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ショップ・モビリティで地方に「にぎわいの場」を~Mellowとakippaが提携

街ににぎわいをもたらすショップ・モビリティ(Mellow提供)

街ににぎわいをもたらすショップ・モビリティ(Mellow提供)

 「ショップ・モビリティ」とは次世代移動型店舗のことだ。ビルの谷間やイベント会場にズラッと並ぶキッチンカーや、最近では飲食に限らず物販やサービスなどバラエティに富んだ業種の移動型店舗が登場している。そんな移動型店舗の配車やマネジメントを運用管理する「モビリティビジネス・プラットフォーム」を展開するのが株式会社Mellow(本社・東京都千代田区)だ。

 1月に、Mellowと駐車場シェアリングの最大手akippa(アキッパ)との提携が発表された。akippaは、以前本媒体の記事でも紹介したように、空き駐車場のマッチングサービス「akippa」を展開している。現在累計約42,000カ所の akippa駐車場と約210万人の登録会員を抱える。

 空いたスペースを確保し、活用する事業を展開する両社は競合関係にあるはず。それがなぜ提携をするに至ったのか。Mellow共同代表森口拓也氏とakippa事業企画室 フェロー田中大貴氏にお話を伺った。

ショップ・モビリティに興味を示す事業者が増加

Mellow共同代表森口拓也氏(Mellow提供)

 Mellowは大手デベロッパーなどと組み、「SHOP STOP」ブランドのショップ・モビリティ事業を展開している。森口氏によると、同社のビジネスは単に移動型店舗を集め、並べるだけのものではなく、「『場所』の特性やブランドなどを考え抜き、その価値を拡張するもの」だと話す。つまり「場所」をプロデュースし、その「場所」でのビジネスの成果からレベニューシェアを受けるものだ。

 コロナ禍により、人の流れや商業施設のありようも変化している。そんな中、ショップ・モビリティの機動性に興味を持ち、参入を検討する企業からの相談が増えているという。森口氏はその例として豊洲市場の仲卸による鮮魚の移動販売を挙げた。

豊洲市場仲卸によるお魚販売モビリティ(Mellow提供)

 2020年の法改正により、市場仲卸業者の消費者への直接販売が解禁となった。しかし仲卸は魚のプロであっても、移動販売はまったく未経験の分野だ。そこで、Mellowとタッグを組み、「現代版行商トラック」といえる「お魚販売モビリティ」のトライアル営業を始めた。さらに、仲卸の知識と技術が詰まった旬のお魚料理を、出来たてで提供する「仲卸フードトラック 豊洲市場kitchen」も展開。実際にタワーマンション敷地等に出向いて営業し好評を得たという。

 コロナ禍で、巣ごもりを余儀なくされ、外出や買い物の楽しみを奪われた消費者にとって、プロが目利きした新鮮な魚介類や、それらを使った料理を提供してくれるショップ・モビリティが自宅近くにやってくるのは、楽しいできごとだったに違いない。

 このように都心では順調にショップ・モビリティ事業の展開を勧めてきたMellowだが、他の地域へこのコンセプトを展開していくためには、地方の都市ごとに空きスペースを確保、管理しなければといった課題に直面した

両社の出会いは「地方創生」へと向かう

akippa 事業企画室 フェロー 田中大貴氏(akippa提供)

 一方akippaも2020年12月、コロナ禍で稼働の落ちた駐車場の新たな活用方法として、駐車場オーナーに許諾を取った上で弁当や物販販売を行う「akippaマルシェ」の実証実験を行った。オーナーにも、利用者にも好評を得たが、空きスペースでの飲食や物販のビジネス展開にはまた別のノウハウが必要だと感じたと田中氏は話す。そこで両社の得意分野を活かす構想が浮上。全国各地で空きスペースをakippa駐車場として管理運用するakippaと、ショップ・モビリティのプロデュースを得意とし、その運用ノウハウを持つMellowとの提携が成立した。

 お互いの強みを生かす提携であることは理解できたが、提携の先に見えるものは何かと伺うと、森口氏と田中氏は揃って「地方創生への貢献」という言葉を口にした。買い物難民をサポートするような事業かと聞くと、森口氏はそれに限らないと話した。「例えば週末だけの百貨店なんてどうですか?」ちょっと意外な提案だが、そのプランはこうだ。

「移動型店舗でのエッセンシャル(食品や生活必需品)の販売、それはもちろん大切なことですが、それにとどまらず、もっと地域ににぎわいを興したい。例えば『週末だけやってくる百貨店』を地方の交通不便なところに展開するといいと思いませんか? そんなことがakippaさんとの提携で可能になります」

 一昔ほどではないが、有名百貨店のブランドには、消費者をワクワクさせる力は未だ健在だ。とは言え、駅前や盛り場の一等地に店舗を構え、年中営業するようなビジネスとしては成り立たない時代だ。ショップ・モビリティによって、有名百貨店ブランドを背負った、『次世代移動型百貨店』が土日にやってくるとなれば遠方まで出かける必要もなく、地域の住民にとって、かなり魅力的なイベントになるだろう。ECサイトが発達した今も、やはり家族や友達と連れだって出かける買い物の「場」の価値は高い。地方創生への貢献に対して、akippaの田中氏も共感を示す。

「akippaの企業ビジョンは『あなたの“あいたい”をつなぐ』ですから、我々のビジョンとも合致します」

 Mellowとの提携により、全国のakippa駐車場で人が出会い、つながるような場が生まれることは、akippaにとっても望むところだという。そうして全国の地域に、にぎわいを取り戻せたらとも話した。

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