すでに海外では普及が始まっている アマゾンの「Echo」やグーグルの「Google Home」などに続き、2017年6月に入ってからはアップルの「Home Pod」さらにLINE「Wave」と国内外の各社が「AIスピーカー」の市場への投入を続々と発表している。「AIスピーカー」は、人間の呼びかけに応じ、天気予報や各種情報を検索して伝えたり、家電をコントロールしたりすることができるため、生活のあらゆる情報が集まるハブになる。これらの「AIスピーカー」の中身は、自然言語処理を行うエンジンや情報の分析を行う人工知能などであるが、これまでインターネットの検索サイトやスマートフォンが担ってきた役割の多くが、ここに集約される可能性がある。このため、各社とも競合他社に遅れまいと、開発に躍起となっている。
こうした中6月23日にNTTドコモは、「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」(以下、「本構想」)を発表した。本構想は、ドコモが2017年4月に策定した中期戦略2020「beyond宣言」の中で掲げているライフスタイルを革新する新AIエージェントの実現に向けて開発した「AIエージェントAPI」を、外部のパートナー企業に解放し、共同開発をしながら新たなサービスの創出を目指すというもの。記者発表では、NTTドコモに加え、インテル、高島屋、カカクコムが出席し、パートナー企業として参加することが発表された。
発表会の冒頭で壇上に立ったNTTドコモ 代表取締役副社長 中山 俊樹氏が強調したのは、「サービスにもオープン」、「デバイスにもオープン」というキーワードだった(下記図参照)。2012年にスタートした「しゃべってコンシェル」などのサービスで培った自然言語処理技術や累計17億回以上の発話ログを持つ音声データベースを、ドコモのためだけに使うのではなくパートナー企業と共同で活用することで、サービスの広がり、開発スピードの短縮、普及の促進を目指す。デバイスに関しては、スピーカーにこだわらない。家電やロボットなどパートナー企業が持つハードウェアの中にAIエージェントを導入することを考えているという。また、オンライン決済、モバイル決済など音声以外のAPIの解放も視野に入れる。
パートナーとしての抱負を語ったインテル 代表取締役社長 江田 麻季子氏は、「インテル製品を採用したデバイス、エージェントが拡大することを期待している」と述べ、インテルのプロセッサや音声処理アプリを搭載したスマートスピーカーの存在を示唆し、デバイス側での連携に期待を寄せた。続いて高島屋 常務取締役 営業推進部長 高山 俊三氏は、同社が力を入れるデジタル戦略に触れながら、時・場所を選ばずに常にお客様に寄り添えるAIエージェントの登場に期待を寄せ、リアル店舗とデジタル領域が融合した新しいサービスの創出に貢献していくと語った。
カカクコム 取締役(食べログ担当) 村上 敦浩氏は、80万件の店舗情報と2000万件の口コミデータを保有する食べログの特徴を述べ、ドコモのAIエージェントと連携することでデータベースをフルに活用できるため、ユーザーにより最適化されたサービスを提供することが可能になると語り、新しいイノベーションが起きることを期待した。
ドコモは、百貨店、小売、外食、金融、交通などのパートナー企業と協力し、来年春までにAIエージェントを活用した新たなサービスをローンチする予定。2020年までに100社のパートナー企業との連携を目指す。
世界市場で先行し、近々日本市場に上陸するといわれているアマゾンやグーグルに、ドコモを始めとする国内企業はどのように立ち向かうのか。カギとなるのは、一日の長がある日本語の言語処理技術や音声合成技術になりそうだ。また、優良なパートナーと連携しエンドユーザーのニーズに合わせて価値のあるデータを提供する体制や、こうしたパートナーと共存共栄の関係を築けるビジネスモデルを整備できるかどうかも重要になるだろう。