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遺伝子でたどる新型コロナの起源 最初の症例・感染例はどの国から

伊ミラノの鉄道駅に到着した通勤客(2020年5月4日撮影)。(c)Miguel MEDINA / AFP

伊ミラノの鉄道駅に到着した通勤客(2020年5月4日撮影)。(c)Miguel MEDINA / AFP

【AFP=時事】中国が新型コロナウイルスの最初の症例を報告したのは2019年12月だ。だが、その時点ですでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は静かに広まっていたのだろうか。この問題を解明するために、科学者らはウイルス自体の進化の跡をたどることで「患者第1号」を見つけようとしている。

 この調査は新型コロナウイルスの系統樹をさかのぼって調べるもので、最初の感染症例が公式に記録される以前に、別の国でウイルスが拡散していたかどうかを明らかにする助けになる可能性もある。

 フランスでは、2020年1月下旬にクラスター(感染者の集団)が発見された。だが、抗菌薬の専門誌IJAAで発表された最新研究では、新型コロナウイルスがその1か月前にはすでに同国内に存在していたことが示唆されている。

 仏パリにあるアビセンヌ病院(Avicenne Hospital)とジャン・ベルディエ病院(Jean-Verdier Hospital)でインフルエンザに似た症状で集中治療を受けた患者14人から採取した検体のレトロスペクティブ(後ろ向き)分析を行った結果、患者の1人が新型コロナウイルス陽性であることが明らかになった。この患者は仏国内に住む42歳の男性で、中国への渡航歴はなかった。男性が入院したのは12月27日だった。

 アビセンヌ病院感染症部門を統括するオリビエ・ブショー(Olivier Bouchaud)氏によると、新型コロナウイルスは初め「静かに、誰からもその存在を気付かれることなく」拡散するという。

 そのため、より以前の感染の証拠が見つかりさえすれば、多くの科学者が推測していたことが裏付けられるだろうと、ブショー氏はAFPの取材に語った。

 その他の国々でも、より以前に感染が国内で発生していた可能性があることが明らかになりつつある。米国では、カリフォルニア州で感染の疑いがある複数の死者に病理解剖を実施した結果、最初の公式症例の1月21日より前に感染者がいたことが判明した。

 だが、仏モンペリエ大学(University of Montpellier)の国立科学研究センター(CNRS)のサミュエル・アリゾン(Samuel Alizon)氏は、孤立した症例と「流行の波」の発生源とを区別することが重要だと注意を促した。

■中国起源説

 中国では、武漢(Wuhan)市保健当局が2019年12月8日に最初の症例が確認されたと報告している。

 1月に英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された研究論文によると、武漢市内で確認されたこの最初の患者が発症したのは12月1日だという。

 この時系列は、ウイルスの遺伝子進化の道筋をたどる調査によってほぼ裏付けられている。

 これまでのところ、新型コロナウイルスのサンプル1万5000個以上のゲノム(全遺伝情報)が解析されている。ウイルスの増殖に伴って複数の遺伝子変異が生じるが、ウイルスの毒性を変化させる変異はまだ見つかっていない。

 アリゾン氏によると、遺伝子配列に残る変異は1か月に約2回の頻度で発生するため、研究者らはこの跡をたどることができるという。

「二つのウイルスを比較すれば、何個の変異で隔てられているかを数えることができる」と、アリゾン氏は説明した。このつながりをたどれば「すべての感染ウイルスに共通する祖先」が見つかる。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)のアンドルー・ランバウト(Andrew Rambaut)氏は一般公開されたゲノム配列データを利用し、「多様性の欠如は、この種のウイルスすべてが比較的最近に出現した共通祖先を持つことを示している」ことを明らかにした。

 この祖先は2019年11月17日頃(誤差範囲は8月27日~12月29日)に出現した可能性があると、ランバウト氏は推定している。

 また、新型コロナウイルスの系統樹をさかのぼる調査を世界保健機関(WHO)と共同で実施した英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)は、共通祖先が12月5日(誤差範囲は11月6日~12月13日)に中国で出現したと推測している。

 インペリアル・カレッジの疫学者エリック・ボルツ(Erik Volz)氏によれば、12月と1月に武漢で収集された新型コロナウイルスの最初期の遺伝子配列はすべて「ほぼ同一の遺伝情報を持っている」という。

「現在世界各地に広まっているウイルスは皆、これら武漢の近縁系統から枝分かれしている」と、ボルツ氏はAFPの取材に語った。

 だが専門家らは、流行病が単一の時点から始まるのではなく「複数の発生点から複数回にわたって」播種されると考えていると、ボルツ氏は続けた。

 これら「播種」の発生日を推定した結果は、欧州と北米の多くの都市における流行が1月半ばから2月初めにかけて始まったことを示唆していると、ボルツ氏は指摘した。

 イタリアの研究では、新型コロナウイルスが同国北部ロンバルディア(Lombardy)州に到達したのは1月の後半から2月初めの間だったことが示唆されている。最初の感染が確認されたのはその数週間後の2月20日だった。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件