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ラボ生まれのタンパク質でペットフードに変革を 米新興企業のエコな挑戦

米コロラド州ボールダーの「ボンド・ペット・フーズ」で、ニワトリのDNAから作ったタンパク質のサンプルを飼い犬に与える共同創業者で最高経営責任者(CEO)のリッチ・ケルマン氏(2021年7月1日撮影)。(c)Patrick T. FALLON / AFP

米コロラド州ボールダーの「ボンド・ペット・フーズ」で、ニワトリのDNAから作ったタンパク質のサンプルを飼い犬に与える共同創業者で最高経営責任者(CEO)のリッチ・ケルマン氏(2021年7月1日撮影)。(c)Patrick T. FALLON / AFP

【AFP=時事】ガラス容器の中で泡立つ液体に、米国のスタートアップ企業の期待がかかる。栄養豊富な餌をラボで生み出し、ペットフード業界に変革を起こす試みだ。大半のペットフードは動物性タンパク質を含んでいる。動物性タンパク質を得るためには動物を殺さなければならない上、食用に動物を飼育することは温室効果ガスの発生につながる。

 リッチ・ケルマン(Rich Kelleman)氏がコロラド州ボールダー(Boulder)で起業した「ボンド・ペット・フーズ(Bond Pet Foods)」は、バイオ技術を使い動物性タンパク質を作り出すことで、これら二つの落とし穴を避けようとしている。ケルマン氏を突き動かしたのは、ペットフードを作る際の家畜の扱いに対する嫌悪感だった。ある研究結果が、さらにケルマン氏に衝撃を与えた。米国内のペットが消費する動物由来のカロリーは、6500万人を超えるフランス国民の消費量に相当するという内容だった。

 気候変動に与える家畜の影響も、ケルマン氏の決意を後押しした。国連(UN)のデータによると、人間の活動による温室効果ガス排出量の14.5%は、動物を食用に飼育することに関連するという。しかし、犬や猫の栄養は野菜だけで十分とは言い切れない。リサーチの末、ケルマン氏はラボでペットフードを生み出す「暗号を解読」できれば、新しい市場が開けると確信した。

「犬や猫の口に合わなければなりません。でも、完全にステーキや胸肉の形に見える必要はありません」とケルマン氏は社を訪れたAFP取材班に語った。「口当たりが大事、ということでもありません。人間向けには、味や食感を含めたシズル感にこだわる必要がありますが、それとは違います」

 開発に当たっては、純血種のニワトリから採血してDNAを抽出し、それを微生物に移入した。さらに、微生物を発酵槽に入れ、ラボ生まれの動物性タンパク質を作り出した。「奇妙で不思議なプロセスに聞こえるかもしれません。でも、かなり前から広く行われています」とケルマン氏は話した。

■ナッツの風味にほのかなチーズの香り

 ケルマン氏の愛犬ランプルズも、ボンド社のペットフードを気に入っているようだ。AFPの記者がサンプルを試すと、ナッツの風味に加えパルメザンチーズのほのかな香りがした。

 しかし、同社がペットフード業界の主流になるには、多くのハードルがある。第一は価格。環境を大事にする犬の飼い主でも、ドッグフードへの出費となると財布のひもを締める。発酵タンクを導入することで、同社はタンパク質のコストを1キロ当たり100ドル(約1万1000円)から5ドル(約550円)まで下げることができた。さらに価格を下げられると技術責任者は言う。

 しかし、認可当局にこのペットフードが安全で有望であることを納得させるのに、少なくともあと2年はテストと評価が必要となりそうだ。ボンド社は2023年の後半までに、同社のタンパク質をペットフード製造業者向けに販売し始めたいという。

 決定的な問題は、ラボ生まれのペットフードが、ペットの健康や幸せを願う飼い主に受け入れられるかどうかだ。 ボンド社からそう遠くない公園にいた犬の飼い主は、興味を示したが、慎重でもあった。「私なら自分の犬に本物の肉のタンパク質を与えたい。地球を害さない範囲で」と、オーストラリアンシェパード2匹を連れたロシェル・ローリー(Rochelle Loughry)さんは語る。

「理屈の上では正しい」とジェイソン・アッカーマン(Jason Ackermann)さん。「しかし、長い目でみて、得られる恩恵が本物の肉と同じかどうか確かめる必要がある」と指摘した。

 ペットフードに含まれる肉は、しばしば激しい論争を引き起こしている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)環境研究所のグレッグ・オーキン(Greg Okin)教授は、肉食のペットが大量の二酸化炭素を排出するという研究を発表し、保守派と動物愛護活動家の両サイドから批判を受けた。これは、ケルマン氏を起業に向かわせる一因となった研究だ。「私が『自分の猫や犬を殺せ』とか『餌をやるな』とかいった考えを持っていると思われていたようです。私は全くそんなことは言っていないのですが」とオーキン教授。「たくさんヘイト(憎悪)を浴びました」と語った。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件