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AIのさらなる飛躍 「匂いを嗅ぐ」コンピューターチップ

空港の手荷物検査の長蛇の列(2017年6月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/JIM WATSON

空港の手荷物検査の長蛇の列(2017年6月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/JIM WATSON

【AFP=時事】空の旅をいかにして再び快適なものにするか──これは、日常生活でわれわれを悩ますジレンマの一つだが、その答えがナイジェリア人の神経科学者オシオレノヤ・アガビ(Oshiorenoya Agabi)氏(38)によって提供されるかもしれない。  

 例えば、空港の手荷物検査の長蛇の列をなくすのはどうだろうか? 危険物を「嗅ぎ分ける」ことのできる特殊な機器が検査の手間を省いてくれるというのだ。  

 これは、アガビ氏がCEOを務める米シリコンバレー(Silicon Valley)のスタートアップ「コニク(Koniku)」が研究を進めるニューロテクノロジー機器「コニク・コレ(Koniku Kore)」の利用法の一つだ。このニューロテクノロジー機器のプレゼンテーションが27日、タンザニアで開催のテクノロジー会議「TEDGlobal」で行われた。  

 人工知能(AI)の分野では、脳を模倣することのできる機器の開発や、IT起業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏が取り組んでいるような脳内にコンピューターを埋め込む技術の研究が盛んに進められている。しかし、アガビ氏が取り組んでいるのは、研究室で培養されたニューロン(脳の神経細胞)と電子回路とを結合させる方法だ。  

 多くの研究者らが、限られた処理能力の従来の半導体を使って研究に取り組むなか、アガビ氏は人の脳に着目した。同氏は脳を「世界最強のプロセッサー」だと説明する。  

 スーパーコンピューター1台の処理能力は、人のニューロンわずか204個分だと指摘するアガビCEO。「だとしたらニューロンの複製ではなく、生体細胞そのものを取り出して利用したらどうか? このアイデアは斬新で、結果は驚異的だ」と話した。  

 同氏は、遺伝学者や物理学者、生物工学者、分子生物学者などのチームとともに、半導体では特に解決が難しい問題に焦点を当て、研究を進めた。この「解決が難しい問題」とは、揮発性薬品や爆発物、さらにはがんなどの疾病を検知することだ。

■世界初  

 同社が研究を進める「コニク・コレ」は、匂いをかぎ分けることによって対象物を検知する「世界初」の機器だ。アガビ氏によると、基本的には空気を取り込んでかぎ分けるのだという。コニク・コレには大手旅行代理店なども興味を示している。  

 コニク・コレの主な課題の一つは、ニューロンを生かし続ける方法を見つけることだった。研究施設では2年間、機器内部では2か月間しか生きた状態をキープできなかったというのだ。

■5~7年以内に「ヒューマノイドシステム」  

 AIが人間の能力を超えてしまう危険性について繰り返し警告してきたマスク氏は現在、人間が機械を主人に持つ「飼い猫」のようになるのを避けるため、人の脳とコンピューターを直接つなぐ「ニューラルレース(Neural Lace)」という技術を使った新たなプロジェクトに取り組んでいる。  

 しかしアガビ氏は、機械をより「生かす」ことでAIの未来は広がると信じている。コニクでは、生きた人工神経をベースに認識能力のあるヒューマノイドシステムを今後5~7年以内に完成させるとの見通しを立てている。  AFPの取材には「これはSFではない」「われわれは、人の脳ではなく、生体ニューロンの脳、すなわち知能を持つ自律システムを作りたいのだ」と語った。  

 アガビ氏は、ナイジェリア・ラゴス(Lagos)の大学で理論物理学を専攻し、英ロンドン(London)へと渡り、神経科学と生物工学の博士号を取得した。【翻訳編集】 AFPBB News |使用条件