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中国で高まるバーチャルアイドル熱 「世界初」のスター発掘番組も

中国・北京の北京蜜枝科技が制作したバーチャルアイドルの留歌(2020年11月12日撮影)。(c)GREG BAKER / AFP

中国・北京の北京蜜枝科技が制作したバーチャルアイドルの留歌(2020年11月12日撮影)。(c)GREG BAKER / AFP

【AFP=時事】中国人のリウ・ジュン(Liu Jun)さん(28)は、以前から「留歌(Amy)」という名の10代の赤毛のアイドル歌手のファンで、もらったサインを宝物にしている。だが、留歌はバーチャルアイドル。デジタルの世界の中にしか存在しない。

 留歌のコンサートやファンのイベントにこの数年間で10回以上参加してきたリウさんは、バーチャルアイドルの大きな特徴は現実の人間だったらどういう風か分からないことだと言う。「だからこそ、なおさら想像が膨らむ」と語る。

「バーチャルアイドルは不滅だ。イメージさえあれば、心の中で永遠に存在し続ける」

 留歌は、バーチャルアイドルのスター発掘番組「跨次元新星(Dimension Nova)」で有名になった。バーチャルアイドルが、実在する有名人3人の審査員の前でダンスや歌を披露する番組で、こういった企画は世界初だという。

 ファンイベントの一つでは、ファンは高さ2メートルのスクリーン越しに留歌と会話し、リウさんはスクリーンにつながれたプリンターで留歌の「サイン」をもらった。

 バーチャルアイドルのコンセプトの起源は日本だが、こうしたデジタルのアバターが今や中国のメディアの配信にじわじわ浸透し、テレビ番組や広告掲示板、ニュース番組にまで登場している。ファン層も拡大しつつあり、中国の動画配信大手、愛奇芸(iQIYI、アイチーイー)の調査によると、ファンは全国で推定3億9000万人に上る。

 番組に出演するバーチャルスターは、コンピューターアニメーションと生身の俳優を組み合わせてつくられる。留歌の衣装、ヘアスタイル、容姿はアニメーターが創作し、留歌役の俳優がそれ以外をすべて引き受ける。

 リアルタイムのモーションキャプチャーとレンダリング技術で、俳優の動きがスクリーン上のアイドルに反映される。留歌役の俳優はパフォーマンスに備え、ダンスの特訓を受けなければならない。

 だが制作者らは、アイドルの背後にいる俳優の存在について一切語らないようにしている。

■「バーチャルアイドルには魂がある」

 留歌を生み出した北京蜜枝科技(Beijing Mizhi Tech)の最高経営責任者(CEO)、劉勇(Liu Yong)氏はAFPに、「私たちの考えでは、どのバーチャルアイドルにも本物の魂があるのだ」と語る。「彼らには独自の性格や個性、嗜好(しこう)がある。こちらの世界にリアルに存在しているのだ」

 北京を拠点とする市場調査会社Newsijieによると、留歌を含むバーチャルアイドル業界は、今後2年間で15億元(約240億円)規模に成長することが見込まれている。動画サイト「ビリビリ(bilibili)」によると、バーチャルアイドルのライブ配信チャンネルの視聴時間は、昨年1〜10月で200%増となった。

 一方、バーチャルアイドル業界で参入企業が乱立すると、質の低下を招くのではないかと懸念する専門家もいる。

 中国で最も成功したバーチャルアイドルの一人を制作した上海禾念信息科技(Shanghai Henian Information Technology)のカオ・プ(Cao Pu)氏は、「本気で(業界に)参入したければ、資金と技術、根気が必要だ」と指摘する。  バーチャルアイドルを生かすも殺すも技術力次第だ。そのため、技術的なトラブルから致命的なミスにつながりやすい。

 あるときは、ステージに留歌の帽子しか映っていないことがあった。他にも、技術的なトラブルでバーチャルアイドルの映像が崩れ、審査員にカンフーを教えようとしたバーチャルアイドルがフリーズした例もある。

 視聴者の一人はソーシャルメディアで、「見ているのがいたたまれないレベル」と酷評した。

 だが、番組制作者らはこうした批判を跳ね返している。 「私たちの番組に最初から付いてきてくれた多くの視聴者なら、技術が大幅に改良されたことが分かるだろう」とプロデューサーのリウ・ジアチャオ(Liu Jiachao)氏は言う。「新しいものには論争が付き物だ」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件