Open Innovation Platform
FOLLOW US

eスポーツ強豪国・韓国のトップチーム「T1」 ジムも完備し精鋭育成

韓国・ソウルにあるeスポーツ団体「T1」のビルでトレーニングをする選手たち(2021年2月25日撮影)。(c)Jung Yeon-je : AFP

韓国・ソウルにあるeスポーツ団体「T1」のビルでトレーニングをする選手たち(2021年2月25日撮影)。(c)Jung Yeon-je : AFP

【AFP=時事】韓国の首都ソウルの富裕地区・江南(Gangnam)にある新築の10階建てビルの中で、世界トップクラスのeスポーツ団体「T1(ティーワン)」のプロと駆け出しの選手約70人が訓練している。米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)がスポンサーを務めるジム、栄養士を含むサポートスタッフ、英会話レッスンなど、ここには何でもそろっている。

 選手らが目指すのは、同門のスーパースター、イ・サンヒョク(Lee Sang-hyeok)さん(24)だ。世界で大人気のオンライン対戦ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」の大会を席巻し、「フェイカー(Faker)」の異名で知られる。

 爆発的な成長を続けるeスポーツは、プロスポーツとしての地位を急速に固め、増大し続ける若いファン層は、スポンサーや広告主にとって魅力だ。

 20代が主力で、10代も交じるeスポーツ選手には、伝統的なスポーツ競技のスターに劣らない数のファンが世界中から集まり、トップクラスであれば給与や賞金で数百万ドル(数億円)を稼ぎ出す。

 T1最高執行責任者(COO)のジョン・キム(John Kim)氏はT1について、「ジムやカフェテリアがあり、シェフもいる」と説明。「若い選手が最高のパフォーマンスをするために必要な全てがそろっている」と語った。

 ルーティンは過酷だ。選手らは、コーチとトレーナーと共に毎日約10時間、次の試合に向けて戦略を練り、技を磨く。

「趣味でゲームをしていた頃は、おなかがすけば何か食べ、眠くなれば寝ていた。でも今は決まったスケジュール通りに行動している」と語るチェ・エリム(Choi Ellim)さん。2019年にはフェイカーと並んでT1のロースター(出場登録選手枠)のトップの一人に選ばれた。

 選手は、ユーチューブ(YouTube)やゲーム専用ライブストリーミング配信プラットフォームのツイッチ(Twitch)などを通じて、毎月一定の時間以上、ミレニアル世代やZ世代のファンと交流もしなければならない。

■視聴者数は大リーグ以上

 T1は、リーグ・オブ・レジェンドの世界大会で3回優勝している。eスポーツ情報サイト「esportsearnings.com」によると、賞金総額は世界一となる710万ドル(約7億7000万円)に上る。

 2004年に韓国通信大手SKテレコム(SK Telecom)によって設立され、2年前に米メディア大手のコムキャスト(Comcast)の子会社コムキャスト・スペクタカー(Comcast Spectacor)との合弁企業になった。

 SKテレコムは今年2月、韓国プロ野球チームSKワイバーンズ(Sk Wyverns)を1億2200万ドル(約133億円)で売却。これからは「未来型のスポーツ」への投資を増やす方針を発表した。

 オーディエンス(視聴者数)に関して、eスポーツはプロスポーツの中でも最も成長が著しい。米金融大手ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)の2018年の報告では、視聴者数ではすでに米大リーグ(MLB)を上回っている。2019年のリーグ・オブ・レジェンド世界大会のオンライン視聴者は1億人を超えた。

 eスポーツ業界の今年の収益は、ゲーム市場調査会社ニューズー(Newzoo)によれば、前年比約15%増の10億ドル(約1090億円)以上になると予想されており、このうち60%程度をスポンサーからの収入が占めるとみられている。

「eスポーツのオーディエンスは、伝統的なスポーツに比べて平均年齢がすごく若く、顧客層としての魅力が大きい」とニューズーのeスポーツ部門を統括するリーマー・リートケルク(Remer Rietkerk)氏はAFPに語った。

 T1のスポンサーにはナイキ、独高級車大手BMW、オーストリアの飲料メーカー・レッドブル(Red Bull)などがついている。昨年のリーグ・オブ・レジェンドの世界大会は、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やメルセデス・ベンツ(Mercedes Benz)など超有名ブランドも後援だった。

 eスポーツは、来年中国で開催されるアジア競技大会(Asian Games)で初めて正式なメダル種目として実施される。

 しかし、五輪種目としての採用を目指す取り組みは、昨年、国際オリンピック委員会(IOC)がeスポーツの国際統括団体を承認しなかったために頓挫。ゲームの知的所有権などの問題や、暴力や殺人を助長するゲームを認めないIOCのスタンスも障壁となっている。

■「エリート中のエリートにならないと」

 T1のキムCOOは、eスポーツは伝統的な競技と同様に競争が激しいとAFPに語った。T1のスター選手のフェイカーをバスケットボールやゴルフ界のレジェンドであるマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)さんやタイガー・ウッズ(Woods)さんに例え、「史上最高の選手」と評した。

「ひたむきで、今でもトッププレーヤーとして第一線で活躍している。一緒に始めた連中はみんな引退して別の道に進んでいるのに」

 esportsearnings.comによると、フェイカーは賞金でこれまでに120万ドル(約1億3000万円)以上稼いでいる。基本給だけでも数百万ドル(数億円)もらっているとする報道もある。

 キム氏は、フェイカーの成功の秘訣(ひけつ)は、「強い闘争心」と「頭と心の知能が優れている」ことにあると指摘する。

 リーグ・オブ・レジェンドの世界の月間アクティブプレーヤーは1億人を超えているが、「プロになるには、そのトップに立たないとだめ。エリート中のエリートに」とキム氏。

「そして、T1に加わるには、さらに上に行かないと」と続けた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件