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【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.7】オードリー・タン氏に伺う、二ッポンのデジタル政策に関するアドバイスとは?

オードリー・タン氏(左)と伊藤穰一

オードリー・タン氏(左)と伊藤穰一

マサチューセッツ工科大学のメディアラボの元所長で、株式会社デジタルガレージの共同創業者でもある伊藤穰一が、さまざまなゲストを招きデジタルDXについて考えていくポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST  ―変革への道― 」。

 前回に引き続き、台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タン(鳳唐)氏を迎えての対談。今回は日本のデジタル政策に対するアドバイスなどを伺った。

*    *     *

伊藤穰一(以下、伊藤):「日本では現在、デジタル庁を新設して、行政のデジタル変革を進めています。その中で毎回大きな議論となるのが、調達方法とそのプロセスに関する問題です。これに関して何かアドバイスはありますでしょうか?台湾の経験からなにかヒントになるようなことがあるといいのですが…」

オードリー・タン(敬称略 以下、タン):「私たちは、この問題を解決するために、公務員の立ち位置をガラリと変えました。セクショナリズムの間に立たされてリスク回避をするだけ公務員に、市民としての視点を持たせるようにしたのです。例えば、2017年に確定申告サービスのデザインを市民の意見を交えながら刷新したのですが、この際、分科会の議長には財務省や税務署などの役人を起用せず、全く関係のない他の省庁の人間に担当させました。例えば、日本の海上保安庁に相当する海巡署の署員に担当させたりしたのです。彼らだって税申告は行うわけですからね。こうすることで、公務員たちをリーダー的役割にしつつ、ユーザーとしての視点を保つことが可能となるわけです。」

 単に紙や印鑑などアナログな手法を廃止し、デジタルに移行させるというデジタル化の枠組みに留まることなく、より透明性が高くオープンな行政となるよう仕組みから変えていく。これは、台湾でデジタル担当大臣というポストが生まれた背景に、ひまわり学生運動という民主化運動があったからこその成果なのかもしれない。分散的で、かつ個々の動きから新たなイノベーションが生まれる「創発的」なインターネットからスタートした民主化運動は、台湾の行政自体を根本から覆していく変革的な動きに大きく作用しているようだ。

 さらに、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を推進する日本に対するアドバイスについても伺った。

伊藤:「日本では、まだまだデジタルに慣れていない方々もたくさん存在しています。特に、年配の方々をどうやってデジタルDXに移行させていけばいいと思われますか?あなたの経験からなにかアドバイスがあれば教えてください。」

タン:「私の経験から言えるのは、(高齢者の方に)政策立案に早くから参加してもらえばもらうほど、質の高いものができるということです。例えば、台湾ではマスク配給を実施したのですが、当初はコンビニのATMで(マスクの料金を)振り込んだ後、そのレシートをドラッグストアに持っていくことで配給されたマスクと交換できる仕組みにしていていました。しかし、私の90歳の祖母を実証実験に参加させた際に意外なことがわかったのです。

 そもそも彼女は高齢で、マスクを購入するため行列には並べない。そこで、若い(77歳)お友達のヤンさんに購入をお願いしていました。しかしここで、ヤンさんはATMで振込をしないことが分かったのです。ATMは普段よく使用するそうなのですが、預金を引き出すだけに使用していました。振込は郵便局に行き、伝票を使って行っていたのです。聞くと、ATMで振込できる仕組みが理解できず、ハッキングされてきちんとお金が届かなかったらどうしようと心配になるから、ということでした。『では、どうしたらいいのでしょう?』とヤンさんに尋ねたところ、『健康保険証を使えばいいじゃない』と提案してくれたのです」

 オードリー・タン氏はヤンさんのアドバイスに従い、台湾の国民健康保険証である全民健康保険カード(NHIカード)を活用し、保険証を提示することでマスクを購入できる仕組みを作り上げた。この経験から、タン氏はあることを学んだという。

タン:「ヤンさんとの対話を通じて、立場に合わせてテクノロジーを応用することで、デジタル支持者が誕生する、ということを学びました。また、ヤンさんのような存在がいることで、分厚いパンフレットを作成する必要もなくなりました。なぜなら、彼女たちは同じコミュニティの高齢者にその利便性や安全性を口コミでどんどん広めてくれるからです。 このように、できるだけ早い段階で影響を受ける可能性のある人たちを巻き込むことで、既成概念にとらわれず、お年寄りを味方につけるような補完的なイノベーションを起こすことができたのです」

 この話の続きは、JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―でお楽しみいただけます。

【JOI ITO 変革への道 -Opinion Box】

番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけでなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFTをプレゼントしています。

https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0

【編集ノート】

伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2021/11/29/005741.html

JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#7 台湾デジタル担当大臣オードリー・タンに伺う、ニッポンのデジタル政策に関するアドバイスとは?

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