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広がるスマートスピーカーのニュース配信、倫理面で課題も 米国

米カリフォルニア州サンフランシスコで、米アップルのアップルポッドに話しかける男性(2018年2月9日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / NOAH BERGER

米カリフォルニア州サンフランシスコで、米アップルのアップルポッドに話しかける男性(2018年2月9日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / NOAH BERGER

【AFP=時事】「ニュースを教えて」という呼びかけは、人工知能(AI)アシスタント機能を持つスマートスピーカーの利用者にはおなじみの言葉になった。スマートスピーカーの登場で、各メディアはニュースを伝える新しい手段を手に入れることができたが、増大するIT企業の影響力への懸念も高まりつつある。

 米アマゾン・ドットコム(Amazon.com)のAIアシスタント「アレクサ(Alexa)」を搭載した「Amazon Echo」や、グーグル(Google)の「グーグルホーム(Google Home)」、アップル(Apple)の「ホームポッド(HomePod)」などのスマートスピーカーを通じて、ニュース速報やニュースのまとめ配信を利用するユーザーが増えている。利用方法はいたってシンプルで、それぞれの機器に話しかけるだけ。希望すればより詳細なニュースも入手可能だ。

 英BBC放送、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)、米公共ラジオ局NPRなどのメディアは、利用者らに最新ニュースを届ける上で必要となる、デジタルアシスタント向けの技術開発に余念がない。

 一方の利用者も、自分の好きなニュースを聞くために、ラジオやテレビではなく、スマートスピーカーを選択し始めている。

 アクセス解析ツール「アドビ・アナリティックス(Adobe Analytics)」の分析によると、米国でスマートスピーカーを利用している世帯は全体の約32%に上り、日常的に利用しているとの回答も多かったという。

 エジソン・リサーチ(Edison Research)がNPRのために行った調査では、77%の消費者が、スマートスピーカーを購入した最も重要な理由に「ニュース」を挙げていた。また、そのうちの3人に1人は、「その日のニュースの主な項目」をよく聞いていると答えている。

 他方で、英オックスフォード大学(Oxford University)のロイター研究所(Reuters Institute)による米国、英国、ドイツ、韓国の消費者を対象にした別の調査によると、43%の利用者が「最新のニュースを手に入れるため」にスマートスピーカーを利用していると回答している。

 ワシントン・ポスト──アマゾン創業者ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏が所有──は、アレクサ搭載のスピーカーを通じて最新ニュースを届けている。利用者がすることは、「アレクサ、何か通知ある?」や「アレクサ、何か聞き逃している?」など話しかけるだけだ。

 米ポインター・インスティチュート(Poynter Institute)のメディアアナリスト、リック・エドモンズ(Rick Edmonds)氏は、音声ニュースの配信はすぐに利益を生み出すものではないが、「各メディアは、より多くの視聴者を獲得するための一つの方法としてこれを捉えている」と指摘している。

■倫理面の問題

 米ハーバード大学(Harvard University)と米マサチューセッツ工科大学(MIT)が支援する「人工知能の倫理とガバナンスに関するイニシアチブ」責任者のティム・ウォン(Tim Hwang)氏は、IT企業のプラットフォームがニュース配信で大きな役割を果たすことによって、倫理上および法律上の問題が生じる恐れがあるとしながら、「(大手IT企業の)プラットフォームにキュレーターの役割を明らかな形で与えることになる」ことが考えらえると指摘する。

 虚偽の情報への懸念が広がる中、IT各社が、ニュースの情報源に対する信頼性を確保するために一層難しい立場に置かれることも考えられる。「ニュースはどこから来ているのか──これは興味深い問題だ」とウォン氏は言う。「まだニュース配信は始まったばかりで、スタンダードというものはあまりない」

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(Reporters Without Borders)」は、配信するニュースの選択において、IT企業独自のアルゴリズムがさらに力を持つようになることに懸念を示す。同団体のエロディ・ビアッレ(Elodie Vialle)氏は、音声アシスタントの台頭によって「不明瞭で、その多くが有料となっているメディアのコンテンツ配信方式が助長される恐れがある」と指摘する。

 他方で、オレゴン大学(University of Oregon)でジャーナリズムを教えるダミアン・ラドクリフ(Damian Radcliffe)教授は、「グーグル、アマゾン、アップルのような大手企業が、既にデジタルニュースの玄関口のようになっている」ことを指摘し、スマートスピーカーのような技術がこの傾向に拍車をかける恐れがあると注意を促す。また、ニュースや情報源をどのように選んでいるかということについて、透明性を高める必要があるとも話した。

 スマートスピーカーの最新ニュースは、人が読み上げるラジオニュースのスタイルを採用している。しかし、ニュースとの向き合い方は、アレクサやグーグルの合成音声の介入によって全く違ったものになる。

 米ハーバード大学バークマン・クライン・センター( Berkman Klein Center)の研究者ジュディス・ドーナス(Judith Donath)氏は、「合成音声の多くが信頼できる仲間のような声に設定されている」が、それはアナウンサーの本来の役割と異なっていると指摘する。同氏は現在、技術、信頼、偽りに関する本を執筆している。

 合成音声に、感情や声のトーンなど、利用者がそれぞれのニュースの文脈ごとに期待する要素を与えることは可能だ。しかし、そうすることで予期せぬ問題も生じてくる。

「悲しい出来事や嬉しい出来事を伝えるために、あらかじめプログラムされた音声でニュースを読み上げられた時、果たして我々は落ち着いて聞いていられるのだろうか?」 【翻訳編集】 AFPBB News |使用条件