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宇宙観光の活発化、環境負荷への懸念増大

宇宙空間に達した宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」の2号機「ユニティ」(左が機体の一部)から見た地球、米ニューメキシコ州一帯(2021年6月22日撮影)。(c)AFP PHOTO / Virgin Galactic

宇宙空間に達した宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」の2号機「ユニティ」(左が機体の一部)から見た地球、米ニューメキシコ州一帯(2021年6月22日撮影)。(c)AFP PHOTO / Virgin Galactic

【AFP=時事】英富豪リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏の創業した宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が今月行ったテスト飛行は、万々歳で終わるはずだった。

 ところが、同社は宇宙船「スペースシップツー(SpaceShipTwo)」の2号機「ユニティ(VSS Unity)」の炭素排出量に対し、かなりの非難を浴びることとなった。

 米富豪ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏の宇宙開発企業ブルー・オリジン(Blue Origin)が20日に行った同社初の有人宇宙飛行、さらにイーロン・マスク(Elon Musk)氏率いる宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が9月に計画している民間人のみの宇宙飛行など、まだ生まれて間もない宇宙観光産業は話題が続く。

 一方で宇宙観光産業は、環境に与える負荷をめぐる難問に直面もしている。

 今はまだロケットは、著しい汚染が起きるほど頻繁には打ち上げられていない。「商用航空を含めた人間の他の活動と比較しても、二酸化炭素(CO2)排出量は全く微々たるものです」と、米航空宇宙局(NASA)のギャビン・シュミット(Gavin Schmidt)上級気候顧問は語る。

 それでも宇宙観光産業が大きく成長しようとする中、科学者の間では長期にわたる悪影響の可能性を心配する声がある。特に懸念されているのが、未知の部分が多い、成層圏にあるオゾン層に与える影響だ。

 ヴァージン・ギャラクティックは、創業者のブランソン氏が数分間飛行するために化石燃料を大量消費する宇宙船を飛ばしたことで、米CNNや経済誌フォーブス(Forbes)の論評、さらにソーシャルメディアのユーザーらからたたかれている。

 一方、ヴァージン側は今回の炭素排出量について、ロンドン-ニューヨークのビジネスクラス便とほぼ同じ量だと主張している。

 同社は「すでにテスト飛行での炭素排出量を相殺する措置を取った。さらに将来、顧客を乗せて飛行する際の排出量を相殺し、わが社のサプライチェーンのカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量をCO2に換算した数値)を減らす方法を検討している」と、AFPに文書でコメントしている。

 とはいえ、仏宇宙物理学者ロラン・ルゥク(Roland Lehoucq)氏らが学術・研究ニュースサイト「カンバセーション(The Conversation)」に発表した分析によると、大西洋横断飛行が数百人を運ぶのに対し、ヴァージンの宇宙船は6人で乗客1人当たりの排出量は4.5トンに上るという。これは平均的な乗用車が地球を1周する量に相当する。また、パリ協定(Paris Agreement)の目標を達するために推奨される1人当たりの年間排出量の倍以上だ。

「均衡を大きく欠く問題です」とコロラド大学ボルダー校(University of Colorado, Boulder)の大気科学者ダリン・トゥーイー(Darin Toohey)氏はAFPに語った。

 子どもの頃から「宇宙計画とともに育ち、それが科学の世界に入るきっかけ」だったと話すトゥーイー氏だが、宇宙飛行にたとえただで誘われても乗り気になれないという。「そうすると自分自身のフットプリントがとてつもなく大きくなると分かっているからです」

■よりクリーンな燃料を求めて

 ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」は、合成ゴムの一種を燃料として使用し、強力な温室効果ガスである亜酸化窒素の中で燃やす。この燃料は、30~50キロ上空の上部成層圏にブラックカーボン(黒色炭素)を送り込む。

 ブラックカーボンの粒子はさまざまな悪影響を及ぼす。例えば、太陽光をはね返してしまうために「核の冬」のような地球冷却が起きる。あるいは化学反応が加速され、有害な放射線から人間を守っているオゾン層が破壊される。「危険な段階にいるのかもしれません」と指摘するトゥーイー氏は、宇宙船が頻繁に打ち上げられるようになる前にこうした影響に関するさらなる科学的調査を求めている。

 ヴァージンは年間400回の宇宙船飛行を目指しているとされる。

 一方、ベゾス氏のブルー・オリジンは、ヴァージンのスペースシップツーと比べてはるかにクリーンだと主張している。ブルー・オリジンでは液化水素と液化酸素を燃料とし、生成された水は燃焼を経て水蒸気となる。

 同社はツイッター(Twitter)で、米航空宇宙研究開発コンサルティング企業エアロスペース(Aerospace Corp)の科学者マーチン・ロス(Martin Ross)氏の最近の論文を引用している。

 ロス氏の論文によると、ブルー・オリジンの再使用可能な垂直離着陸ロケットは概算で、ヴァージンの宇宙船と比べてオゾンの消失は100分の1、気候強制力は750分の1程度だという。

 だからといって、ブルー・オリジンの宇宙船も完全にクリーンではない。「液化酸素や液化水素を作るには電気が必要です」とロス氏はAFPに指摘した。ロケット推進剤をつくるために必要な電気量は、サプライチェーンをさかのぼって計算できると言う。「それをどれだけさかのぼるかによります」

■持続可能な宇宙観光とは

 スペースXは、9月に予定している民間人4人の宇宙飛行で「ファルコン9(Falcon 9)」ロケットを使用する。計算によると同機の炭素排出量は、大西洋横断飛行395回に相当する。

「われわれが生きているのは気候変動の時代で、観光産業の一環として排出量を増やす活動を始めるのはタイミングが悪い」とAFPに語るのは「Sustainable Space Tourism: An Introduction(持続可能な宇宙ツーリズム入門)」の作者、アネット・トイボネン(Annette Toivonen)氏だ。

 ここに挙げた各企業が創立された2000年代初期に比べて、世界は今、気候危機をはるかに深く認識している。それぞれの産業もこの問題を乗り越えるために、よりクリーンな技術を通じて、汚染を最小限に抑える方法を模索するはずだ。「宇宙ツーリストの経験を人に言えないのならば、宇宙ツーリストになりたいと思う人はいるでしょうか」とトイボネン氏は問う。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件