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前CEO逮捕、独ワイヤーカード不正会計疑惑【解説】

独ワイヤーカードのマーカス・ブラウン前最高経営責任者(CEO、2018年9月18日撮影)。(c)Christof STACHE / AFP

独ワイヤーカードのマーカス・ブラウン前最高経営責任者(CEO、2018年9月18日撮影)。(c)Christof STACHE / AFP

【AFP=時事】ドイツ検察当局は23日、不正会計疑惑が浮上しているオンライン決済サービスの独ワイヤーカード(Wirecard)のマークス・ブラウン(Markus Braun)前最高経営責任者(CEO)を市場操作の疑いで逮捕したと発表した。

 同社ではバランスシートの4分の1に相当する19億ユーロ(約2280億円)が所在不明になっていたが、同社は22日、現金は「存在していなかった」可能性があると認めた。ワイヤーカードは2019年、ソフトバンクグループ(SoftBank Group)から9億ユーロ(約1000億円)の出資を受けている。

 2000年代初めに起こった米エネルギー会社エンロン(Enron)の不正会計事件に匹敵する可能性があるといわれるワイヤーカードの不正会計疑惑についてまとめた。

■ワイヤーカードの主な事業

 ワイヤーカードは店舗やオンライン、携帯電話で、クレジットカードや米アップル(Apple)のアップルペイ(Apple Pay)、米電子決算大手のペイパル(PayPal)などでの支払いを導入できるオンライン決済サービスを主力事業としている。また、オンライン決済サービスから得たデータに基づく分析サービスも提供している。

 同社によると顧客は全世界で約30万社に上り、中国のモバイル決済システム「アリペイ(Alipay)」や「微信(WeChat、ウィーチャット)」、アップルやグーグル(Google)など大手と取引をしている。  またウェブサイトでは、KLMオランダ航空(KLM Royal Dutch Airlines)やドイツテレコム(Deutsche Telekom)、米運輸大手フェデックス(FedEx)も顧客だとしている。

■設立は1999年

 ワイヤーカードは1999年に設立。当初はポルノや賭博サイトへサービスを提供していた。

 そこから安定した収入を得られたため、2000年初めに起こったインターネットバブルを生き抜くことができ、2000年代から2010年代に電子商取引が増加するにつれ、事業も拡大していった。

 創業者であるオーストリア人のブラウン氏は設立当初に出資比率を7%に引き上げ、筆頭株主となっている。

 2005年にはドイツ・フランクフルト証券取引所に上場、2018年にドイツ株価指数(DAX)の主要構成銘柄となった。

 2019年初めにはワイヤーカードの市場価値は約170億ユーロ(約2兆円)に達したが、今回の不正疑惑を受け20億ユーロ(約2400億円)にまで急落した。

■不正会計疑惑

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は2019年1月以降、特にワイヤーカードのアジア部門で不正会計があると複数回報じていたが、経営陣らはこれを否定していた。

 ワイヤーカードは決済サービスプロバイダー(PSP)として2008年以降、不正決済防止に関する複数の欧州指令の対象となっているが、同社の会計はそれほど精査されてはいなかった。

■経営陣

 ワイヤーカードは19日、ブラウン氏のCEO辞任を発表。コンプライアンス責任者である米国人ジェームズ・フライス(James Freis)氏が18日、暫定CEOに就任した。フライス氏は、ドイツ取引所(Deutsche Boerse)のコンプライアンス責任者を務めていた。

 一方、ヤン・マルサレク(Jan Marsalek)最高執行責任者(COO)は、一時停職となった数日後の22日に解雇された。

 5人で構成される同社の監査役会は、元ビジネスコンサルタントで金融業界に転向し、ドイツ取引所での勤務経験もあるトマス・アイヒェルマン(Thomas Eichelmann)氏が率いている。

■消えた現金の背後にいるのは誰か

 19億ユーロは、フィリピンの2銀行の信託口座に預けられていたとされていた。フィリピン中央銀行は21日、不明金は同国の金融システムに流れ込んではいないと明らかにした。

 ドイツのニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)は、消えた現金の管理責任者として、フィリピンで弁護士として働くマーク・トレンティーノ(Mark Tolentino)氏の名前を挙げている。フィリピンの金融街マカティ(Makati City)在住のトレンティーノ氏のウェブサイトは22日にはなくなっていた。一般人からの法律相談に答えるフェイスブック(Facebook)ページの動画は残ったままだ。

 一方、不明となっている現金が預金されていたとされる同国大手銀バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)は、従業員が「予防的停職中」であるとAFPに認めた。メディアは、BPIのアシスタントマネジャーが預金されているはずの現金に関する偽造文書に署名していたと報じている。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件