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歴史ある家々を守るデジタル記録と市民の誇り シリア首都

シリア首都ダマスカス旧市街にある歴史的建造物の中庭(2020年11月18日撮影)。(c)LOUAI BESHARA : AFP

シリア首都ダマスカス旧市街にある歴史的建造物の中庭(2020年11月18日撮影)。(c)LOUAI BESHARA : AFP

【AFP=時事】シリア人のラニア・カタフ(Rania Kataf)氏(35)は、内戦で荒廃した祖国の首都ダマスカスの旧市街の路地を散策しながら、伝統的な住宅を隅々まで写真に収めている。こうした家々が危機的状況に陥っている様子を目の当たりにし、建築物を後世に残すために電子情報としてアーカイブ化する取り組みを始めたのだ。

「第2次世界大戦(World War II)中に欧州の写真家たちが都市の建造物を記録して、その一部を後に再建につなげたことに着想を得た」と話す。

 ダマスカス旧市街は、100年余りの歴史を持つ優美な家々で知られる。大抵の場合、2階建ての建物が四角い中庭を囲み、緑が茂る庭の中心には石を彫り込んで造った噴水がある。

 ダマスカスの大部分は、10年近く続く内戦による破壊を免れたが、こうした伝統的な家屋のいくつかは所有者に放置されたままになっているか、戦闘による被害を受けている。

 カタフ氏が2016年にフェイスブック(Facebook)上に作成したグループ「ダマスカスの人々(Humans of Damascus)」には、2万2000人を超えるシリア人が写真を投稿している。

「何かを記録するのに専門家である必要はない」とカタフ氏は言う。  国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は2013年、ダマスカス旧市街やアレッポ(Aleppo)、古代都市パルミラ(Palmyra)など、シリアの世界遺産(World Heritage)全6か所を「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産、World Heritage in Danger)」に登録することを決定した。

 レバノンの首都ベイルートで栄養学を学んだカタフ氏は、シリアの他の地域で見事な建造物が内戦によって損壊または破壊されるのを目にして居ても立ってもいられなくなったと話す。

「ダマスカス旧市街でも同じことが起こるのではないかと恐ろしくなった。それで、できるだけたくさんの(建物の)詳細を記録し始めた」とカタフ氏は話した。

■「博物館に住んでいるよう」

 ダマスカス旧市街在住の実業家サミール・ガドバン(Sameer Ghadban)氏(50)は、19世紀の著名なアルジェリア人、エミール・アブデルカデル(Emir Abdelkader)がかつて住んでいた家に今も住んでいることを誇りにしている。アブデルカデルは、アルジェリアに対するフランスの植民地支配に抵抗してシリアに亡命し、この地で生涯を閉じた。1860年にダマスカスで宗教間の対立から暴動が起こった際には、数千人のキリスト教徒を救ったとされている。

「夫婦でこの家に住むようになって12年になる。エミール・アブデルカデルがまさに住んでいた場所に」とガドバン氏。前の住人たちに敬意を表すため、維持費がどれほど高くても、この建物の個性を細部に至るまでそのまま保とうとしていると話した。

 夏用の小さな居間は、二つある中庭の一つに面しており、部屋の壁一面にはイスラム教の聖典コーラン(Koran)の節の繊細な彫刻が施され、木製の天井は彩色されている。

「博物館に住んでいるようだ」とガドバン氏は言う。「ここに住んだら、普通の住居には絶対に住めない」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件