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不動産テック調査 パートナーとして今後はスタートアップを活用も

不動産テック認知度調査(イメージ 本文とは関係ありません)

不動産テック認知度調査(イメージ 本文とは関係ありません)

 株式会社NTTデータ経営研究所(東京都千代田区)が2019年10月28日~2019年11月11日に実施した、「第2回 企業における不動産テックの取り組み動向調査」の結果が公表された。不動産ビジネスのテクノロジーによるイノベーションは実際にどの程度その必要性が認識され、進捗しているのだろうか。

 調査はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(東京都品川区)が提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に行われた(有効回答数は4,770サンプル)。

 まずは、全業種の回答者対象に「不動産テック(PropTechもしくはReal Estate Tech。当媒体ではResi-Tech)」についての認知度を調査したところ、全体の3.9%(186サンプル)が不動産テックと言われるものを認知していることがわかった。これは金融分野での「FinTech」の22.9%に比べると低いものの2016年度の調査時の3.1%から若干増えている。さらに、不動産テックを認知している人の所属企業のうち43%は「過去・現在・今後において」不動産テックに取り組んでいると回答した。

(2018 年度との比較)取り組む不動産テックにおける導入テクノロジー(図をクリックで拡大)

 これらの企業が実際に取り組んでいる不動産テックはどのようなものか。主に導入されているテクノロジーを尋ねたところ(複数回答可)「ビッグデータ(DMP:Data Management Platform含む)=63.8%」「AI(機械学習、ディープラーニング含む)=51.3%」「Web化・オンライン化=48.8%」となった。それに「IoT」「高性能センサー」が続く。

 別の設問で不動産テックに取り組む価値について、どのようなサービス群に価値を感じるかを集計したところ、最も多いのは「不動産データビジネス:不動産の成約価格、物件情報などのデータを収集・分析・共有することで資産価値評価や売買予測等を行うサービス群 =23.8%」との回答がトップとなった。こうしたことから、不動産売買情報のデジタル化からスマートシティの構築管理まで不動産テックの領域はさまざまあるが、現時点では不動産物件の情報や価格のデジタル化、プラットフーム化という基本的な部分での取り組みが進んでいることがわかる。

 実際の取組みにおいて「IoT」「高性能センサー」が、3位以降にあること、また、価値に関するアンケートでは「3D モデリング・3D マッピング:実際の空間をスキャンしたり、設計図などから PC 上に 3D で再現するサービス群=21.3%」が評価されていることなどを見ると、不動産テックも単なる情報のデジタル化から、スマートホームや物件のデジタルツイン化など次の段階に進みつつあることが見て取れる。

 また、不動産テックで成果をあげるために必要なことは、「有望なターゲットセグメント特定し、顧客ニーズを明確化する」ことであり、実施については自社単独で行うのではなく、外部リソースを活用すること。さらには有望企業への出資や買収をし、その出資先企業との積極的な関係構築が重要であることが調査から明らかとなっている。

(2018 年度との比較)取り組む不動産テックにおける社外の人的リソースの活用状況(図をクリックで拡大)

 さらに不動産テックについてそのパートナーとなるのは、これまでITベンダーやコンサルタントといった、デジタル化のサポートを行う企業を活用するこという回答が多いものの、2018年度の調査から大幅に伸びたのが、「起業家のようなイノベーションの専門家の活用」であり、2018 年度の 8.1%から 2019 年度は 22.5%へ、14.4%も増加した。この分野ではこれからスタートアップの出番が増えていくことが期待される。

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(2016 年度との比較)X-Tech の認知度の比較(図をクリックで拡大)

 余談ながらこの調査の、最初に「X-Techの認知度」、つまり「フィンテック」や「アドテク」を知っているか否かを尋ねた結果が公表されている。その結果、最も知られていたのは「金融:FinTech (22.9%)」で、続いて「医療:MedTech (9.7%)」「ヘルスケア:HealthTech (8.7%)」と続き、他は 3%~6%前後の認知度となっている。前述のように不動産テックは 3.9%。WEBサイト運営の関係者には馴染み深い「広告:AdTech」も5.8%であった。

 最も多いのは「X-Tech についてはどれも知らない=67.5%」との回答で、今後さまざまな産業分野で「DX(digital transformation)」が始まり、「破壊的イノベーション」が既存の企業を侵食していくなどと言われながら、「さて、それを担うのはどんな技術を持った誰なのか」についてはまだ認識が進んでいないようだ。

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