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コロナ禍の災い転じて起業 ワーケーションのスタートアップに聞く課題と展望

オンライインタビュー中の株式会社リゾートワークス代表取締役CEO 高木紀和氏

オンライインタビュー中の株式会社リゾートワークス代表取締役CEO 高木紀和氏

 コロナ禍で、在宅勤務がこれまでより身近になった。4月の緊急事態宣言時には、多くの企業で在宅勤務が認められそれ以降、仕事は自宅での勤務が当たり前という人も増えた。さらに一歩進めて、自宅ではなく、観光地やリゾート地で仕事をするというワークスタイルも出現した。「ワーク」(仕事)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語で「ワーケーション」と呼ばれるこのスタイルは、仕事と休暇を両立させるスタイルとして注目されている。

 このワーケーションに注目し、ビジネスとして立ち上げたスタートアップがある。今年9月に会社を立ち上げた株式会社リゾートワークスだ。いち早くワーケーション領域でのビジネスを手がける同社の代表取締役CEO 高木紀和氏に、その可能性や課題について話を聞いた。

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 少し前の話になるが「ノマドワーカー」をいうワークスタイルが現れた。出社を求められないフリーのライターやエンジニアが主な実践者で、パソコン、スマホを携え、通信環境がそろった場所を移動しながら仕事をするというスタイルだ。高木氏も以前から仕事を兼ねて沖縄などに数日滞在するといったことを実践してきたが、「これが『ワーケーション』っていうんだというのだとは最近知った」とのこと。また、自らが立ち上げたスタートアップにおいても、社員の半分はリモートワークで、こうした環境がすでに身近にあったことから、ワーケーションへの理解とその可能性をいち早く感じとることができた。

イメージ・夏の海で仕事の合間にひと泳ぎ(撮影地:伊豆今井浜 )
イメージ・夏の海で仕事の合間にひと泳ぎ(撮影地:伊豆・今井浜 )

「リモートワークは便利ですけど、自宅だと閉塞感とか、仕事関係の設備が整っていないなどの理由があって、ストレスが溜まることがあり、良い面もあれば悪い面もあるなというのが正直感じたところですね。それで、どうせテレワークをするのだったら、自分がパフォーマンスを発揮しやすい場所、自分の心地いい場所で働くっていう働き方が今後のワークスタイルとして一般的になるんじゃないかと。自分たちも実践しているし、それをサービスとして広めていきたいって気持ちが会社設立への流れですね」(高木氏)

 同社のサービスは会員制で、東急グループやコスモイニシアが運営するリゾートホテルなどをワーケーションの場として利用することができる(現在は、会員制サービスの正式リリースに先立ち、先行利用モニターの募集中)。こうした宿泊施設は、ここ数年インバウンド客で賑わってきた。土日に集中する日本人客の合間を埋めてくれる海外からの観光客は、平日の稼働率を上げてきた。しかしこの春以来、海外からの来客が望めなくなり、平日の稼働率の向上が再び課題となった。その課題を解決するのがワーケーションだ。

「ワーケーションは、仕事なので(平日利用で)そこはちょうどガチッとあうんですよ」(高木氏)

 インバウンド客は、いずれ回復するかもしれない。しかし、今回のようなリスクは今後も存在する。インバウンド一本に頼るのではなく、ワーケーションの顧客とのバランスを取りながら運営していくことが賢明だとホテル側も考えるだろう。つまり、この先もワーケーション客への期待は続く。

 ということで、宿泊施設側のニーズには合致しているのだが、事業をはじめてみると思わぬ課題を見つけた。高木氏によると「宿泊などのサービス業の方々って、そもそもワーケーション向きの職種じゃないので、『ワーケーションって本当にあるんだっけ』という感じなんです」とのこと。つまり、受け入れ側の施設や自治体で働く人は、リモートワークを体験したことがなくリアリティがない。そのため、ハード・ソフトともに、リモートワーカー受け入れに向けて何を準備したらよいのか想像がつかない。そこを手助けするのが同社の最初の仕事となっているとのことだ。

 また、利用する側にも課題がある。これはワーケーションに限らず、リモートワーク全般に言えることだが、上司の目の届く場で働き、その働きの“量”で評価が決まる職場では、会社から離れて勤務をするのは難しい。高木氏もこの点は課題だと感じており、こうした慣行が色濃く存在する大企業での利用にはまだ時間がかかると見ている。一方で、スタートアップやIT系の企業では成果主義がある程度浸透し、リモートワークにも理解が広がりつつあるので、ワーケーションの現時点での利用者はこうした企業に所属する人たちからだと考えている。

イメージ・南の島でワーケーション(撮影地:沖縄・竹富島)
イメージ・南の島でワーケーション(撮影地:沖縄・竹富島)

 まだ黎明期にあるワーケーションビジネス。同社では現在、ワーケーションの可能性を見極めるため、また世間に浸透させるため、さまざまなプログラムに参加、活用している。同社の起業の設立を支援してくれたデジタルガレージのスタートアップ支援プログラム「Open Network Lab Resi-Tech 2nd Batch」においては、実証実験として東急グループなどが進める伊豆を中心とした観光型MaaS「Izuko」と連携を行い、ワーケーション利用者の足回りを確保の試みを行う。また、12月には琉球銀行など沖縄の主要8社が主催する「オキナワ・スタートアップ・プログラム」のにも採択されている。高木氏によると、沖縄はワーケーションの場としてのポテンシャルが高いと感じているという。

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 新型コロナウイルスのために、ビジネスプランの変更を余儀なくされたスタートアップは多い。高木氏もそのひとりで、自身が立ち上げ、順調に成長してきた花嫁限定コミュニティ「maricuru」を提供するスタートアップの事業がコロナ禍によって、一時頓挫することになった。

 しかし、そんな状況下でもリモートワークが進む様子を見て、そこに新たなビジネスの可能性を見出し、素早く事業化する行動力は頼もしいかぎりだ。常に成長の過程にあることを求められるスタートアップには、災い遭ってもへこんだり、立ち止まっている余裕はなく、それをチャンスに変えていく必要があるのだ。

※株式会社リゾートワークスは、株式会社デジタルガレージが運営する、不動産関連スタートアップ育成プログラム「Open Network Lab Resi-Tech」の実証事業実験の参加企業です。

北元 均(KITAMOTO,Hitoshi) Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。