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水処理をアナログからデジタルへ 環境スタートアップWOTAが提唱する「小さな」水インフラの恩恵とは

WOTA株式会社代表取締役社長CEO・前田瑶介氏(左)。同社開発の自律分散型水循環システム「WOTA BOX」(右上)と、水循環型ポータブル手洗い機「WOSH」(右上)(画像提供WOTA)

WOTA株式会社代表取締役社長CEO・前田瑶介氏(左)。同社開発の自律分散型水循環システム「WOTA BOX」(右上)と、水循環型ポータブル手洗い機「WOSH」(右上)(画像提供WOTA)

 私たちの生活を支える水インフラの存続が危ぶまれている。上下水道の老朽化や人口減少、技術者の高齢化などにより、その維持に大きなコストがかかるようになったからだ。

 現在、日本の上下水道は、地下に張り巡らされた水道管や下水管によって水を利用する、いわば中央管理の「大きな」インフラとして運用されている。これに対して、分散した地域や必要な場所・施設で水を循環させる「小さな」水処理システムを提唱し、水に関するさまざまな課題を解決しようとしている環境スタートアップがある。それがWOTA(ウォータ)株式会社だ。

 WOTAの強みは、使った水をその場で98%以上再生し、循環利用できる独自の水処理自律制御技術「WOTA CORE」を持つことだ。この技術をベースに、災害地の避難所や野外施設など、水道がないところでの水利用を可能にするプロダクトを発表し、注目を集めている。

 WOTAの水処理自律制御技術やプロダクトにはどういった強みがあり、どのような社会を目指しているのか。代表取締役社長CEO前田瑶介氏に聞いた。

水処理の世界をアナログからデジタルへ

 まず、WOTAが開発した水処理自律制御技術「WOTA CORE」について。

 前田氏によると、現在の水処理の現場は「酒蔵に近いような運用」となっており、「非常に属人的で、職人的な世界」だという。

「例えば、経験ある専門技術者が水表面の泡の出方や色などから、汚れを分解する微生物の活性状況などを判断し、攪拌(かくはん)や温度調整などの微調整を行うといった形になっています」(前田氏)

 WOTA COREは、こうしたアナログな水処理の世界を、「デジタルに置き換えていく」ものだという。

 具体的には、自社開発したIoTセンサーを使って、水質やろ過膜などの状況を把握し、そのデータをもとに、AI(人工知能)が自動的に水を処理する仕組みとなっている。ちなみにこのAIは、技術者の経験則などから構築したアルゴリズムにもとづいて作動しているが、このアルゴリズム自体も、全装置から吸い上げた結果データをもとに常に改善を繰り返している。

* * *

 ではWOTA COREを用いて、どのようなことができるのか。

 前田氏は、WOTA COREを使うと、「再生率98%以上という非常に高効率な水再生」が可能となり、「水道よりもきれいな水(※)を循環させながら、継続的に提供できるようになる」と技術の強みを説明する。

※WHOの「飲料水水質ガイドライン」に準拠した水質

WOTA BOXは2018年西日本豪雨時の「避難所でシャワーを浴びたい」という被災者ニーズから開発された。写真は2020年台風19号時の長野県長野市の様子(画像提供:WOTA)
WOTA BOXは2018年西日本豪雨時の「避難所でシャワーを浴びたい」という被災者ニーズから開発された。写真は2020年台風19号時の長野県長野市の様子(画像提供:WOTA)

 これを活かしWOTAが開発したのが、「WOTA BOX」と「WOSH(ウォッシュ)」という2つの小型プロダクトだ。

「WOTA BOX」は、シャワーや洗濯機につなげることで、水道のない場所でも繰り返し水を使えるようにするポータブル水再生処理装置だ。通常シャワーで体を洗う場合、約100リットルの水では2人ほどしか体を洗えないが、WOTA BOXで同量の水を循環させると、100人以上がきれいな水でシャワーを浴びることができるようになる。現在は主に災害地の避難所や野外施設向けに提供されている。

「WOSH」は、水道のない場所で、繰り返し手洗いが可能となるポータブル手洗い機だ。約20リットルの水を循環させると、500回以上手洗いができる装置で、コロナ禍の手洗い奨励と相まって、さまざまな場所で設置が進められている。

「自律分散型水循環社会」を目指す

 こうしたプロダクトやサービスを世に普及させることで、前田氏らが目指しているのが「自律分散型水循環社会」の実現だ。

WOSHを利用する様子(画像提供:WOTA)
WOSHを利用する様子(画像提供:WOTA)

 これは既存の大規模集中型の水インフラとは異なる、小規模分散型の水インフラを各地にたくさん設け、これを合わせることで、水の課題を解決しようという考え方だ。

「今世の中で起きているのは、人口減少や水道管の更新時期に入ったことによる追加費用の発生などで、維持コストが増大していることです。要するに今の日本の水インフラは、採算が取りにくい状況になっている」(前田氏)

 さらに前田氏は、都市計画においてもPDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルを回す必要があるが、「上下水道の仕組みは一度作ってしまうと縮小が難しい」ため、人口分布の変動などに合わせた調整が困難だと指摘する。

 そうした水インフラの課題を解決するためにも、小規模分散型の水インフラを活用した「自律分散型水循環社会」を実現する必要があると強く訴える。

 今後の大きな目標として前田氏は、「水の循環利用を世の中の当たり前にする」ことを挙げる。

「水を使ったすぐそばで再生処理をして、循環利用する。そのやり方が上下水道と比べて、経済的、環境的コストが低い。これを当たり前にするのが当面の目標です。ちなみに今は、イニシャルコストの償却なども含め、すでに北欧よりも安い水再生コストが実現できています。これをさらに下げていき、各国の水道料金 よりも低い状態にするのが基本戦略です」

 さらにその先には、「生活に必要な主要資源を、地域単位で再資源化し、循環的に利用できる世の中を作る」ことも目標に掲げている。

「まずは水資源でモデル化し、そのモデルを他資源にも広げていく。これが、今やりたいことレベルの話ではありますが、私の展望です。こういったことで、人間社会がより持続的になっていくのではないかと考えています」

 WOTAをはじめとする環境スタートアップの今後の動向を注視したい。

庄司健一 Written by
有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。