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国際宇宙ステーションで培われる「無重力の科学」

国際宇宙ステーション(ISS)。米航空宇宙局(NASA)提供(撮影日不明、2018年11月4日入手)。(c)AFP PHOTO / NASA/ROSCOSMOS

国際宇宙ステーション(ISS)。米航空宇宙局(NASA)提供(撮影日不明、2018年11月4日入手)。(c)AFP PHOTO / NASA/ROSCOSMOS

【AFP=時事】地球の軌道を周回して20年──国際宇宙ステーション(ISS)は最先端の宇宙実験施設となった。滞在する宇宙飛行士らは、ブラックホールから病気やガーデニングに至るまでのさまざまな研究を微小重力環境で行っている。  地球の上空約400キロを周回するISSはサッカー場ほどの大きさで、ハチの巣のように区画が分割されている。各区画では、乗組員が地上の研究者らからの指導に基づき実験を行うことができる。

 ISSでは、有人ミッションが開始された2000年以降で、3000件以上の科学実験が実施されている。

■「ミニ脳」

 米国のシェーン・キンブロー(Shane Kimbrough)、メーガン・マッカーサー(Megan McArthur)両飛行士、日本の星出彰彦(Akihiko Hoshide)飛行士、欧州宇宙機関(ESA)のトマ・ペスケ(Thomas Pesquet)飛行士の4人が搭乗した米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)の宇宙船「クルードラゴン(Crew Dragon)」運用2号機は23日、ISSに向けて打ち上げられる予定だ。

 4人は6か月間にわたるミッションで、ISSの維持管理作業と並行して、約100件の実験を行う予定になっている。

 実験の中には、超音波を用いて物体や液体を触ることなく移動したり操作したりする音響技術などが含まれている。

 計画されている研究の中で、フランスのペスケ飛行士が最も楽しみにしているのは、無重力が脳のオルガノイドに及ぼす影響の調査だという。脳オルガノイドは、幹細胞技術を使って作製される「ミニ脳」だ。

 科学者らは、ゆくゆくはこの研究が脳疾患治療に役立ち、また遠距離探査ミッションを視野に入れる宇宙機関を助けることにもなると期待を寄せる。遠距離ミッションでは、乗組員が過酷な宇宙環境に長期間さらされる。

 ISSではまた、「生体組織チップ」として知られる小型の人体臓器モデルの研究が進められている。組織チップはさまざまな種類の細胞で構成され、免疫系の老化、腎臓機能、筋肉減少などの研究に利用される。

 ISS米国立研究所(ISS US National Laboratory)のシニア・プログラム・ディレクターを務めるリズ・ウォーレン(Liz Warren)氏は「理由が完全に解明されているわけではないが、細胞間コミュニケーションは、微小重力下と地球上の細胞培養瓶の中とでは機能の仕方が異なる」と指摘。細胞の集まり方も異なるという。

「こういった特徴によって細胞は、人体内にあるときにより近い挙動を示すことができる。従って、微小重力は組織工学にとって、またとない機会を提供すると考えられる」と、ウォーレン氏は話した。

■研究を進めるための唯一無二の施設

 運用費用について懸念する声が一部から上がる中、米航空宇宙局(NASA)自体は、より遠方の宇宙へと関心が移るのに伴いISSからの撤退を模索している。  だが、宇宙空間での微小重力科学実験を計画するフランスの研究施設Cadmosのセバスティアン・バルデ(Sebastien Barde)氏によれば、2028年に運用を終了する予定のISSは、一部の科学者にとっては研究を進めるための唯一無二の施設となっているという。これらの研究には、医薬であれ材料科学であれ、重力のない環境が不可欠だ。

 バルデ氏は、知る必要があることはすべて学んだという考えを一蹴し、「それはまるで、『十分な数の』星を見たという理由で、望遠鏡を大きくする必要が本当にあるのか疑問に思うようなものだ」と語った。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件