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「脳のスイッチ」を操作、甘味の誘惑絶つ マウス研究

イベント会場に並ぶチョコレート(2017年2月10日撮影、資料写真)。(c)AFP/EMMANUEL DUNAND

イベント会場に並ぶチョコレート(2017年2月10日撮影、資料写真)。(c)AFP/EMMANUEL DUNAND

【AFP=時事】ダイエット中にこう思ったことはないだろうか──自分の味覚を刺激する食べ物がホウレンソウだったらいいのになあ、チョコレートには全くそそられないようになればなぁ──と。

 このほど、甘いものをまずく、苦いものをおいしく感じさせるように脳を操作する方法を発見したとする研究結果が、神経科学者チームによって発表された。

 だがこれは今のところ、マウスの場合に限られる。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された今回の研究論文で、米国の研究チームは「へんとう体」と呼ばれる脳の部位に着目。そこにある「スイッチ」を操作し、甘味を実験用マウスの嫌いな味に変え、苦味を好きな味に変える方法を発見したと発表した。肥満症治療に有望な道を開く成果だと、チームは主張している。

 研究に参加した米コロンビア大学(Columbia University)ザッカーマン研究所(Zuckerman Institute)は、「今回の研究は、肥満症や拒食症などを含む摂食障害の理解と治療に向けた新たな方法を提示している」としたが、人を対象とする臨床試験はまだ実施されていない。

 へんとう体は、人の脳の側頭葉にある左右一対のアーモンド大の器官で、恐怖や快楽などの感情をつかさどるほか、動機付け、生存本能、ストレス処理などにも関与することが知られている。  研究チームによると、へんとう体は大脳皮質の味覚野に直接つながっていることが過去の研究で明らかになっていたという。

 今回の最新研究では、へんとう体には大脳皮質の味覚野と同様に甘味を感受する部位と苦味を感受する部位がそれぞれ独立して存在することが分かった。

 マウス実験では「これらの脳部位を個別に操作し、その結果として生じる行動の変化を観察することが可能だった」と、論文共同執筆者のリー・ワン(Li Wang)氏は説明する。

 研究チームは、へんとう体の甘味部位や苦味部位につながるニューロン(神経細胞)接続を人工的に活性化(スイッチ・オン)するためにレーザー光による刺激を用いた。

■味気ないケーキ

 甘味のニューロン接続を活性化すると、マウスはただの水に対して、まるでそれが砂糖水であるかのように反応した。「実験ではこうしたニューロン接続を操作することで、知覚される味質を変化させて甘味を嫌いな味に変えたり、苦味を好きな味に変えたりすることもできた」

 また別の実験では、へんとう体のニューロン接続を「オフ」にしたが、大脳皮質味覚野には何も手を加えなかった。すると、マウスは食べ物を摂取しても、甘味を好む様子や苦味を嫌う様子を示さなかった。 「それはまるで、好物のチョコレートケーキをかじっても、そうすることから何の喜びも得られないようなもの」と、ワン氏は説明する。 「そうなれば、いつもはがつがつと食べていたものでも、数口かじればもう食べるのを止めるかもしれない」

 脳の複雑な味覚系が「個々に分離、改変、除去が可能な」個別の単位で構成されていることを、今回の結果は示唆していると、研究チームは述べている。【翻訳編集】 AFPBB News |使用条件