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中国、顔認証技術めぐり初の民事訴訟 国民に広がる個人情報侵害への不安

中国・河南省鄭州市の鄭州駅の公衆トイレの入り口に設置された顔認証技術が導入されたトイレットペーパーのディスペンサーを見つめる女性(2019年2月25日撮影、資料写真)。(c)STR / AFP

中国・河南省鄭州市の鄭州駅の公衆トイレの入り口に設置された顔認証技術が導入されたトイレットペーパーのディスペンサーを見つめる女性(2019年2月25日撮影、資料写真)。(c)STR / AFP

【AFP=時事】中国では、空港やホテル、ネットでの買い物、公衆トイレに至るまで、顔認証技術が浸透しているが、法律を専門とする大学教授が昨年10月、顔認証技術の使用をめぐりサファリパークを訴えたことが分かった。国内メディアによると、このような訴えは中国では初めてだという。この訴訟により、国内では個人情報の保護と侵害についての議論が高まっている。

 中国政府は先進技術において世界のリーダーとなる政策を掲げており、その一環で顔認証技術や人工知能(AI)の商業利用や防犯などを手掛ける企業を支援している。市民の多くも、これらの技術がもたらす利便性・安全性と引き換えに、ある程度の個人情報の放棄を認めているとの調査結果もある。だが、指紋や顔認証による生体認証データの蓄積が進んできたことから、状況は変化している。

 浙江(Zhejiang)省杭州(Hangzhou)にある浙江理工大学(Zhejiang Sci-Tech University)の教授である郭兵(Guo Bing)氏が、サファリパーク「杭州野生動物世界(Hangzhou Safari Park)」を訴えたことに対する国民の反応は、法的予防策が整備される前に顔認証などの技術使用が拡大していることへの不安の表れだ。

 中国版ツイッター(Twitter)の「微博(ウェイボー、Weibo)」では、この訴訟に関連した投稿に1億以上のアクセス数があるが、多くのユーザーは、個人情報収集の禁止を求めている。こうした意見は、中国で金融詐欺や携帯電話番号の流出、フィッシング詐欺など、個人情報の侵害が横行している現状に一因がある。

 裁判の日程は分かっておらず、郭氏の直接のコメントは得られなかったが、同氏は、自身の民事訴訟において、顔認証などのデータ収集は「それが流出するか、不法に提供または侵害された場合、消費者自身とその資産の安全性が簡単に脅かされてしまう」と主張している。

 科学技術省は同省の広報誌で、サファリパークのやり方は性急かつ乱暴で、国民感情に無関心なことを表していると述べている。

■技術進歩の面では米国に大きく遅れている

 中国ではいまだ個人情報に特化した法律が整備されていない。現在、法案化が進められているが、いつ導入されるか定かではない。

 一方で政府は、先進技術による一大監視国家を築こうとしている。至る所に監視カメラが設置されているが、当局は犯罪対策と国民の安全を守るためには必要だと説明している。

 個人情報保護に関する法律を導入した場合、政府が進める監視国家政策を妨げる可能性があり、個人情報保護法が成立したとしても、大きな変化はないのではないかと専門家らは指摘する。

 北京師範大学(Beijing Normal University)の法学部教授で、亜太網絡法律研究中心(Asia-Pacific Institute for Cyber-Law Studies)の創設者である劉徳良(Liu Deliang)氏は、「企業内に個人情報やデータ保護の専門家を配置するような象徴的な動きはあるかもしれないが、形式的なものにすぎないだろう」と述べている。

 中国の新奇なハイテク技術を伝えるニュースは多いが、実際には、技術進歩の面では米国に大きく遅れており、中国が勝っているのは技術の広範囲な商業使用のみだとする専門家らの声もある。

 中国の携帯電話でのインターネット利用者数は8億5000万人以上と世界最多で、企業にとって中国は、技術の実行可能性を探るための格好の実験場だ。

 国内では、領収書の支払い、学校での出席確認、公共交通機関の改札の効率化、交通規則を無視して道路を横断する歩行者の特定など、さまざまな用途に顔認証が用いられている。観光地によっては、トイレットペーパーの使用量を抑えるため、顔認証でトイレットペーパーを受け取れる仕組みの公衆トイレが設置されている場所もある。

 だが、中国消費者協会(China Consumers Association)の2018年11月の報告書によると、携帯アプリの90%以上が個人情報を、10%は生体認証データを過度に収集しているとみられている。

 懸念が広がったのは、昨年12月に政府が通信事業者に対し、直販店で新しい電話番号を契約する顧客を登録する際、利用者の顔認証データを収集することを義務付けてからだ。さらに、多数の顔認証データがインターネットで1件10元(約158円)ほどで販売されているという国内メディアの最近の報道も、そうした動きに拍車を掛けた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件