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世界初の電動無人貨物船、ゼロエミッションの船出 ノルウェー

ノルウェー・オスロで公開された世界初、完全電動の自律航行貨物船「ヤラ・ビルケラン」(2021年11月19日撮影)。(c)Torstein B : NTB : AFP

ノルウェー・オスロで公開された世界初、完全電動の自律航行貨物船「ヤラ・ビルケラン」(2021年11月19日撮影)。(c)Torstein B : NTB : AFP

【AFP=時事】温室効果ガスの排出量ゼロ、近いうちに乗員もゼロへ──。自律航行する世界初の電動無人貨物船がノルウェーで披露された。温室効果ガス排出量の削減に取り組む海運業界において、小さいが有望な一歩だ。

 首都オスロのドックで19日、電気自動貨物船「ヤラ・ビルケラン(Yara Birkeland)」が報道陣に公開された。全長80メートル、載貨重量3200トンの同船は間もなく2年間の試験運航を開始する。自律航行ができるようになるまでは微調整が続けられる。

 最大120個の肥料コンテナを積んで、ノルウェー南東の町ポルスグルン(Porsgrunn)にある工場から、十数キロ離れたブレビック(Brevik)港まで航行する予定で、大気汚染源のディーゼルを燃料とするトラックによる輸送が年4万回削減される。

 同船を建造したノルウェーの肥料メーカー大手、ヤラ・インターナショナル(Yara International)によると、センサーを使って7.5カイリ(約14キロ)の航路を自律航行できるようになれば、操舵(そうだ)室は「3〜4年か、あるいは5年」で撤去される。

「船舶上で起きる問題の多くは人為的ミスによるもので、疲労などが原因です」。プロジェクトマネジャーのヨースタイン・ブラーテン(Jostein Braaten)氏は、いずれ使われなくなるはずの船橋(指揮所)でそう語った。「自律航行により、安全な旅が可能になります」

 ヤラ・ビルケランの航路は短いが、多くの障害が待ち受ける。まずは狭いフィヨルドを航行し、2本の橋をくぐり抜けねばならない。潮の流れや激しい船の往来に注意しながら、ノルウェーで最も航行量が多い港の一つに入る。商船、プレジャーボート、カヤックなどともすれ違うことになる。数か月は学習期間が続く。

「まず障害物の存在を感知しなければなりません。それがカヤックだと判別したら、次にどう対処するかを判断します」とブラーテン氏は説明した。

■テスラ「100台」分の電力

 ヤラ・ビルケランの船内には、従来の機関室に代わり8個の蓄電池コンパートメントが設置されており、6.8メガワット時の電力を貯蔵できる。再生可能エネルギーである水力を使って発電する。

 ブラーテン氏は、米国の電気自動車(EV)と比較して「テスラ(Tesla)100台分に相当します」と述べた。 国際海運によって排出される人為的な温室効果ガスは全体のほぼ3%を占め、業界は排出量の削減目標を2030年までに40%、2050年までに50%としている。

 だが近年、排出量は逆に増加している。国際海事機関(International Maritime Organization)の最新統計によると、国際海運の温室効果ガス排出量は2012年には9億6200トンだったが、2018年には10億トンを超えた。

 専門家は、電動船がすぐに万能の解決策になることは期待していない。米ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)の海上輸送専門家、カミーユ・エグロフ(Camille Egloff)氏は「電動船は『ニッチな』用途、例えばフェリーのように短距離で一定している航路、沿岸や河川の輸送には適しているでしょう。しかし、長い航海には不向きです」と指摘する。

「長距離でも自律航行を可能にする必要がある上、港に充電設備も必要です。調整すべき技術上、インフラ上の課題があります」

 石油と天然ガスの生産大国であるノルウェーは、意外にも電気輸送で世界をリードしており、すでにたくさんの電動フェリーが国内のフィヨルドを行き交っている。さらに外洋航路船も「グリーン化」するためには、液化天然ガス(LNG)や合成メタノール、水素など他の技術に頼る必要がありそうだ。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件