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住宅・都市開発分野での起業家育成の課題とは〜「Open Network Lab Resi-Tech」がスタート

Open Network Lab Resi-Techの記者発表会にて

Open Network Lab Resi-Techの記者発表会にて

 5G(第5世代移動通信)とIoT(Internet of Things)が普及すると、さまざまな機器や設備がネットワークでつながる時代が到来する。住宅、不動産、都市開発などの領域においても、通信とAI(人工知能)など最先端技術を活用した新たなサービスや製品の開発が期待される。

 こうした中、株式会社デジタルガレージは、住宅や暮らしを中心とするライフスタイル分野におけるスタートアップ(新規企業)育成と、オープンイノベーション推進を目的としたアクセラレータープログラム「Open Network Lab Resi-Tech(以下「Onlab Resi-Tech」)」を始動した。

 同社では2010年より、日本初のアクセラレータープログラムとして「Open Network Lab」を開始し、これまで多くの起業家を育成してきた。その中で培ったメンタリングやプログラム運営ノウハウを、住宅、都市開発関連のスタートアップを対象とした育成プログラムに応用していく格好だ。

大手連携により“ねじれ”を解消

Open Network Lab Resi-Techの基本コンセプト(写真クリックで拡大)

 2018年11月8日、東京・恵比寿にあるデジタルガレージオフィス9階にて、「Onlab Resi-Tech」のパートナーとなる国内大手不動産、建設、住宅関連の企業が集まる共同記者発表会が開催された。デジタルガレージ代表取締役の林郁(はやし・かおる)は冒頭に登壇し、「Onlab Resi-Tech」立ち上げの背景について説明した。

 背景にある課題として、「サイロ化(連携がなく孤立する様子)するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」と「横につながるエコシステムが未整備」であることを挙げた。たとえば、あるスタートアップが、不動産会社Aから資金を得たとすると、そのスタートアップはA社の競合B社とは取引しにくくなるといった現状がある。出資する側の立場としても、競合他社から資金を得ているスタートアップには出資を控えようという意識が働くことが多い。

 後述の各社の挨拶でも紹介されているが、すでに多くの不動産会社は、物件の有効活用や都市の活性化施策のひとつとして、独自にベンチャー投資や支援のプログラム、コワーキングスペースなどの施設を運営している例が多い。そうした自社の取り組みがありながらも、今回このプログラムに参加するのは、新規事業創出を支援する「横につながるエコシステム」の構築が不可欠だという認識を持つに至ったからだろう。

社内の考え方が変わることに期待

 記者発表会の後半に行われた参加各社の挨拶は以下のようなものだった。(挨拶順に内容の一部を掲載)

「スタートアップの持つ先進テクノロジーと我々が持つユーザーの潜在ニーズを掛けあわせることで、何か新しいことができるのではないか、新しい事業、サービスが展開できるんじゃないかと期待しています」(コスモスイニシア 藤岡英樹氏)

「ゼネコンとして弊社は長い歴史があるのですが、逆にそのために動きが悪いところがあり、新しいことへの挑戦に二の足を踏むところがありました。今回はスタートアップの方々と新しいことに挑戦する中で、弊社の中の考え方が変わるようなことも期待しています」(竹中工務店 村上陸太氏)

「東急でもアクセラレータープログラムを実施しており、新しく生まれてくるものをどう支援するかに非常に興味を持っています。また私どもは日本の暮らしのIoTをテーマにして、一般消費者の方が、家の中がどうなると、よりハッピーになるのかを、100以上の企業と一緒に考える取り組みも進めています。そうした動きとも協調していきたい」(東急グループ 市来利之氏)

「住宅を提供している立場から見ると、実はお使いになるエンドユーザーの方がはるかに進んでいて、IoTなどいろいろな情報サービスを受けておられます。住宅を提供するにあたり、ぜひこのプロジェクトで新しい発見やサービスに挑戦していきたい」(東京建物 柴山久雄氏)

「今回の活動を通して、有望なベンチャー企業や、パートナー企業同士の連携に期待しております。先ほど林さんから説明があった『サイロ化するCVC』というのは私どもも課題だと思っており、そういった課題感を持ちながら、新しい価値を生み出して行ければ」(野村不動産ホールディングス 田辺邦彦氏)

「参加させてもらったのは、今回のアクセラレータープログラムが、住まいと暮らしなどライフスタイル領域を対象としたものであったためです。我々は住宅事業をやっていますが、そことのシナジー効果に期待したい。もう一点が、我々大阪・梅田でGHV#5)という拠点を設けて、スタートアップ育成に取り組んでいますが、今回の協業によって、さらにネットワークを広げていきたいということです」(阪急阪神不動産 松田富行氏)

「都市に集まる人や物や金や情報などのリソースをつなげながら、コミュニケーションをデザインするのが、我々デベロッパーの仕事の本質だと思っています。今回はさまざまな新しい出会い、パートナー企業との連携を期待して参加させていただきました」(三井不動産 光村圭一郎氏)

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 多くの時間を過ごす住宅には、多くの個人データが集積する、そのデータをどう活用し、より快適な暮らしを提案するのか。センサーの開発、データの解析、解析結果を用いたAIによる家電・住宅設備の操作……。スマートホームのプラットフォームなどはすでに米国の製品が日本国内にも出回り始めている。日本からも、住宅や都市開発などの分野での有力なスタートアップが登場し、そしてこの分野でも新しいエコシステムの構築がなされることを期待したい。

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