のロッククライミングの壁がそびえ立つKDDI総合研究所のブースだ。壁ではインストラクターが登攀の実演をしており、その様子が複数台のカメラによって映し出されている。説明員によると、クライミングの様子を16台のHDTVカメラが同時撮影しており、その映像をほぼリアルタイムで合成処理することにより、自由に視点を動かすことが可能な仕組みになっているという。これまでのVR中継でも周囲360度をぐるりと見回すことはできたが、立ったり、しゃがんだりして、自由に視点を移動させることはできなかった。だがこのシステムにより、ある程度はそれが可能となる。主に想定される使途としては、サッカーをはじめとしたスポーツ中継時に、別の角度からはどういうふうに見えるかという再現映像が考えられるという。

 続いて向かったのが、NTTグループのブースだ。ここでは、8K相当の高解像度を持つVRヘッドマウントディスプレイの展示が行われていた。開発はNTTドコモで、このヘッドマウントディスプレイも研究用に開発したものだという。KDDI(au)、NTTドコモともに次世代通信5Gのスタートを見据えて、大容量データが必要なVRコンテンツの普及を仕掛けたいのだろう。

ドコモが出品したヘッドマウントディスプレイ

ドコモが出品したヘッドマウントディスプレイ

 現段階では、360度全ての映像を8K相当(左目4K+右目4K)で映し出すことはデータ量的に困難であるため、この装置では装着者が見ている部分だけ高精細にすることで8K相当の画像を実現している。ディスプレイ部には、シャープのIGZO液晶を搭載した。さらに、音声にはヤマハの立体音響技術「ViReal」(バイリアル)を採用。64チャンネルにのぼる、あらゆる角度の音を収録することで、正面で鳴っている音源に対し、装着者が左を向いたら右耳から聞こえるという立体音響を実現している。

 筆者も沖縄の伝統舞踊のデモを視聴してみた。音響面では、かけ声や太鼓の音などが頭の位置に応じていろんな方向から聞こえてくるようで、確かに臨場感を味わうことができた。しかし、肝心の映像は、ヘッドマウントディスプレイ内の焦点距離の調整が難しく、残念ながらその美しさ、すごさをあまり体感できなかった。ピント調整が難しいという問題は、現場のドコモ担当者も把握しているようだった。VRの画素数が上がれば上がるほど、ヘッドマウントディスプレイ部のピントの問題はシビアになるだろうと実感した。

 最後に向かったのが、デンソーのブースだ。自動車部品のシェアで世界トップを走るメーカーらしく、1人乗りの小型電気自動車が展示されていた。この電気自動車、実は同社が提案するVRの体験機器としての展示なのだという。デモを見ていると、車はときどき小刻みに前後に動いている。どんな体験ができるのかだろうか。詳しい説明を受ける前に、実際に体験してみることにした。

デンソーのブースでVR体験をする河嶌氏

デンソーのブースでVR体験をする河嶌氏

 座席に座ると「デモ中はハンドルを動かしたり、アクセルやブレーキを踏んだりしないで下さい」という注意を受ける。恐らく、アクセルを踏むと本当に車が動いてしまうからだろう。続いてヘッドマウントディスプレイを装着すると、そこに広がっていたのは飛行場の滑走路のような光景だった。ハンドルを握るだけなら問題ないというので、その状態で静止の姿勢を保つ。背中にがくんという衝撃があり、車はなんと滑走路を走って、離陸し始めた。なるほど、車が前後に動いていたのは、こういう衝撃を再現させるためだったのかと納得。離陸した車は、ニューヨークやモスクワなど、世界各地の上空を飛行している。その映像はもちろんVRなので360度見回すことができ、眼下には道路の上を走る自動車を見ることができる。実際に乗車中の車体も、絶妙なタイミングで動くので、本当に空を飛んでいるかのような臨場感が醸し出される。

 

 デモは空に飛んだ車が元の位置に着陸するところで終わり。説明員によると「これまで大がかりな装置を要したものが、車一台でできてしまう。自走も可能なので、会場への搬入も簡単にできる」とのこと。なるほど、視覚による臨場感はVRで表現し、移動や衝撃などの体感の再現はこのように最小限の設備でよいなら、テーマパークの大型施設のかわりになるかもしれないと思った。

 

 このようにVR体験をリアルするための工夫はまだまだありそうだ。来年のCEATECではVR体験はどのように充実しているのだろうか、今から楽しみだ。

河嶌太郎 Written by
記者・編集者。他媒体では「AERAdot.」「週刊朝日」「AERA」「さくらのナレッジ」「キャリコネニュース」などウェブ・雑誌で執筆。ITのほかコンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、鉄道など幅広いテーマを扱う
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