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手書き想像して文字入力 まひの患者助ける脳インプラント技術

まひのある人が文字を書くのを想像すると、その文字が画面にタイプされるシステムについて説明した図(2021年5月11日作成)。(c)JOHN SAEKI, LAURENCE CHU / AFP

まひのある人が文字を書くのを想像すると、その文字が画面にタイプされるシステムについて説明した図(2021年5月11日作成)。(c)JOHN SAEKI, LAURENCE CHU / AFP

【AFP=時事】首から下がまひした男性が、画面を食い入るように見つめている。男性が手で文字を書くのを想像すると、その文字が画面にタイプされて現れる。

 65歳のこの男性が「タイプ」する速さは、同世代の人がスマートフォンで文字を打つのとほぼ同じだ。これを可能にしているのは、新たな脳インプラント技術だ。

 この研究に関する論文が12日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。論文の筆頭著者で、米スタンフォード大学(Stanford University)の科学者フランク・ウィレット(Frank Willett)氏は、同研究は脊髄損傷や脳卒中、運動ニューロン疾患の患者に恩恵をもたらすことができるだろうと語る。

 体がまひした患者のための既存の装置は、眼球の動きや、カーソル動かして文字をポイント・クリックするイメージに頼ってきた。

 だがウィレット氏率いるチームは、文字の手書きを思い浮かべることによっても、思いを表現することができるかもしれないと考えた。

 研究は「T5」とニックネームが付けられた男性を対象に行われた。男性は2007年に脊髄に損傷を受け、首から下がまひしている。

「T5」の左脳に、錠剤ほどの大きさのブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)チップ二つが取り付けられた。これにより、手の動きをつかさどる運動野でのニューロンの発火が検知できる。

 出された信号はセンサーによってコンピューターに伝達され、AI(人工知能)のアルゴリズムによってタイプした文字に変換される。

■若かりし日の自分に「良くなるから」

「T5」は徐々に、文章を写す作業では1分間に90文字(約18単語)、質問に答える作業では1分間に74文字(約15単語)を打ち出すことができるようになった。  カーソルの「ポイント・クリック」によるシステムで生み出せる文字数は、1分間当たり最大40文字だ。

 エラーについても、スマートフォンにあるようなオートコレクト機能を追加すれば、1~2%に削減できると論文著者らは言う。

 ただ、研究対象は1人だけであり、また、年齢の進行に伴う脳活動の変化にチップがどう適応するかの研究も必要だ。

 ウィレット氏はこれらの課題を認識しつつも、この技術が「数十年以内ではなく、数年以内」に実用化できるとの希望を持っている。

 訓練を積むことで、「T5」は心に訴えるような思いを表現する機会を得ることができた。例えば、若かりし日の自分に対する助言だ。 「辛抱強く待て。良くなるから」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件