Open Innovation Platform
FOLLOW US

「回り道していられない」 ゴールドマン環境賞平田仁子氏インタビュー

環境NGO「気候ネットワーク」の国際ディレクター、平田仁子氏。東京都内で(2021年6月7日撮影)。(c)Charly TRIBALLEAU : AFP

環境NGO「気候ネットワーク」の国際ディレクター、平田仁子氏。東京都内で(2021年6月7日撮影)。(c)Charly TRIBALLEAU : AFP

【AFP=時事】環境活動家の平田仁子(Kimiko Hirata)氏(50)は人生のほぼ半分を費やし、日本を石炭への依存から脱却させるために奮闘してきた。今は、温暖化に対して手をこまねいている時間はないと話す。

「期待していますが、時間がないので回り道していられない」と日本の環境NGO「気候ネットワーク(Kiko Network)」の国際ディレクターである平田氏はAFPに語った。 「(今)取り組まないと、われわれの未来は本当にない」

 世界3位の経済大国・日本で、平田氏は長年、このメッセージを訴え続けてきた。日本では2011年の福島第1原子力発電所の事故を契機に原発の操業がいったん停止され(その後、一部は再稼働)、石炭火力発電所の依存度が上がった。

 前月15日、平田氏は環境分野のノーベル賞(Nobel Prize)とも呼ばれる「ゴールドマン環境賞(Goldman Environmental Prize)」を受賞した。日本での石炭火力発電所13基の建設中止に貢献したことが主な選考理由だ。日本では現在、約140基ある石炭火力発電所が総発電量の3分の1近くを担っている。液化天然ガス(LNG)火力発電に次ぐ割合だ。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」の調印国である日本は、2017年の温室効果ガス排出量は世界6位で、昨年、脱炭素を実現する目標年を2050年に前倒しした。

 これによって日本政府は気候変動対策に本腰を入れるようになり、「大きな一歩を踏み出しつつあると思う」と平田氏は話す。

 ここに至るまでに、気候ネットワークは脱炭素社会の実現に長年、取り組んできた。

 ゴールドマン環境賞の主催団体は、2011年に気候ネットワークが開始した「高度で多角的な反石炭の国内キャンペーン」により、日本の石炭発電所50基の建設計画のうち3分の1が中止になり、平田氏の主導した同活動で年間4200万トン分の二酸化炭素の排出を防いだとしている。

■環境のシンポジウムで「ビビビと来また」

 平田氏は自身の功績については控えめで、地域レベルでの取り組みを引き合いに出し、さらなる努力の必要性を強調した。

 気候ネットワークの活動は「現場での一定のブレーキになったかもしれない」が、石炭火力の割合はむしろ増えているとして、「大きな意味でいうと、まだまだチャレンジというか、戦いは勝ちに届かない。(中略)もっと効果のあることを残してこなきゃいけなかった」と続けた。

 平田氏は、成人してから気候変動対策にひたむきに取り組んできたが、子ども時代は環境問題には特に関心がなかったという。

 20歳の時に大学で開かれた環境問題に関するシンポジウムで話を聴き、「若い頃の感性がビビビと来ました」と振り返る。

「のんきに罪悪感もなく生きている私たちの日々が、もしかしたら(地球に対して)悪いことをしているということのショックは、ほかのどの問題よりも衝撃だったんです」

 アル・ゴア(Al Gore)元米副大統領の著書「地球の掟(Earth in the Balance)」を読むなど、環境への関心を高めていたが、最初に就職したのは出版社だった。

 その後、環境への関心を自分のキャリアに結び付けるため、米国の気候NGOでインターンとして働くことを決意する。一か八かだったが、当時はインターネットへのアクセスが限られていたこともあり、地元の図書館で米国NGO名鑑をめくり、目指すべき組織を選んだ。

■「希望をつないでいる」

 米国で1年過ごして東京に戻ったのは、ちょうど1997年に京都議定書(Kyoto Protocol)が採択された頃だった。京都議定書には、先進国に温室効果ガスの削減目標を義務付ける拘束力がある。

 日本は同議定書を生んだ会議のホスト国だったものの、「変化していくことに、すごく抵抗感が強い」と平田氏は言う。

 気候ネットワークが1998年に設立されてから平田氏は、事なかれ主義と思える日本社会の風潮と闘ってきた。

「政治に不満があっても、家の中で文句は言っても、そのために社会的に行動する」人がいないと指摘した。「みんなと違うことを言ったらいけないんじゃないかとか。そういう空気の中で育てられている」

 しかし、日本には行動を起こさずに周りの様子をうかがっている余裕はないと平田氏は指摘する。以前より強力化した台風や豪雨で壊滅的な水害が発生するなど、気候変動の影響にさらされている今はなおさらだ。

「考え方を直さないと若い人が(気候変動の)犠牲者になってしまう」

 温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指す日本の新たな目標に合わせた取り組みを国内企業が推進するなど、期待できる兆候もあると平田氏は話す。

 東芝(Toshiba)は、石炭火力発電所の新規建設から撤退し、再生可能エネルギーに移行する方針を発表した。本田技研工業(ホンダ、Honda Motor)やトヨタ自動車(Toyota Motor)などの自動車メーカーは、電気自動車や燃料電池車、カーボンニュートラルの生産ラインの新目標値を設定している。

「今だったら間に合うので、そこには希望をつないでいます」と平田氏は言う。「ここから結果を出せるのか。チャレンジだと思います」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件