Open Innovation Platform
FOLLOW US

料理界で論争 ネット上のレシピ盗用問題

米国の菓子職人ケリー・マーク氏のインスタグラムとフェイスブックページ(2022年1月28日撮影)。(c)OLIVIER DOULIERY : AFP

米国の菓子職人ケリー・マーク氏のインスタグラムとフェイスブックページ(2022年1月28日撮影)。(c)OLIVIER DOULIERY : AFP

【AFP=時事】米国の菓子職人ニック・マルジエリ(Nick Malgieri)氏は、食に関するブログを見ていて、あるレシピに目が留まった。パネトーネというふっくらしたパン菓子のレシピで、イタリア人の祖母と過ごした楽しいクリスマスの思い出がよみがえった……。

 しかし、読み始めてすぐに、このレシピに見覚えがあることに気付いた。「思わず、『これは私のレシピだ!』と口走りました」と、マルジエリ氏はAFPとのインタビューで語った。

 マルジエリ氏はこうした不快な思いを何度もしている。数十年のキャリアと12冊のレシピ本を誇る彼は、自分のレシピをインターネットのいたるところで見かけてきた。無数のサイトで、ことわりなく勝手に引用されているのだ。 しかも、いくつかのレシピは他の菓子職人のオリジナルとして、レシピ本にまで載せられていた。そのうちの一冊では、「フードプロセッサーで作るパフペストリー」のレシピが、「ほとんど一字一句たがわず」まねされていたという。

 食の世界にはびこっている盗用を防ぐのは難しい。

 マルジエリ氏のパフペストリーを盗んだ料理本は出版部数が少なかったため、同氏の出版社は訴えようともしなかった。料理人が裁判所に救いを求めても、著作権が認められたり、金銭的に解決されたりする見込みは少ない。一般的に、レシピは知的財産法で保護されていないためだ。

 この分野を専門とするニューヨークの弁護士、リン・オバーランダー(Lynn Oberlander)氏は「レシピは、食材リストや簡単な説明書きにすぎません」と語る。「例えば、スクランブルエッグに著作権を与えることができますか?」

 オリジナルレシピを保護したい料理人に残されている最後の手段は、「十分に独創性のある文学的表現」をレシピや歴史背景の説明に含めることだろうとオバーランダー氏は言う。

■インスピレーション、それとも完全な模倣?

 昨年10月、レシピをめぐるスキャンダルが料理界を揺るがした。シンガポールのシェフで文筆家のシャロン・ウィー(Sharon Wee)氏が、同業のエリザベス・へイグ(Elizabeth Haigh)氏を訴えたのだ。

 ヘイグ氏は、ウィー氏が母親と作った郷土料理のレシピをまとめた『Growing Up in a Nonya Kitchen(ニョニャ料理のキッチンで育つ)』(2012年)の内容を「模倣したり言い換えたり」して、自著に載せたとされる。

 ウィー氏はこの件で「とても心を痛めた」と言う。最終的にヘイグ氏の著書『マカン(Makan、食べるの意)』は販売中止となり回収された。しかし食の世界では、古典的なレシピの焼き直しは当たり前だ。では、他の料理人の仕事からインスピレーションを受けることと盗作の境目はどこにあるのか。

 フランスでは1980年代、著名シェフ、ジャック・マキシマン(Jacques Maximin)氏が法律の抜け穴をふさぐために、創作料理を守る団体を立ち上げようとした。しかし、このアイデアは一流シェフたちから猛反発を受けた。

 伝説的なシェフ、ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)氏は、シェフは誰でも「他人からインスピレーションを受ける」もので、マキシマン氏のアイデアには「当惑した」と語っていたとされる。そして自身の代表的な料理の一つは、仏南部のアルデシュ渓谷(Lower Ardeche)に住む「ある老人」から「盗んだ」ものだとも明かした。

 この問題をめぐっては、いまだに大きく意見が分かれている。一部の食に関するブログに対しては、盗用をやめ、他の料理人の創作であることを明記するよう要請されている。

 マルジエリ氏は「インターネットは盗用を競争のようにしてしまいました」と語る。レシピによっては「20や30」のブログで同じものが見つかると述べた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件

Written by