Open Innovation Platform
FOLLOW US

インド工科大学、世界的IT企業が欲しがる人材輩出の秘密

インド工科大学ボンベイ校の授業風景(2021年12月6日撮影)。(c)Sujit JAISWAL : AFP

インド工科大学ボンベイ校の授業風景(2021年12月6日撮影)。(c)Sujit JAISWAL : AFP

【AFP=時事】11月末にツイッター(Twitter)の最高経営責任者(CEO)に就任したばかりのパラグ・アグラワル(Parag Agrawal)氏を含め、米国の巨大IT企業のトップに指名される人材を次々に輩出しているのがインドの名門工科大学だ。

 シバニ・ナンガオンカー(Shivani Nandgaonkar)さん(22)も、アグラワル氏と同じ道を目指している。同氏も学んだインド工科大学ボンベイ校(IIT Bombay)の学生だ。すでにIT大手グーグル(Google)による採用が決まっている。

「パラグ氏のことを聞いて、とてもうれしかったです」とナンガオンカーさんは誇らしげに語る。「IIT(インド工科大学)同窓生の中には、グーグルのCEOもいます。スンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏ですね。私にとってはこれ(グーグルへの就職)が成功への足掛かりです」

 ツイッターのアグラワル氏は37歳。S&P500構成企業のCEOの中で最年少だ。

 グーグルの親会社アルファベット(Alphabet)のCEOも兼任するピチャイ氏(49)と同様、アグラワル氏もIITで学位を取得するとインドを出て、米国の大学院に進んだ後、米企業数社に勤務した。米IT企業の最高位に上り詰めた他のインド人には、IBMのアルビンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏や、コンピューターセキュリティー会社パロアルトネットワークス(Palo Alto Networks)のニケシュ・アローラ(Nikesh Arora)氏がいる。いずれもIITを卒業している。

 さらに、マイクロソフト(Microsoft)とソフトウエア大手アドビ(Adobe)の両CEO、サトヤ・ナデラ(Satya Nadella)氏とシャンタヌ・ナラヤン(Shantanu Narayen)もインド出身だ。

 企業幹部や専門家はこの現象について、インドという国の大きさに加え、移民や留学生の送り出し・受け入れが整っているさまざまな要因や、問題を創意工夫で乗り越えようとする文化、英語力、厄介な仕事にも粘り強く取り組む風土などがもたらした成果だと言う。

 IIT卒業生で、サンマイクロシステムズ(Sun Microsystems)の共同設立者であるビノッド・コースラ(Vinod Khosla)氏は、多種多様な社会・習慣・言語の中で成長するインド人は「複雑な状況を切り抜ける」能力が高いという。「学歴競争や混沌(こんとん)とした社会状況もスキル向上に役立っている」とAFPに語った。

■MITやハーバードより難しい入試

 IT産業の総本山シリコンバレー(Silicon Valley)で要求されるのは、高度な専門技術、多様性に富む集団を管理する能力、そして経営陣を納得させる「起業力」だ。

「何かを改革するためには、あえてルールを破る技量がなくてはなりません。恐れずに」と語るのは、インド系米国人のIT起業家で研究者でもあるビベック・ワドワ(Vivek Wadhwa)氏だ。「ルールを一つや二つ破る、あるいは官僚の無能さや腐敗に対処できなければ、インドでは一日たりともやっていけません」。そうしたスキルが、シリコンバレーでは非常に有益だと言う。

 インド全国に計23校のキャンパスがあるIITは、同国最高位の大学と見なされている。毎年1万6000人の定員に対し、100万人以上の学生が出願する。入試のために週7日、毎日14時間勉強する受験生もいる。

「MIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード(Harvard)大学よりも10倍難しい入試を受けると想像してください。それがIITです」とワドワ氏は言う。

■インド最大の輸出品目?

 IITは1950年、インドの初代首相ジャワハルラール・ネルー(Jawaharlal Nehru)氏が創設した。目指したのは、1947年に英国から独立した同国の国家建設を支える理工系人材の輩出だ。

 しかし、技術者の供給に見合う国内需要がなく、卒業生は国外、特に米国に目を向けた。「90年代に入っても、インドの産業は先進的な水準に至らず(中略)最先端の技術に携わりたいと考える人の多くが、国外に行く必要性を感じていた」とIITボンベイ校のS・スダルシャン(S. Sudarshan)副学長は語った。

 米国では長年にわたり、IT技術者など専門職向けのH1-Bビザに応募する半数以上がインド人で、しかもほとんどはテクノロジー部門だ。

 一方、インドよりさらに人口が多い中国の技術者には、急成長する自国で仕事を見つけるか、米国で大学院課程を修了してから帰国する選択肢があると、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)のデベシュ・カプール(Devesh Kapur)教授は指摘する。同教授もIITの卒業生だ。

 インドからの頭脳流出は、国内のIT部門が発展するにつれていずれ減少し、エリート層は国内でも就労機会を得られるようになるだろう。しかし、間もなくIITを卒業し、グーグルに就職するナンガオンカーさんにとって、アグラワル氏やピチャイ氏のようにIT企業のトップに就くことは現実離れした話ではない。「あり得ないことではないでしょう?」とナンガオンカーさん。「夢は大きく持たないと」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件