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福井県永平寺町 国内初の自動運転レベル3運行中

2019年度の永平寺町での自動運転実証評価の様子(産総研Youtebe動画よりキャプチャ)

2019年度の永平寺町での自動運転実証評価の様子(産総研Youtebe動画よりキャプチャ)

 自動運転の「レベル2」と「レベル3」の間には大きな違いがある。レベル2では車両を操る主体はドライバー(人間)だが、レベル3からは自動運行装置(機械)が主体となる。3月25日、レベル3の認可を受けた車両が、福井県永平寺町で国内初の運行を開始した。

永平寺町を走る自動運転レベル3の無人カート(提供 産総研)
永平寺町を走る自動運転レベル3の無人カート(提供 産総研)

 これは国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」)が中心になって推進してきたプロジェクトで、2016年に参加団体を公募し、福井県吉田郡永平寺町をそのひとつの地域として選定。2017年度から、ヤマハ発動機株式会社、株式会社日立製作所、慶應義塾大学SFC研究所、豊田通商株式会社、永平寺町役場、まちづくり株式会社ZENコネクトなどと連携し無人自動運転移動サービスの社会実装に向けて研究・実証を進めてきた。

 永平寺町での取り組みについて産総研の情報・人間工学領域 端末交通システム研究ラボ 加藤晋研究ラボ長(ヒューマンモビリティ研究センター 首席研究員)にお話をうかがった。

ようやく実現した保安要員なしの公道走行

情報・人間工学領域 端末交通システム研究ラボ 加藤晋研究ラボ長(提供 産総研)
情報・人間工学領域 端末交通システム研究ラボ 加藤晋研究ラボ長(提供 産総研)

 永平寺町では2018年11月に「参(まい)ろーど」の一部区間において、遠隔監視室にいる遠隔ドライバー1名が、通信技術を用いて2台の自動運転車両を運用する遠隔型自動運転の実証を行っている。この実証実験では、各自動運転車両前部には保安要員1名が乗車していた。さらに、2020年12月には、遠隔ドライバー1名で3台の自動走行車両を同時に走行させる実証を行ったが、この時も後部座席に保安要員が乗車していた。

「保安要員の人件費がかかるとコスト的に見合わなくなります。何とか保安要員を外せるようにしたかった」(加藤氏)

 実験を積み重ね、センサー類の追加など高度化を図り、遠隔監視・操作型の自動運行装置(※)を備えた車両は、3月5日に国土交通省よりレベル3の認可を受けた。さらに福井県警察本部、福井警察署の走行審査を受け道路使用許可を取り、遠隔ドライバー1名は存在するものの作動継続困難な時に対応するのみ、各車両に乗車してきた保安要員はなしでの無人自動運転車両(レベル3)3台の運行が実現した。

※自動運行装置(名称:ZEN drive Pilot) 道路に敷設した電磁誘導線上を走行し、周辺の交通状況を監視するとともに、運転者に代わって運転操作を行い、最大速度12km/hで自動走行する装置。当該装置は、国土交通大臣が付与した特定条件(走行環境条件)の範囲内で作動が可能となり、作動後、走行環境条件を満たさなくなる場合や故障発生時などでは、警報を発し運行を停止。(産総研プレスリリースより)

主な自動運行装置の構成(提供 産総研)
主な自動運行装置の構成(提供 産総研)

 今回の自動運転は、自転車歩行者専用道となった鉄道廃線の跡地で運行されている。距離は約2kmで、運行経路には一般車両は入ってこない。この「閉じた区間」では道路に電磁誘導線が敷かれており、それを車両がたどることでレベル3の自動運転を可能としている。人が介在するのはスタートさせる時だけだ。

“枯れた技術”を活かすことも

 永平寺町での試みからどんなことを実証しょうとしているのか。加藤氏は、「まずはその自治体で、我々の自動運転技術が適用できるのかという観点と、自治体が抱える社会課題解決に自動運転技術が寄与できるのかどうかを見極めたい」と答えた。さらにもうひとつ、「自治体が自動運転の実証について熱量が高いかどうかという観点」もとても重要と続けた。永平寺町は河合永充町長が先頭に立ち、住民も受け入れに非常に協力的で、実証がたいへんやりやすかったと感謝の意を示した。「多くの子どもさんたちにも興味をもってもらい、こういった受け入れの素地を作っていただけた」(加藤氏)

永平寺町の自動運転モデルは今後、他の地域へも横展開されるのだろうか。加藤氏によると、実証とはいえ実際の生活の場所や路上で自動運転は実施されるので、前述のように地域の社会課題に対する意識と受け入れ意識が大きく関係してくると話す。そうでない地域では苦労もあると加藤氏は苦笑いした。

また、地域ごとの道路環境も導入方法に大きく影響する。永平寺町では、森の中の走行時に、周辺の草を障害物と検知してしまったり、GPSの感度に問題が生じたりしたという。さらに、この地域では冬には積雪が道路を覆ってしまうという問題もあった。雪道ではカメラが捉えた映像などでは、道路を上手く認識できないことがある。そこで今回は車両を電磁誘導線で導くというという“枯れた技術”を利用した。「最新技術を使えない場合もあり、その場所場所で使う技術を判断しなくてはいけません」(加藤氏) 

 継続的に運行するためにはビジネスモデルの検討も必要だ。モビリティサービスの利便性を考えると、「閉じた区間」のレベル3の運行だけでは不便だ。住宅街や一般道を走行するなら、人間が運転する方が効率的な場合もあるかもしれない。これも自治体ごとの事情や道路環境などで変わってくるのだろう。永平寺町のモデルは単純に横展開できるものではなく、自治体や地域ごとの特性をよく吟味することが必要となる。

 国内初の「レベル3」ということで永平寺町には、視察に訪れる人が増えるなど一定のにぎわいを産み出しているようである。地域住民も利便性向上に期待をかけている。システム面に加え運営体制、コストなどの面でもまだまだ課題は多いが、地方市町村の社会課題解決に資する、自動運転レベル3の公共交通機関が増えていくことを願いたい。

注:動画は2019年度の永平寺町での実証評価の様子で、今回のレベル3自動運転の動画ではありません。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。