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思考を音声に変換、脳内埋め込み型機器を開発 米研究

PET(陽電子放射断層撮影)でスキャンされた人の脳(2019年1月9日撮影、資料写真)。(c)Fred TANNEAU / AFP

PET(陽電子放射断層撮影)でスキャンされた人の脳(2019年1月9日撮影、資料写真)。(c)Fred TANNEAU / AFP

【AFP=時事】外傷や脳損傷などが原因で話せない人が、再び話せるようになる日が来るかもしれない。人の思考を直接解読し言葉にする革新的な脳内埋め込み型機器(インプラント)を開発したとの研究結果が25日、発表された。

 神経学的疾患の中には患者の言葉を発する能力を損なうものがあるが、このような患者の多くは、頭部や目の動きを使って文字をつづるコミュニケーション機器に依存し、苦労して一文字ずつ書いているのが現状だ。

 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)の研究チームは、志願者に数百の文章を読み上げてもらい、埋め込み型の機器を用いてその間の脳信号をスキャンすることで「合成」発話として再構成することに成功した。

 研究チームはこの技術がまだ初期段階にあると強調している。だが、この技術により、言葉を発せられない患者の思考をリアルタイムで発話に変換できるようになることが期待されるという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に論文を発表した研究チームは、発話の電気的活動を直接的に変換するのではなく、次のような3段階を用いた。

 第1段階では、被験者に文を読み上げさせ、脳表面に埋め込んだ機器でその神経活動を観察するのと同時に、発せられた言葉の音響音声を記録した。「Ship building is a most fascinating process(造船は非常に興味深い工程だ)」や「Those thieves stole thirty jewels(この泥棒たちは宝石を30個盗んだ)」などの簡単な平叙文が使われた。

第2段階では、発話に必要な体の動き(顎、口、舌による特定の調音運動)を表す神経信号を解読し、合成音声の文に変換した。

 最終段階では、クラウドソーシングで集めた志願者が、コンピューターが発話した言葉や文章を確認した。発話は非常に正確だった。発音が不明瞭な部分も少しみられたが、合成発話された文章は被験者が読み上げた文章に非常に近く、大半の単語は明確に理解できた。今回の実験は発話が可能な人のみを対象として実施されたが、被験者が声を出さずに口の動きだけで文章を読んでも、発話の合成は可能だということも分かった。

 論文の主執筆者エドワード・チャン(Edward Chang)氏は「話している時に口の中がどのような動きをしているかを把握している人はほとんどいない」と指摘する。

「脳は思考を声道の動きに変換する。われわれは研究で、この解読を試みている」

 この技術は、発話の方法を知っているがその能力が失われた患者の脳活動を言葉に翻訳できる埋め込み型機器の実現への道を開く可能性がある。

 米ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)の専門家らは今回の研究について「説得力がある」と指摘する。「研究がさらに進展し続ければ、発話障害を抱える人が自由に思ったままを口にする能力を取り戻し、自分の周りの世界とのつながりを再び確立できることが期待できる」とコメントしている。【翻訳編集】 AFPBB News |使用条件