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難民の手で再生、環境にも優しいパソコン「ZERO PC」 横浜

ピープルポートの従業員。神奈川県横浜市で(2021年11月12日撮影)。(c)AFPBB News:Yoko Akiyoshi

ピープルポートの従業員。神奈川県横浜市で(2021年11月12日撮影)。(c)AFPBB News:Yoko Akiyoshi


【AFP=時事】「環境負荷ゼロ」と「難民ゼロ」を両立させたいという思いが込められた再生パソコンが、神奈川県横浜市でつくられている。パソコンの再生事業に携わるのは、日本に逃れてきた難民認定を待つ人々だ。

 ピープルポート株式会社(PEOPLE PORT)。代表取締役社長の青山明弘(Akihiro Aoyama)氏(31)が、「難民という立場にいる人たちが安全に働ける場所をつくろう」と、2017年に創業した。

 日本語が話せなくても技術を習得しやすく、母国に帰ってもスキルを生かすことができ、かつ日本社会にも貢献できる事業として、パソコンの再生・販売を選んだ。日本社会への貢献を意識した背景には、難民に対する「ネガティブ(な感情)や無関心」をポジティブなものに変えていきたいという思いがある。

 当初は、パソコンのリサイクル事業から始めた。回収した不要パソコンのうち、3割は状態が良く、十分に作動したことから、再生事業にも注力。現在は再生事業が主な収益源となっている。これまでに再生したパソコンは約3000台。「ZERO PC」ブランドで販売している。心臓部や消耗部品は新品と交換済みだ。

 製造過程では実質的に自然エネルギー100%の電力を使う。発送ではプラスチックの緩衝材を一切用いない。また、リユースにより温室効果ガス排出量の削減にもつなげている。

 ZERO PCのターゲット層は、新品のパソコン購入を検討している個人だ。ショッピングモールの催事会場とオンラインで販売している。パソコンの値段は、最低3万円台から。軽作業やテレワークなどの用途別で、四つの価格帯を設けている。無料の試用期間を設定したり、パソコン選びに迷っている人を対象としたコンシェルジュサービスを展開したりしている。

■100人の難民雇用目指す

 青山氏は幼少期、祖父母から太平洋戦争の話をたびたび聞いたことで、子どもながらに戦争への嫌悪感が強かった。大学時代にはカンボジア内戦の跡地を訪れ、ドキュメンタリー映画を撮影した。元従軍兵と交流した際、「貧しさと相互理解(の欠如)が争いを生んでいる原因なのでは」と、考えた。

 大学卒業後は、「相互理解」をヒントに、外国人留学生と日本人が暮らすシェアハウスの運営に携わった。 次第に「戦争・紛争の当事者に近いところで事業がしたい。自分の人生を使いたい」という思いが強まり、起業に至った。

 現在、従業員は13人。うち難民認定を待つ従業員は4人だ。スタッフのサイラ(Saira)さんは、社内は家族みたいに温かい雰囲気で「外国人としてとても働きやすい」と語った。難民申請中の女性は、仕事は好きで「ここで働くことは私にとって好機」と話した。引き取ったパソコンの製品化や輸出業務を担当している。

 別の難民申請中の男性は、パソコンの動作確認や修理を担当。「ぼくはラッキーマンだ」と話した。日本語で悩んだ時も、同僚が助けてくれるという。難民認定を待つ従業員の採用は、「今一番心苦しい」ところだと、青山氏は明かす。1人、2人の募集に10人の紹介がある。採用時にパソコン修理のスキルは問わない。働きながら技術を習得してもらう。

「パソコンの販売台数が、会社が迎え入れられる(難民申請中の)従業員数に直結してくる」として、より多くの人に購入してもらえるよう努めたいと語った。年商は約1億円。売上高は前年の1.5〜1.6倍に伸びた。難民申請中の従業員の枠も2人から4人まで増やせるようになった。いずれは100人の雇用を目指している。

 日本は難民認定が厳しい。難民申請者がいずれ、「高度人材」としての在留資格を取得して働き続けられるよう、来年5月にはソフトウエア事業も始める予定だ。より高度な技術が求められるプログラミング業務の方が、在留資格を得やすいためだ。個々の能力開発も視野に入れながら、今後20年で先進国だけでなく開発途上国への拠点展開を見据えている。

■製品の裏側に関心を

 青山氏は「製品の裏側の人や物事を少しでも考える人が増えるといい」と語る。たとえば、パソコンには「紛争鉱物」と呼ばれる資源が使われている。紛争鉱物は紛争地域で採掘される鉱物資源で、武装勢力などの資金源になったり、労働者が搾取されていたりする場合もある。

 また、難民と環境問題は無関係ではない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2010年以降、年間平均2150万人が、自然災害が原因で住む場所を失っている。ZERO PCが環境負荷ゼロを目指す理由は、さらなる難民を生まないことにある。

 消費者の意識が変わることで、人や環境が救われるかもしれないと青山氏。「個人が変わり、会社が変わって、社会も変わる」と語った。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件