Open Innovation Platform
FOLLOW US

新型ウイルス、室内拡散に対抗する最新工学技術

スペイン北部のブルゴス近郊で、紫外線C波(UVC)で部屋を消毒するロボット(2020年5月12日撮影、資料写真)。(c)CESAR MANSO / AFP

スペイン北部のブルゴス近郊で、紫外線C波(UVC)で部屋を消毒するロボット(2020年5月12日撮影、資料写真)。(c)CESAR MANSO / AFP

【AFP=時事】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の驚異を世界からなくすために必要なワクチンや治療薬の開発を待つ間、ウイルスの拡散を遅らせるためのスローガンとなっているのが、マスク着用、手指消毒、それから物理的距離の確保だ。

 だが、通勤・通学が再開され、大勢の人が公共交通を利用し始めた状況でも、この3つの対策だけで十分なのだろうか。

 研究者らはここへ来て、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を工学技術というレンズを通して捉え、屋内環境の安全性を高める方法を考案している。

■加熱式ニッケル空気フィルター

 新型コロナウイルスが空気中を浮遊し、ガイドラインが推奨する対人間隔である2メートルよりもはるかに遠くまで拡散する可能性をめぐって、科学者らの間ではいっそう懸念が高まっている。

 空気中を漂う「マイクロ飛沫(ひまつ)」は、合唱の練習など一定の超拡散(スーパー・スプレッディング)現象によって生じるとみられている。

 1950年代に初めて市販された「高性能微粒子空気(HEPA)フィルター」は、病院や生物学的封じ込め措置を施した研究機関、航空機などで広く使用されている。送風機で空気を引き込み、フェルト状のフィルターを通して、最小レベルの微生物を捕獲する。

 だが、HEPAフィルターは時間の経過とともに汚染されるため、最終的には焼却処分か、加圧滅菌器による処理が必要だ。

 米ヒューストン大学(University of Houston)テキサス超電導センター(Texas Center for Superconductivity)と米ガルベストン国立研究所(Galveston National Laboratory)のチームは最近の研究で、ニッケルでできた超微細発泡体を用いた最新式フィルターの有効性を実証した。

 ニッケル発泡体を200度まで加熱することで、空気中に浮遊するSARS-CoV-2を最初のフィルター通過時に、室内から99.8%除去することに成功した。発泡体は断熱されており、室内温度を上昇させることはない。

 同チームは7月、研究成果を学術誌「Materials Today Physics」で発表した。後援企業の「メディスター(Medistar)」は、すでにこのシステムを販売するための承認を規制当局から得ている。

 メディスターによると、既存の空調設備にこのシステムを組み込んだり、移動式の空気清浄室で中を歩けるようにしたりすることも可能だという。

■最新の紫外線(UV)技術

 紫外線のうち、紫外線C波(UVC)を照射するUVCランプは、以前から殺菌やウイルス除去、カビ対策といった目的で病院や食品加工業を中心に利用されている。

 だが、地表に到達する通常の太陽光には含まれていないこのUVCは、皮膚がんや眼疾患などを引き起こすため、直接的な暴露には危険を伴う。つまり、人のいないときにしか使用できない。

 米コロンビア大学(Columbia University)の研究者らはここ数年、最新型のUVCランプの開発に取り組んでいる。同大のランプの「遠紫外線C波」の波長は比較的短い222ナノメートルで、微生物にとっては致命的だが、人間には無害だ。

 物理学者のデービッド・ブレナー(David Brenner)氏率いる研究チームは6月、自分たちが開発したUVC技術によって、空気中の飛沫内に存在する季節性コロナウイルスの99.9%を消滅させることができるとする論文を、英科学誌ネイチャー(Nature)系のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表した。

 一方、日本のウシオ電機(Ushio)がすでに米国で遠紫外線C波ランプの販売を開始しているが、同社ウェブサイトによると、人がいるスペースで使用できる準備が整う時期がいつになるかは、現在進行中の安全性研究にかかっているという。

(※DG Lab Haus編集部追記:8月26日にウシオ電機は「有人環境下で使用できる」紫外線除菌・ウイルス抑制装置を東芝ライテックと共同開発することなどを公表している。詳しくは同社リリース参照

■抗ウイルス性被膜

 接触感染も新型ウイルスの潜在的リスクの一つだ。頻繁な手洗いや物体表面の消毒といった指示が出されているのはそのためだ。

 持続効果のある抗微生物性コーティング剤も、消毒剤を補うものとして利用できるが、10年前に登場したこの技術はこれまでのところ主に病院での使用に限定されている。

 米アリゾナ大学(University of Arizona)の研究者らは最近、SARS-CoV-2に対する新たな防御手段の一つとして被膜処理を広く利用することを提案した。

 米企業アライドバイオサイエンス(Allied BioScience)が開発した、第4級アンモニウムポリマーでできた抗ウイルス性コーティング剤は、SARS-CoV-2の近縁のコロナウイルスを物体表面上で10分間に90%減らせることが明らかになっている。

 この抗ウイルス性コーティング剤は、コロナウイルスのタンパク質を「変性させ」(実質的に形態を崩し)、ウイルスを保護している脂質層を破壊することで作用する。コーティング剤は無色で、物体表面に吹き付けて使用する。3~4か月ごとに塗布し直す必要がある。

 ただし米疾病対策センター(CDC)は最近、物体表面を介した感染については、これまで一部で考えられていたような新型コロナウイルスの主要な拡散経路ではない可能性が高いとする見解を表明した。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件