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「遺伝子編集」で双子の女児誕生か、中国政府が調査へ

母親の指を握る新生児の手(2013年9月17日撮影、資料写真)(c)PHILIPPE HUGUEN / AFP

母親の指を握る新生児の手(2013年9月17日撮影、資料写真)(c)PHILIPPE HUGUEN / AFP

【AFP=時事】中国南部深セン(Shenzhen)にある南方科技大学(Southern University of Science and Technology)の科学者が、遺伝子編集を施した双子の女児を誕生させたと発表した。事実であれば遺伝子編集技術を使って子どもが生まれた初の例となる発表を受け、同国政府はこの主張に関する調査を行うよう命じた。この研究活動は画期的な初の臨床例と考えられる一方で、激しい批判にさらされている。

 南方科技大学の研究者、賀建奎(He Jiankui)氏はユーチューブ(YouTube)に投稿した動画の中で、数週間前、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染を防ぐためにDNAを改変された双子の女児が誕生したと説明。動画は科学界で白熱した議論を引き起こしている。

 賀氏らが主張している今回の成果をめぐっては、疑念を投げ掛ける専門家もいれば、優生学の現代版だと非難する専門家もいる。国営新華社(Xinhua)通信は27日未明、中国国家衛生健康委員会(National Health Commission)がこの件に関する「即時調査」を行うよう命じたと、同委員会のウェブサイトに掲載された声明を引用して報じた。

 米スタンフォード大学(Stanford University)で学んだ賀氏は、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」を用いて双子のDNAを改変したと述べている。CRISPRはDNA配列の削除や置き換えをピンポイントの精度で行うことを可能にする技術。

 今回の成果は、米業界誌「MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)」に25日に掲載された記事で明らかになった。この記事は、賀氏のチームが実験に参加する夫婦を募集するためにインターネット上に投稿した医療文書に言及していた。

 賀氏によると、「ルル(Lulu)」と「ナナ(Nana)」と仮名で呼ばれている双子の新生児は通常の体外受精(IVF)で誕生したが、子宮に移植する前に特別な改変を加えた卵子を使用したという。

「夫の精子を妻の卵子に送り込んだ直後、さらに発生学者がCRISPR/Cas9タンパク質と、将来のHIV感染から女児らを守ることを目的とする遺伝子手術を行うための命令を送り込んだ」と、賀氏は説明した。

 賀氏は今週香港で開催される国際会議に出席し、28、29の両日に講演する予定になっている。だが、今回の主張については第三者の検証も行われておらず、論文も査読専門誌に発表されていない。こうした不備が、賀氏のチームに批判的な人々の槍玉に挙がっている。

 遺伝子編集技術は、遺伝性疾患の解決策となる可能性があるが、DNAの改変が未来の世代に伝えられ、ゆくゆくは遺伝子プール全体に影響する恐れがあるため、論議の的となっている。MITテクノロジーレビューも、「この技術は倫理的な非難の的になる」と警告している。

■「危険で、無責任」

 今回の研究は、中国の科学者や研究機関の強い非難にさらされている。賀氏が勤務する南方科技大は26日、声明を発表し、賀氏の研究が「学問的な倫理と規範に著しく反する」と指摘。また、賀氏は2月から無給休暇を取っており、「今回の研究活動は賀教授が学外で実施した」と述べた。

 中国の科学者100人からなるグループは共同声明で今回の研究を非難し、国家による規制の強化を呼び掛けた。  英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のジョイス・ハーパー(Joyce Harper)教授(遺伝学・ヒト発生学)は「HIVへの耐性のためのヒト胚のゲノム編集に関する今日の発表は時期尚早であり、危険で、無責任だ」としている。

■不正行為の歴史

 ヒトDNAの編集は大きな議論を呼んでいる問題で、米国の実験室内研究でしか許可されていない。米研究チームは昨年、潜伏性ウイルス感染を排除する目的で子ブタの遺伝情報を編集することに成功したと発表した。  中国の研究者らがヒト胚編集技術を用いて実験を行ったのは今回が初めてではない。昨年9月、中国・中山大学(Sun Yat-sen University)のチームが、ヒト胚にある病原性遺伝子変異を修正するように適合させた遺伝子編集技術を使用した。

 また、中国の学界内には、昨年起きたスキャンダルなどの不正行為の歴史がある。昨年のスキャンダルは「不正が認められた」学術論文100本の撤回につながった。

 AFPは賀氏にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。香港の会議の主催者にも問い合わせを行ったが、やはり回答は得られておらず、主催者側が賀氏の研究を把握しているかどうかは不明だ。

 国際会議のウェブサイトに掲載されている録画動画では、議長を務める生物学者のデービッド・ボルティモア(David Baltimore)氏が「われわれは人類の遺伝子の改変につながることは何も行っておらず、世代を超えて伝わり続ける影響が生じることは何も行っていない」と述べている。【翻訳編集】 AFPBB News |使用条件