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AIで復元 レンブラントの「夜警」、約300年ぶりオリジナル構図に

オランダ・アムステルダム国立美術館で欠損部分を復元された巨匠レンブラントの作品「夜警」(2021年6月22日撮影)。(c)Remko de Waal : ANP : AFP

オランダ・アムステルダム国立美術館で欠損部分を復元された巨匠レンブラントの作品「夜警」(2021年6月22日撮影)。(c)Remko de Waal : ANP : AFP

【AFP=時事】オランダ絵画の巨匠レンブラント(Rembrandt)の大作「夜警(The Night Watch)」(1642年)は、18世紀にアムステルダム市庁舎に移設された際、収まりきらなかったために四方を切り取られた。芸術史上、最大の破壊行為の一つと言えよう。

 それから300年以上の歳月を経て、所蔵するアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)が人工知能(AI)を用いて行った修復作業によって、名画はオリジナルの姿をほぼ取り戻した。

「見るのはとてもワクワクします」と同美術館のタコ・ディビッツ(Taco Dibbits)館長はAFPに語った。「子どもの頃から知っている絵画ですから、突然、時間を300年さかのぼった気分です」

 2019年に始まった大掛かりな復元事業で明らかになったのは、ダイナミックな原画の構図だ。

「夜警」は、復元前でも縦363センチ、横438センチの大作だったが、さらに切り取られていた左側が60センチ幅で再現され、そこに描かれていた男性2人と少年1人の姿が復活した。その結果、復元前には中央にいた2人の人物、フランス・バニング・コック(Frans Banninck Cocq)隊長とウィレム・ファン・ルイテンブルフ(Willem van Ruytenburch)副官が脇へずれた。

 アムステルダム国立美術館は、新型コロナウイルス流行対策が緩和され、最近再開されたばかり。復元部分が足された「夜警」は今後3か月間、同美術館で展示される。

■復元の手掛かりは模写

 この絵は、当時アムステルダムの市長で、市民による自警団長でもあったコックに依頼されて、レンブラントが自警団の幹部やメンバーを描いたものだ。

 自警団の集会所に73年間飾られた後、1715年に市庁舎に移されたが、その際、二つのドアの間のスペースに収まるよう切断されたという。「絵を移動した人々は、はさみを手にして四方を切り落としてしまいました」とディビッツ館長。切断された部分は一度も見つかっていない。

「夜警」はそれから何度も災難に遭っている。1911年には男にナイフで突き刺され、ナチス・ドイツ(Nazi)のオランダ侵攻時には地下壕(ごう)に隠された。1975年には再びナイフで切りつけられ、さらに1990年には酸を吹きかけられた。

 今回、復元の手掛かりとされたのは、17世紀に画家ヘリット・ルンデンス(Gerrit Lundens)が破損される前の「夜警」を見て描いた模写だ。

 ただし、模写は原画と比べはるかに小さく、描画法や色調がいくぶん異なり、視角もわずかに違っていた。

 この模写をAIが解析し、失われた部分を見事に復元。よみがえった図像はパネルに印刷され、「夜警」の四方に据え付けられた。

■構図全体が変化

「単純に模写を引き伸ばして『夜警』の脇に据えただけでは、合致しないでしょう」。復元プロジェクトを率いた同美術館の上級研究員ロバート・アードマン(Robert Erdmann)氏はAFPに語った。

 同氏は三つのニューラルネットワーク(脳の神経回路網を模した数理モデル)を使い、コンピューターに原画と模写の情報を学ばせ比較させた。そしてコンピューターがレンブラントの技法を習得した上で、欠損部分の再生に取り掛かった。コンピューターの模倣力は見事で、「夜警」の表面の細かいひび割れまで再現したという。

 復元された図像はキャンバスに印刷され、ニスを塗布。それからメタルフレームで額装がされ「夜警」の四方に据えられた。

 修復された名画を見て「それはいい気分がしました」とアードマン氏。「本当に構図全体が変わりました」

 復元の結果、黒衣の隊長と白い制服姿の副官が横にずれ、美術専門家は警備隊の動きを目にすることができるだろう。一方、左脇に復活した人物らは、絵に深みと遠近感を与えている。

「とにかく、レンブラントは私たちを驚かし続けてくれます」とディビッツ館長が言う。「まさかということが現れ続けるのです」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件