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ルワンダの「殺人湖」 深層のメタンガスを発電源に

キブ湖の湖水からメタンガスを抽出している電力会社キブワットの浮体式プラットホーム。ルワンダ西部州で(2021年11月1日撮影)。(c)Simon MAINA : AFP

キブ湖の湖水からメタンガスを抽出している電力会社キブワットの浮体式プラットホーム。ルワンダ西部州で(2021年11月1日撮影)。(c)Simon MAINA : AFP

【AFP=時事】アフリカのルワンダとコンゴ民主共和国にまたがるキブ湖(Lake Kivu)には、浮体式発電所が設置されている。昨年5月、コンゴ側の火山が大噴火を起こし、激震が湖水を揺さぶったとき、技術者らはただ不安げに見守るしかなかった。

 彼らが恐れたのは、ニーラゴンゴ山(Mount Nyiragongo)から噴き出る溶岩流ではなく、キブ湖に大量に存在する高濃度の爆発性ガスだ。

 キブはアフリカ大陸の大地溝帯(Great Rift Valley)にある湖沼の一つ。緩やかな緑の丘陵が湖面に映る景観は穏やかに見える。

 だが、実態はその穏やかさとはかけ離れている──そう語るのは、湖沼学者で、湖水から抽出したガスを利用する電力会社キブワット(KivuWatt)で環境管理を担当するフランソワ・ダルシャンボー(Francois Darchambeau)氏だ。

 数千年にわたる火山活動の結果、キブ湖の深層堆積物には大量のメタンや二酸化炭素(CO2)が蓄積されている。万が一、そのガスが噴出すれば、途方もない破壊力を持つことになる。

 いわゆる「淡水湖沼噴出」と呼ばれる現象が起きれば、「深層部から湖面にかけてガスの大爆発」が発生し、大波と毒ガス雲により数百万人の命が危険にさらされるとダルシャンボー氏は述べた。「私たちはこれをキラーレーク(殺人湖)と呼んでいます」と同氏は続けた。こうした湖は世界に三つある。カメルーン北部のニオス(Nyos)湖とマヌーン(Monoun)湖、そしてキブ湖だ。

■湖底のメタンを発電源に

 それでも、キブ湖には可能性も秘められている。キブワットが進めているのは、キブ湖の膨大なガスを利用するという世界で類を見ないプロジェクトなのだ。

 スピードボートに乗って湖岸から20分。同社の浮体式プラットホームに到着する。キブ湖のルワンダ側に係留された、配管やフロートがコンパクトに絡み付いた、建物数階分相当の構造物だ。この施設ではごう音を立てながら、水面下約350メートルから二酸化炭素とメタンが飽和した水を吸い上げている。上昇するにつれて圧力の変化により、水とガスが分離する。

 抽出されたメタンはパイプラインを通って、ルワンダの陸上にある第2の施設へ送られ、そこでガスのエネルギーが電気に変換される。二酸化炭素は、微妙な環境バランスを崩さない的確な水深を選んで湖に戻される。

 同社は長期間のメタン抽出によって、湖底の圧力が徐々に低下することを期待している。圧力が下がれば、淡水湖沼噴出のリスクも下がる可能性がある。

■数世紀は枯渇しない

 そうした中、昨年のニーラゴンゴ山の噴火で湖沼噴出の恐れが再燃した。噴火で地震が起きる中、溶岩流で32人が死亡し、建物数百棟が破損した。

 発電所の閉鎖も検討された。しかし技術者らは冷静さを保った。キブワットは、ルワンダの年間消費電力量の約30%を供給している。操業が停止していれば、ルワンダに大きな打撃となっていた。

 2015年にキブ湖の発電事業を立ち上げたのは、キブワットの親会社に当たる米エネルギー企業コントゥアグローバル(ContourGlobal)だ。当初は発電容量を26メガワットから100メガワットに増やす方針だった。

 今は別の企業が独自のガス抽出で、56メガワット規模の発電事業を検討している。一方、コンゴ側では同様の計画は当面ない。

 キブ湖にたまっている膨大なガスが枯渇する時期は、抽出の速度にかかっているとスイス連邦水科学技術研究所(Eawag)のマルティン・シュミット(Martin Schmid)研究員は言う。「よくわかりませんが……。キブワットの事業だけだと、湖のメタンが本当に減るには何世紀もかかるのではないでしょうか」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件