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地球に優しく殺生無用の「培養チキン」 イスラエルで進む食革命

イスラエル・ネスジオナにある培養肉メーカー「スーパーミート」に隣接するレストランで、「培養チキン」のバーガーを提供するシェフ(2021年6月18日撮影)。(c) JACK GUEZ / AFP

イスラエル・ネスジオナにある培養肉メーカー「スーパーミート」に隣接するレストランで、「培養チキン」のバーガーを提供するシェフ(2021年6月18日撮影)。(c) JACK GUEZ / AFP

【AFP=時事】見た目は鶏肉だし、味も鶏肉だ。でも、イスラエルの食事客が楽しんでいるのは、ラボで育てた「肉」だ。これこそ増え続ける世界の人々の胃袋を満たす環境に優しい食材だと科学者らは主張する。

 イスラエル中部ネスジオナ(Ness Ziona)市の科学技術団地にある小さなレストランでは、「培養チキン」を使ったハンバーガーやライスロールを客が頬張っている。隣接する製造所「スーパーミート(SuperMeat)」直送の肉だ。

「うまい。味わいは最高です」と褒めるギリー・カンフィ(Gilly Kanfi)さん。大都市テルアビブから来た「肉好き」で、数か月前に予約を入れていた。

「知らなければ、普通のチキンバーガーだと思ったでしょう」

「ザ・チキン(The Chicken)」という名のこのレストランは、スーパーミートのいわば試験場で、食品当局から培養肉の認可を得るまで定期的に試食会を行い、利用者の反応を探っている。

■「食革命の最先端」

 店の大きな窓から見える明るいラボでは、技術者がステンレス製の発酵用の大だるを見守っている。

「一般の人が培養肉製品を味わいながら、目の前で肉の製造・加工工程を見学できるなんて世界で初めてです」と説明するのは、スーパーミートのイド・サビール(Ido Savir)最高経営責任者(CEO)だ。

 一連の工程には、受精したニワトリの卵から取り出した細胞の培養が含まれる。タンパク質、脂肪、糖類、ミネラルやビタミンを含む植物由来の液が、細胞培養に使われる。細胞の成長が早く、ものの数時間で倍に育つという。

 コンピューターサイエンスを学び、ビーガン(完全菜食主義者)のサビール氏は、自らを「食革命の最先端」に位置付ける。地球への影響を抑えながら、食料の供給に努めたいと言う。

 開発者らは、食肉解体など残酷な過程を経ずに、しかも遺伝子操作や抗生物質を使用しないで食肉を生産する倫理的で持続可能な方法を求めている。

■大変革もたらす食材

 サビール氏によると同社の生産可能量は今のところ、1週間に「数百キログラム」だという。

 同氏は、米食品医薬品局(FDA)の認可を期待している。それにより生産量を「商業」規模に拡大すると言う。「そうすれば、土地や水など多くの資源の使用量を減らせる。また製品を健康的で清潔に保てる」。同氏は工場方式で飼育されたニワトリの間で病気がまん延している状況を指摘した。 

国連食糧農業機関(FAO)の見通しでは、世界の食肉生産量は2027年までに15%増加する。

 培養チキンの技術を初めて開発したのはスーパーミートではない。昨年12月、シンガポールのレストランが世界で初めてラボで培養した鶏肉を販売した。

 一方、スーパーミートは用途の広い製品を開発した。筋肉や脂肪、結合組織などを混ぜてさまざまなピースを作った。ペットフードまである。

 飼い主と試食会に来たブルテリアは、与えられたスーパーミートのドッグフードをむさぼっていた。「ペットも、うちの肉が大好きです」とサビール氏は笑った。

 参加者は、培養チキンの出来の良さを認める。

 よく肉を食べると言うリサ・シルバー(Lisa Silver)さんは「もし同じものをレストランで注文できるなら、完全な菜食主義者になりますよ」と満足げに語った。

「これは大きな変化になりますね」姉妹のアナベル・シルバー(Annabelle Silver)さんは菜食主義者で、「肉」を食べたのは数年ぶりだった。

「残虐なことをしないで肉を食べられるなんて素晴らしい。パーフェクトです。これなら毎日でも食べられます」と太鼓判を押した。

■菜食主義者に優しい?

 しかし、この食材を肉と考えるべきかどうか。菜食主義者だけでなく、ユダヤ教指導者らも疑問を抱いている。

 イスラエルの高位ラビ(ユダヤ教の宗教指導者)評議会のエリエゼル・シムチャ・ワイズ(Rabbi Eliezer Simcha Weisz)師は、残虐な行いをせず、環境も壊さない食肉生産は「世界の問題を救う」ポジティブな展開だと述べた。

 ワイズ師は、培養チキンがいずれユダヤ教の食事規定に従ったコーシャ(清浄な)食品に指定されると予想している。

 ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)前首相の顧問をかつて務めた菜食主義活動家、タル・ギルボア(Tal Gilboa)氏は、イスラエルは培養肉技術で先行していると言う。同氏は、人口が「猛烈なスピードで」増加する中、培養肉が人々を菜食主義へ導く第一歩となることを期待している。

 サビールCEOは、培養肉について「一度世に出ると、スマートフォン革命と同様、ものすごい量が生産されるようになる」と予想する。「それが世界中の国の食糧安全保障を向上させることになるでしょう。持続可能性に優れ、動物に優しく、効率的なやり方です」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件