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【CEATEC 2016レポート②】次世代の個人認証技術が続々登場

 10月4日から7日に幕張メッセで開催されたCEATEC JAPAN 2016では、プライバシー保護のために今後ますます重要になる個人認証技術についても、注目を集める展示がいくつかあった。

指だけでチェックインから決済まで


Liquid 日置智之氏

 新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)エリアに設置されたLiquidのブースでは、訪日外国人向けの指紋認証による本人確認のデモを行っていた。登録に必要なのはパスポートと指紋情報。一度登録すれば、ホテルのチェックインの際、パスポート提示なしで指紋の読み取りのみで本人確認が完了する。また登録されたアカウントに前払いで入金をしたり、クレジットカード情報を紐付けたりすることで、指紋認証だけで買い物をすることも可能になるという。

 指紋による生体認証にはカードを併用する方式と併用しないものがある。前者はATMなどで見られるもので、当該カードに紐付けられた指紋と一致するかで本人確認を行っている。これに対し後者は、データベースから一致する指紋情報を探すため、1:1ではなく1:多の検索となり、従来は照合に多大な時間を要した。Liquidは、指紋の特徴点を三角形や四角形で結び、角度や面積情報を付与することにより各特徴量をインデックス化し、機械学習インデックス検索と逐次検索を組み合わせることで、瞬時の認証を可能にした。画像として指紋を管理しないため、生体情報の流出リスクも低減しているという。

 なお本プロジェクトはIoT Lab Selectionのグランプリとして、NEDOから支援を受けており、2016年11月までの予定で都内の一部宿泊施設で実証実験が行われている。また、訪日観光客だけでなく、国内居住者も加盟店で指紋決済を利用できる。

耳穴の形状で認証


NEC 荒井淳氏

NECブースの耳音響認証デモ

 NECのブースでは、耳穴の形状を音で識別する生体認証技術の展示を取材した。

 この技術は、スピーカーとマイクが一体となったイヤホンで、耳に入射した音と反射して戻ってきた反響音の特性から耳穴の形状を分析し、個人を特定するもの。同社はこの技術を2016年3月に発表しているが、デモを一般に公開するのは今回が初めてだった。最大の特徴は、ユーザーのアクションを必要としないパッシブな認証であることだ。つまり、イヤホンさえ付けていれば、移動中や両手が塞がっている状況でも、認証を行うことができる。また認証実行者側のタイミングでユーザーの認証が可能である。この特徴から、医療従事者や警備員、またオンラインテストにおけるなりすまし防止などの用途を想定している。

 高い秘匿性も特徴である。仮に一つの反響音が録音されてしまったとしても、スピーカーから流す音を変えれば別の生体キーが生成されるためだ。

生活データから個人を認証


東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター特任准教授 山口利恵氏

 最後に、東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター次世代個人認証技術講座の特任准教授 山口利恵氏から話を聞いた。

 従来のIDとパスワードによる個人認証には、不正アクセス被害や、パスワードを保存した端末を紛失するリスク、そもそもパスワードを忘れてしまうなどの問題があった。このような脆弱性に対する抜本的解決のアプローチとして、同センターではライフスタイル認証の研究に取り組んでいる。ライフスタイル認証とは、ユーザーの移動パターン、アプリやwebサイトでの利用履歴や購買履歴、運動履歴などの日々の生活データからユーザーごとの規則性を発見し認証を行う技術である。ユーザーとサーバーの両面から、複数要素の情報を分析することにより、柔軟性及び汎用性に優れた個人認証の実現を目指している。

 同センターでは法律家と相談しながら、プライバシーに関する懸念に対処していこうとしている。生活データから個人を特定するというライフスタイル認証の性質上、これは避けられないものである。また、イベントへの出展などを通じて、ライフスタイル認証という概念を社会へ浸透させていきたいという。

 将来は、PCやwebサイトのログイン、クレジットカード不正利用の追跡などに応用することを検討している。ブースではデモとして、入店すると自動で注文が入り、商品を受け取ると決済まで自動で完了するという、実店舗での活用例を見せていた。

 同センターでは、多要素認証に係る大規模データの収集、及びシステム接続可能性のチェックを目的として、2017年1月~3月に実証実験を行う予定である。複数の民間企業の協力を得て、5万人の被験者を得た大規模な実験を想定している。

 今回は個人認証技術について、身体の一部を用いる生体認証から、個人の生活習慣のデータを組み合わせ認証するものまで、最先端の取り組みを取材した。映画「マイノリティ・リポート」では目で本人認証をするシーンが多々登場するが、そのようなSF映画で描かれた世界が現実になりつつあると感じた。しかし新たな認証技術には生活を便利にする面がある一方、既存の法律では対処できない新たな情報漏えいリスク、プライバシーの問題を引き起こす可能性も含んでいる。関連する法制度やセキュリティー技術の動向も注視する必要がある。

関連リンク

■Liquid 訪日外国人向け実証実験「プロジェクト池袋」を開始!〜指をかざすだけで、チェックイン時の本人確認が可能に〜
http://liquidinc.asia/news-post18.html

■NEC、人によって異なる耳穴の形状を音で識別する生体認証技術を開発
http://jpn.nec.com/press/201603/20160307_01.html

■東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター
http://www.sict.i.u-tokyo.ac.jp/

■東京大学 山口利恵研究室
http://www.yamagula.ic.i.u-tokyo.ac.jp/index.html

【お問い合わせ】
DG Lab
TEL:03-6367-1001
E-MAIL:info@dglab.com

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