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「この世の終わり」にも耐え得る種子貯蔵庫 韓国

韓国・奉化の国立白頭大幹樹木園にある種子貯蔵庫センター内の長期保管庫で、種子サンプルを確認する研究員(2021年5月21日撮影)。(c)Jung Yeon-je : AFP

韓国・奉化の国立白頭大幹樹木園にある種子貯蔵庫センター内の長期保管庫で、種子サンプルを確認する研究員(2021年5月21日撮影)。(c)Jung Yeon-je : AFP

【AFP=時事】韓国南東部・奉化(Bonghwa)郡の山中。核爆発にも耐えられるように設計されたトンネル内に5000種類近い野生植物の種子が保管され、気候変動や自然災害、さらには戦争が起きた場合に絶滅しないよう守られている。

 研究者らは、人口増加、環境汚染、森林伐採などが原因で植物の絶滅が恐るべき速さで進んでいると警告する。

 国立白頭大幹樹木園(Baekdudaegan National Arboretum)にある種子貯蔵庫センター(Seed Vault Center)には、4751種類の野生植物から採取された10万近い種子が保管されている。「この世の終わりのような惨事」が起きても失われることはないと、同センターのイ・サンヨン(Lee Sang-yong)所長はAFPに語った。

 イ所長によれば、同様の施設は世界で他に1か所しかない。ごく一般的な種子銀行では、預けられたサンプルがさまざまな目的で随時引き出される。一方、種子貯蔵庫での保管は半永久的で、利用されるのは絶滅を防止する最後の手段としてのみだ。

 貯蔵庫センターは、韓国の情報機関・国家情報院(National Intelligence Service)によって高度のセキュリティー施設に指定されている。周囲に鉄条網と数十台の監視カメラがあり、撮影は制限され、警察官が定期的に見回っている。

 建物の中に入り、エレベーターで8階ほど降りると、コンクリートの巨大なトンネルに到着する。重い鋼鉄製の扉で守られた保管室と、中にある手動式の移動ラックは、気温は氷点下20度、湿度40%に保たれ、種子の生命が維持されている。

 この貯蔵庫には、朝鮮半島の植物群の大半のサンプルが保管されているが、200万の種子サンプルの貯蔵が可能なため、他国にもスペースを提供し、カザフスタンやタジキスタンなどが利用している。

 保管を委託した側は、預けたサンプルの所有権を保持し、任意に引き出せるが、種子の保管は絶滅を防ぐことが目的であるため、「最も理想的なのは、種を引き出さなくても済むこと」だとイ所長は指摘した。

 地球滅亡にあらがう役目を担っている施設だが、韓国は、1950年に北の隣国に侵略されている。これ以後、北朝鮮は核兵器とミサイルの軍備を増強してきた。 イ所長によれば、施設は韓国で「最も安全な場所」に建てられた。マグニチュード(M)6.9レベルの地震や、さらには核攻撃にも持ちこたえる設計だという。「地理的に非常に安全だ」と同氏は話した。「地下46メートルにトンネルを築き、戦争や核の脅威が及ばないようにしています」

■野生植物の特定は「時間との闘い」

 世界最大で最も名の知れた種子貯蔵庫は、ノルウェー領スバルバル諸島(Svalbard Islands)の炭鉱跡地の奥深くにある。島のおよそ1300キロ先は北極点(North Pole)だ。「ノアの箱舟(Noah’s Ark)」とも呼ばれるスバルバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)は、農業関連の植物が主な対象で、地球上のほぼすべての国から集めた種子のサンプルは100万種を超えている。

 しかし研究者らは、現在の農作物の起源である野生植物の種子の保存も忘れてはならないと言う

 国連(UN)が最近発表した報告書によると、穀物栽培の近縁野生種は、遺伝的な多様性を担保し長期的には食料安全保障に資する可能性を秘めているが、「効果的な保護を受けていない」という。

 その結果、農業は気候変動や害虫、病原体からの影響を受けやすくなると同報告書は警鐘を鳴らし、人類全体が依存している生物圏は「人類史上かつてない速さで縮小している」と続けている。

 野生の植物は未来の医薬品や燃料、食料としての可能性を秘めていると、英キュー王立植物園(Royal Botanical Gardens, Kew)は昨年の報告書で指摘した。だが、そのうち5分の2程度が絶滅の危機にひんしている。生育環境の破壊や気候変動が主な原因だ。

 同植物園によれば、そうした野生植物を絶滅前に特定するのは「時間との闘い」だ。野生植物の種子に関する研究は「極めて乏しい」と、国立白頭大幹樹木園の上級研究者、ナ・チェソン(Na Chae-sun)氏は指摘する。

 同氏のチームは、種子を集め、X線検査や試験栽培も含めた綿密かつ広範囲なプロセスを通じて分類し、貯蔵庫に保管している。「道端に咲いている野の花がなぜ大事なのかと尋ねる人もいるかもしれないが」と話し、「私たちの仕事は、そうした花を一つひとつ確認し、それがどれだけ重要か知ってもらうことです」と続けた。「私たちが今、食べている作物も、もともとはそんな名もない花から生まれたものだったのかもしれません」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件