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「第2の皮膚」 義手で触覚を再現する最新バーチャル技術

アクチュエーターが埋め込まれた義手を使うギャレット・アンダーソンさん。米ノースウエスタン大学提供(2019年11月20日提供)。(c)AFP PHOTO / NORTHWESTERN UNIVERSITY

アクチュエーターが埋め込まれた義手を使うギャレット・アンダーソンさん。米ノースウエスタン大学提供(2019年11月20日提供)。(c)AFP PHOTO / NORTHWESTERN UNIVERSITY

【AFP=時事】米イリノイ州に住むギャレット・アンダーソン(Garrett Anderson)さんは、自身の2人の子どもと同時に手をつなぐ喜びを一度も味わったことがない──。

 米陸軍兵士だったアンダーソンさんは2005年、派遣先のイラクで、爆風で飛び散った金属片を右腕に受け、ひじから下を失ってしまったのだ。

 退役後、アンダーソンさんは物を持ち上げるといった基本的な動作を可能にする義手を使い始めたが、義手では触覚まで再現することはできない。

 こうした状況を変えるかもしれないとされているのが、第2の皮膚となる最新の「バーチャルリアリティー(仮想現実、VR)」技術だ。このVR技術は人工装具とコンピューターゲームの両方に応用できるよう設計されている。

 米ノースウエスタン大学(Northwestern University)の研究チームが開発したこのVRシステムでは、個別に制御可能な32個のアクチュエーターを使う。アクチュエーターは電気的な刺激や振動を発する機器で、皮膚に密着するシリコン製の柔軟な素材に埋め込まれている。研究チームは詳細をまとめた論文を20日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 小さなコインくらいの大きさのアクチュエーターは、スマートフォンやタブレットなどのワイヤレスのタッチパネルで個別に制御され、触覚を生成するために振動する。圧力と感覚パターンはユーザー側で制御できる。

 このVRシステムを組み込んだ義手を、アンダーソンさんも使ってみた。その結果、アクチュエーターが埋め込まれたパッチを皮膚に貼り付けている間は、義手の指先から腕に送信される感覚を感じることができたという。

 研究者のジョン・ロジャース(John Rogers)氏は、時間の経過とともに人間の脳はこの感覚を「代理の触感」に変換すると説明する。

■「感情の結びつき」

 この機器は社会的な相互作用のために利用できるかもしれないと、論文の執筆者らは指摘している。テレビ電話で大切な人の腕をさすったり、バーチャルゲームでチームメートの肩をポンと叩いて励ましたりするのが可能になるわけだ。 「触覚は、最も奥深い感情面での結びつきを人々の間にもたらす」と、想定される利用方法についてロジャース氏は説明する。アンダーソンさんもゆくゆくは、この技術を通じて13歳と10歳の2人の子どもの手を同時に握ることができるようになるかもしれない。

 ワイヤレスでバッテリー電源を必要としないこの機器は、アップルペイ(Apple Pay)のようなスマホ決済アプリに使われているのと同じ近距離通信プロトコルを採用している。  ロジャース氏のチームは今後、熱に関する研究にも着手したいとしてる。これは、義肢を通じて飲み物がどのくらい熱いか冷たいかを感じられるようにする技術だという。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件