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「おへそ」で測る体温から考える 健康な働き方の工夫

Picot おへそへの着装イメージ

Picot おへそへの着装イメージ

 体温測定は体調の変化にいち早く気づくことができる身近な手段だ。新型コロナウイルスも、発熱からその感染に気づくことが多い。また近年、夏になると熱中症予防が呼びかけられるが、作業中の人の体温を連続して測定することでその予兆を知ることができる。

 体温測定は通常、舌下(口腔)や腋下(わき)を測るが、より正確な体温を知るには身体の内部の温度、「深部体温」の測定が望ましい。深部体温の計測は、主に直腸や鼓膜で行われているが、計測時の侵襲性(外部からの刺激が影響を及ぼすこと)や違和感といった課題があった。このように日常生活をおくる人の正確な体温を連続して測定し、モニタリングすることは意外と困難なこととなっている。

Picotは直径約4cm。1時間の充電で30時間の連続計測が可能な仕様だ
Picotは直径約4cm。1時間の充電で30時間の連続計測が可能な仕様だ

 株式会社HERBIO(東京都渋谷区 以下、HERBIO)は、臍部周辺つまり「へその周り」で深部体温を計測するウェアラブルセンサー「Picot(ピコット)」の開発と研究を進めている。臍部の体温と直腸体温の相関性に関しては、同社のこれまでの研究から相関性があることが判明している。測定にあたってはセンサー機器をアレルギーが起こりにくいタイプの装着シールを使用して、へそに装着するだけなので、比較的違和感なく安定的に深部体温の観測をすることができる。これによって今まで計測が困難であった、日中の活動時や就業中における連続的な体温計測ができるようになった。その実用例として昨年の10月に同社が電線大手のフジクラとともに行った実証実験では、連続して深部体温を測ることの有用性が実証された。

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 実証実験ではフジクラ佐倉事業所に勤務する成人男性10名が、Picotをへそに装着(直接貼り付けての装着し、腹巻型のアタッチメントとのセットで固定)した状態で10日間、日勤・夜勤のシフト勤務を含む通常業務に従事する間、体温を計測してもらうことで実施された。

 その結果、Picotで得られた数値から、勤務中の臍部周辺温度は連続的に変動していることがわかった。さらに勤務中の臍部周辺温度は、「日内変動」の影響を受けており、同じ作業でも働く時間帯によっては体温の推移が異なるという結果が判明した。「日内変動」とは、脳にある体内時計によってコントロールされ、体温・心拍数・血圧等の値や、覚醒・睡眠のリズムが1 日の中で変動すること。通常、体温は朝方が最低となり、夕方が最高となる。

 Picotのデータを見ると、日勤では臍部周辺温度は勤務が終了する18時頃にかけて上昇傾向にあるのに対し、夜勤では同じ業務内容であるにも関わらず、勤務が終了する早朝6時頃にかけて臍部周辺温度は、日内変動に従って低下する傾向にあった。この結果から、業務内容が日夜同様の場合でも、働き方や休憩の取り方などには日夜異なった工夫が必要なことがわかった。

日勤・夜勤中の体温変化 ℃
日勤・夜勤中の体温変化 ℃

 このように体温から、人の健康状況を知ることに加えて、今後はさらにフジクラ製環境センサシステムとPicotなどを連携することにより、WBGT(暑さ指数)などの環境データと生体データから、熱中症のリスクを検知することも期待されており、今後もさらに実証実験を重ねていく予定だという。

 手首や胸部だけでなく、生体データの情報収集・発信ポイントとして今後は「おへそ」周辺にも注目だ。

※株式会社HERBIOはデジタルガレージが運営するアクセラレータプログラムOnlab BioHealthの採択企業です。

編集部 Written by
現在、世界各地で起こっているイノベーションを発信し、現場の声をお届けします。