Open Innovation Platform
FOLLOW US

AI記者が世界の報道を変える? 脅威論や悪用の懸念も

米ニューヨークのマンハッタンにある、偽ニュースを販売するニューススタンド(2018年10月30日、資料写真)。(c)ANGELA WEISS / AFP

米ニューヨークのマンハッタンにある、偽ニュースを販売するニューススタンド(2018年10月30日、資料写真)。(c)ANGELA WEISS / AFP

【AFP=時事】テキストを自動作成するボット「トビ(Tobi)」は、スイスの大手メディア、タメディア(Tamedia)のために、2018年11月にスイスで行われた選挙結果に関する記事を4万本近く書いた──たった5分で。

 このような人工知能(AI)プログラムは10年ほど前から実用化されているが、最近になり報道機関での利用が大きく広がっている。報道機関は、記事の作成から個人の関心に合わせたニュース配信、時にはデータ検索による重要記事の選別まで、トビのようなロボットに頼るようになっている。

 米マイアミで2月に開かれた「コンピュテーション・ジャーナリズム・シンポジウム(Computation + Journalism Symposium)」で、ある新聞が行った報告によると、トビはタメディアのために、スイスの2222市町村の選挙結果に関する記事をフランス語とドイツ語で同時に作成した。

 米紙ワシントンポスト(Washington Post)は、2014年から「ヘリオグラフ(Heliograf)」という同様の自動プログラムを使っており、地元のスポーツやビジネス情報に加え、約500件の選挙戦に関する記事を毎日作成することができるようになった。

 ロボットの利用について報道機関は、人間の記者や編集者と置き換えるつもりではなく、むしろスポーツの試合結果や決算報告といった単調な記事作成から彼らを解放するためのものだと説明している。

 ヘリオグラフはワシントンポスト編集部を支援するための道具として開発されたと、同紙の戦略的イニシアチブ担当責任者ジェレミー・ギルバート(Jeremy Gilbert)氏は述べている。

 ギルバート氏は、ヘリオグラフは記事作成だけではなく、記事の更新、配信もより素早くできると話す。それによって記者たちは他の仕事に集中できるため、これまでのところ、おおむね好評だという。

■世界中に広がる記事作成の自動化

 世界中の報道機関で記事作成の自動化が広がっている。例えばノルウェー通信(NTB)では、結果を30秒以内に配信するためスポーツ記事作成を自動化した。

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)は、地域一帯の地震速報を配信するためのロボットを開発した他、殺人事件に関する記事作成も一部自動化している。

 AP通信(Associated Press)では上場企業3000社の四半期ごとの決算報告記事を自動化している。また今年は、大学対抗バスケットボールの試合予想をコンピューターで作成・配信する計画を発表している。

 さらにロイター通信(Reuters)は昨年、一定の傾向や例外的出来事を特定し、記者に書くべき記事を提案するロボット「リンクス・インサイト(Lynx Insight)」の導入を発表した。

 ブルームバーグ(Bloomberg)の編集長ジョン・ミクルスウェイト(John Micklethwait)氏は昨年、同社のシステム「サイボーグ(Cyborg)」は「企業が決算報告を行うのと同時に分析」し、数秒以内に速報を作成すると明らかにした。ブルームバーグの記事の4分の1は「ある程度の自動化がされている」という。  2015年のフランス地方議会選挙の際に、仏日刊紙ルモンド(Le Monde)と提携会社シラバス(Syllabs)はコンピュータープログラムを使って、全国3万6000の自治体の選挙結果について、ウェブサイト15万ページ分の記事を作成した。

■ロボットに調査報道は可能か?

「個別化」や地域限定化を容易にできることがアルゴリズムを活用した記事の利点の一つで、選挙結果やスポーツの試合結果の配信に活用できる。  報道の専門家は、コンピュータープログラムに限界はあるが、時には人間にできないことを達成できることも認めている。

 米ジョージア州アトランタ(Atlanta)の地方紙アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション(Atlanta Journal-Constitution)のデータジャーナリズム部門は、医師が性的不品行により当局に通報されたり、訴えられたりした450件の事例と、うち半数の医師が免許を剥奪されていないことを突き止めた。具体的には、機械学習とAIを活用して各事例を分析し、性的不品行の確率を出し、それを記者たちが再検討した。

 複数の研究によると、自動作成した記事の大半はそのことが明記されており、読者はそのような記事を受け入れているようだ。

 米コロンビア大学(Columbia University)トウ・センター・フォー・デジタルジャーナリズム(Tow Center for Digital Journalism)の研究員、アンドレアス・グレーフェ(Andreas Graefe)氏がドイツの読者を対象に行った調査によると、人間が執筆した記事は「読みやすさ」では勝っていたが、「自動化された記事の方が信頼性は高いと評価された」。

■脅威論や悪用の懸念も

 今のところ、記者とロボットは助け合っているようにみえる。だが、いつの日か、AIが制御不能となったり、記者の仕事を奪ったりするのではないかという懸念は拭い切れない。

 人工知能研究非営利団体オープンAI(OpenAI)の研究者らは2月、非常に優れた自動文章作成プログラムを開発したと発表したが、悪用されることへの懸念から詳細は非公開としている。

 研究者らは、このプログラムが偽ニュースを作成したり、他人になりすましたり、ソーシャルメディア上で偽情報を自動的に作成したりするなど、不正な目的に利用される恐れがあると説明している。  だが、データジャーナリズムを専門とする米ニューヨーク大学(New York University)教授、メレディス・ブルサード(Meredith Broussard)氏は、今すぐロボットが報道機関の編集部を乗っ取るような脅威はないと語る。  多数の報道機関がAIを積極的に採用しているが、今のところ大半は「最も退屈な」記事を扱っていると、ブルサード氏は指摘した。【翻訳編集】 AFPBB News |使用条件