Open Innovation Platform
FOLLOW US

QRコードは時代遅れ? 顔認証決済が拡大 中国

中国・天津のスーパー「IFuree Go」で、顔認証決済をする女性(2019年8月21日撮影)。(c)Nicolas ASFOURI / AFP

中国・天津のスーパー「IFuree Go」で、顔認証決済をする女性(2019年8月21日撮影)。(c)Nicolas ASFOURI / AFP

【AFP=時事】現金も、カードも、スマートフォンもいらない――顔認証技術が普及する中国では、顔を向けるだけで商品の購入が可能になる顔認証決済の利用が広がっている。

 中国はモバイル決済インフラが最も発達した国の一つだが、顔認証という新たな決済システムが全国に展開され始めており、もはやQRコードですら時代遅れになりつつある。

 顧客は支払いの際、カメラを搭載したPOSレジの前に立つだけでいい。顔の画像とデジタルペイメントシステムまたは銀行口座が一致すれば支払いは完了する。

 中国では顔認証技術が既に広範囲で使用されているが、信号無視をした歩行者の社会信用評価や犯罪者の逮捕など、市民の監視に利用されることも多い。また、弾圧や反対意見の取り締まりに使われているとの批判もあり、特に新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)には厳重な監視体制が敷かれている。

 オーストラリア・シドニーのマッコーリー大学(Macquarie University)の中国研究者アダム・ニー(Adam Ni)氏は、「監視や反政府活動家の追跡、社会と情報の統制、特定民族に対するプロファイリングなど、政府が自分たちの目的を達成するためにデータを使う可能性があり、(中略)非常に危険だ」と指摘した。

 市場をけん引するのは中国電子商取引(EC)大手、アリババグループ(Alibaba Group)の決済サービス「アリペイ(Alipay)」で、既に100都市に顔認証の専用機器を設置している。

 アリペイは、顔認証決済分野は今後も大きな成長が見込まれると予測しており、最近では「iPad(アイパッド)」ほどの大きさの、笑顔を向ければ決済される支払いサービス「スマイル・トゥ・ペイ(Smile to Pay)」改良版を市場に投入した。アリペイはこの技術の実用化に3年で30億元(約450億円)つぎこんだ。

 約6億人のユーザーが利用する中国のソーシャルメディア「微信(ウィーチャット、WeChat)」を運営するIT大手「騰訊控股(テンセント、Tencent)」は8月、新たな顔認証決済「フロッグ・プロ(Frog Pro)」を発表した。また、急成長する顔認証決済分野への新規参入を目指すスタートアップ企業も増えている。

■消費者は利便性を歓迎

 香港の調査会社「カウンターポイント(Counterpoint)」のメンメン・チャン(Mengmeng Zhang)氏は顔認証決済について、「主要なモバイル決済企業が後押ししていることもあり、確かに広く普及する可能性はある」と話す。またアリペイは、業者に補助を出したり、消費者に特典をつけたりして、顔認証決済普及に多額の資金を投入しているという。

 さらなるデータ収集機能を搭載した最新技術も登場するなど、データの安全性やプライバシーに対する懸念があるものの、消費者はあまり心配していない様子だ。

 天津(Tianjin)にあるセルフサービス式スーパー「IFuree Go」では、顧客の顔を3Dカメラでスキャンして、顔の縦、横の長さと奥行きを測定し、店を出る際にも同じようにスキャンするシステムを導入している。

 顔認証決済で支払いを終えたある年配の女性は、「とても速く買い物を済ませられるので便利」「従来のスーパーでは、レジに並ばなくてはならないのでとても面倒だった」と話した。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)AIガバナンスセンター(Center for the Governance of AI)のジェフリー・ディン(Jeffrey Ding)氏はこう指摘する。「スマート決済の流行は、企業の目から見て特に二つの目的がある。万引き防止と消費者の嗜好(しこう)データを集め分析しマーケティングに利用するためだ」

 顔認証決済技術は、中国が進めるスマート技術や人工知能(AI)分野の開発にも生かされる。

 米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のアダム・シーガル(Adam Segal)氏は、「(顔認証決済の)大規模な導入は、人の顔や利用目的といった膨大なデータをIT企業に提供する。これは、AI産業の柱の一つとして顔認証技術を発展させるという政府の計画にも一致する」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件