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「世の中の困りごと」の解決を目指し5年でMaaSの一角を担う存在に

akippa株式会社代表取締役社長 CEO 金谷元気氏

akippa株式会社代表取締役社長 CEO 金谷元気氏

 人気のイベントや観光地にクルマで向かうと、空き駐車場を探すのに苦労することはないだろうか。そんな時、駐車場シェアリングのサービスが便利だ。現在この分野のトップシェアはakippa株式会社(大阪府大阪市浪速区)が展開する「akippa」だ。

 空き駐車場を探したい人は「借りる側」として会員登録する。一方、自宅や月極駐車場の駐車場に空きが出た個人や法人は「貸す側」としてオーナー登録すると、その場所はakippaアプリ上に「akippa駐車場」として表示される。現在その数は全国33,000ヵ所だ。会員はスマホで周辺の駐車場を検索・予約して15分単位で利用する。料金はクレジット決済され、手数料が引かれてオーナーに振り込まれる仕組みだ。

 2019年11月に福岡市・北九州市で行われた、トヨタ、西日本鉄道によるスマートフォン向けマルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」の実証実験に、akippaは駐車場シェアのサービス提供者として参加した。my routeは、バス・鉄道・タクシー・サイクルシェア・カーシェア・自動車などの多様なモビリティ手段を連携させ、シームレスな移動体験をエンドユーザーに提供するもので、MaaSの取り組みといえる。my routeの提供エリアは2020年春には横浜市をはじめ全国に広がる予定で、そこにもakippaは参加する。

 akippaは金谷元気氏が11年前に立ち上げた営業会社がピボット(事業方針変更)し、わずか5年間でここまで一気に成長した。金谷氏にこれまでの道のりと今後の展開と聞いた。

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社内の反対を押し切りピボットしたと語る金谷氏

 金谷氏によると、創業した出版(広告)や携帯電話販売の営業会社は順調に売上を上げていたが、心の中では「これは労働集約型のビジネスでスケール(大きく成長)しない。将来はない」と悩んでいた。そもそもakippa株式会社のビジョンは『世の中の困りごとを解決する』というものだった。2014年頃、社員を集め、全員で「何に困っているか?」のブレーンストーミングを連日行い、「駐車に関する困りごと」がテーマとしてあぶり出された。

 金谷氏は、現在のakippaとなるプロジェクトチームを立ち上げたが、営業担当者達からは新しい事業に対しての不安もあり、納得が得られなかったという。「せっかく利益が出ているのに」「もっと営業すればいいのではないか」という声も多かった。しかし、akippaは順調な立ち上がりを見せ、金谷氏は事業の中心を駐車場シェアに据えるとともに、営業会社として行っていた事業は売却した。

駐車場を交通社会のハブに

 そして5年半の間で会員は170万人に達した。金谷氏は「カーシェアリング会員は20年間かけて170万人に達したといわれていますが、われわれは5年半で170万人の会員を獲得できました」と話し「akippa駐車場は交通社会のハブになっていく」と続けた。

akippaが考えるモビリティプラットフォーム図

 2022年には貸し出しできる駐車場数を20万拠点にしていく構想。さらにakippa駐車場を「充電拠点」としてあらたな価値を付加していくという。「EV車の比率は2040年には57%になるといわれていますので、akippa駐車場はその充電スポットになれるかもしれません(金谷氏)。新電力事業について株主の住友商事と話を進めており、akippa駐車場のオーナーに電力を買ってもらい、その電力をakippa駐車場の利用者に提供するイメージだ。アプリ上に「充電できる駐車場」として表示されるようにすれば、利用率が高まるかもしれない。または充電料金を徴収してもいいだろう。そしてその先には「自動運転車の乗り合い場所」としてakippa駐車場の存在意義があると金谷氏はいう。それが「交通社会のハブになること」だ。

 しかし、駐車場を33,000ヵ所からどうやって20万ヵ所に増やすのか? 1月30日、akippaは、DeNA SOMPO Carlifeと提携し損保ジャパン日本興亜の保険代理店網を全国で活用すると報道発表した。高年齢者層の免許返納により損保の解約数は年々増え、損保代理店の減収が深刻だという。「免許返納などを理由としたクルマを手放す情報は、真っ先に損保代理店に入ってくるものです。そうしたら駐車場が空いたなとわかるわけです。そこで損保代理店さんが、駐車場が空いたならシェアに提供しませんかと提案するわけです」(金谷氏)クルマを手放してakippa駐車場のオーナーになってもらえれば、駐車料の一部が損保代理店に入り減収をカバーできる。1000店舗ぐらいの損保代理店の獲得を目標にしていたが、申し込みが殺到しており2022年末までに3000店舗と上方修正した。これら代理店が営業担当としてakippa駐車場を開拓してくれるのだ。

こうなると2022年20万ヵ所という目標も現実味を帯びてくる。それと同時に街中に充電拠点も増えていくわけだが、これは災害対策からも有効かもしれないと話を向けると、金谷氏は我が意を得たりと「クルマをそこに停めて万一の時に電気を配分できる場所にする。防災に強い街ができるかもしれないですね。そもそも弊社は『世の中の困りごとを解決する』がビジョンですから」と語った。さらに、「モビリティにこだわりはないんです」と金谷氏は続けた。次の困りごとは「孤独」ではないかという。「リアルコミュニティ形成に興味があります。モビリティプラットフォームを作りつつ、人と人をつなぐことをやりたい」(金谷氏)

ダイナミック・プライシング導入も

170万人の会員が、日々akippa駐車場を利用するうちにデータが蓄積されてきた。akippaではデータサイエンティストのサポートのもと、分析を続け、AIでの実験も試みている。その成果として「ダイナミック・プライシング」に反映されているという。たとえばあるスタジアムでコンサートが開催される。akippaでは30日前から需要予測を行い、最適な駐車場料金を設定する(原則オーナーは駐車場料金の設定はakippaに委ねている)。毎日、全国のakippa駐車場の料金をコントロールできるのだ。アーティストやスポーツチームによって、観客がどれぐらいクルマを利用するかをはじき出し、最適な料金を設定すれば利用率は上がり、オーナー収入も上がる。

「以前はダイナミック・プライシングの構想を駐車場業界の方に話しても、相手にされなかったんですよ」と金谷氏は笑った。まったく異業種から参入したスタートアップが、5年でMaaSのキープレイヤーになろうとしている。

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