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ディープフェイク民主主義 韓国大統領選、「AI候補」で票集め

韓国ソウルにある保守系野党「国民の力」の選挙対策本部で、大統領候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長のデジタルアバター「AI尹錫悦」の動画を作成するチームディレクターのペク・キョンフン氏(2022年2月7日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP

韓国ソウルにある保守系野党「国民の力」の選挙対策本部で、大統領候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長のデジタルアバター「AI尹錫悦」の動画を作成するチームディレクターのペク・キョンフン氏(2022年2月7日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP

【AFP=時事】韓国ソウルにある保守系野党「国民の力(People Power Party)」の選挙対策本部では、流行に敏感な20~30代のスタッフが人工知能(AI)を用いた合成映像技術「ディープフェイク」を駆使して、一見不可能なことに挑戦している──60代の大統領候補、尹錫悦(ユン・ソクヨル、Yoon Suk-yeol)前検事総長を「クール」に見せようというのだ。

 チームはこのために何時間もかけて録画した尹氏の映像を基に、同氏のデジタルアバターを作成し、来月9日投開票の大統領選に向けた選挙戦に「AI尹錫悦」を投入した。

 AI技術が選挙に利用された例は過去にもある。ドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領を侮辱するバラク・オバマ(Barack Obama)元米大統領のディープフェイク動画などが知られている。だが、「AI尹錫悦」は世界初の党公認ディープフェイク候補だと開発チームは言う。

 黒髪をきれいに整え、しゃれたスーツを着た「AI尹錫悦」は、見た目は本人とほとんど変わらないものの、辛らつな言葉やインターネットミーム(ウェブ上の流行ネタ)になりやすい口癖が特徴だ。ネットでニュースに接する若い有権者の関心を引く作戦で、このコンセプトは世界最速の通信速度を誇る韓国で大人気となっている。

 今年1月1日に公開された公式ウェブサイト「WIKI YOON」には700万人が訪れ、「AI尹錫悦」に質問を投げかけた。「文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領と(対立候補の)李在明(イ・ジェミョン、Lee Jae-myung)氏が溺れていたら、どちらを助けますか?」という質問に、「AI尹錫悦」はこう答えている。「2人の幸運を祈ります」

 尹氏は「AI尹錫悦」作成のため、20時間かけて音声と映像で3000の文章を収録し、ソウルのディープフェイク技術企業にデータを提供した。

「AI尹錫悦」チームのディレクター、ペク・キョンフン(Baik Kyeong-hoon)氏は、「尹氏がよく口にする言葉ほどAI尹錫悦に反映されやすい」と語る。とはいえ、アバターが実際に話している内容を作成するのは選対チームだ。

■高度な皮肉

「ユーモアがあり風刺の利いた回答にしようと工夫している」とペク氏。そのかいあって、「AI尹錫悦」の発言は韓国メディアでも話題を集めている。「政治的に正しい発言しかしていなかったら、これほどの反応は得られなかっただろう」「急速に変化する社会への既成政治勢力の対応は遅すぎる」と話した。

「AI尹錫悦」は、尹氏の過去のスキャンダルも冗談の種にして有権者の関心をはぐらかそうとしている。例えば、検察時代に建設会社から不適切な果物の贈り物を受け取ったとされる指摘については、「柿やメロンに恩義はありません。国民の恩義のみを受けています」と答えた。選対本部はその後、尹氏が贈り物を受け取ったことがあると認めた。

 最大の対立候補である李氏の所属する与党「共に民主党(DPK)」の選対スタッフは、AI候補者の起用について「政治の礼儀作法を軽視している」と非難する。しかし、この作戦の効果は出ている。世論調査によると、20代有権者の支持率では、尹氏が李氏を引き離している。

 韓国の選挙管理委員会は、ディープフェイク技術であることを明確に示し、虚偽情報を拡散しないことを条件に、AI候補者を用いた選挙運動を許可した。

 ディープフェイク技術は有害だと指摘されることが多いが、「AI尹錫悦」チームのペク氏は、AIこそが選挙運動の未来だと考えている。「ディープフェイク技術を使えば、膨大な量のコンテンツを簡単に制作できる。このため、ますます活用されるようになるだろう」と同氏はAFPに語った。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件