仮想現実(VR)技術を活用したインターネット上の仮想空間「メタバース」は、今後さまざまなシーンでの活用が期待されている。ブランドやビジネスでの展開はもちろん、アートの世界でも話題が絶えない。デジタル技術を使い、鑑賞者を没入させる新しいカタチのアーティストが続々と登場する中、VR /ARアーティストのせきぐちあいみさんはその第一人者的な存在だ。
マサチューセッツ工科大学のメディアラボ元所長で、株式会社デジタルガレージの共同創業者でもある伊藤穰一がナビゲーターを務めるポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― 」では、せきぐちあいみさんがゲストとして出演。この新しい空間での可能性について議論した。
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伊藤穰一(以下、伊藤):せきぐちさんはどういう経緯でバーチャルリアリティーの世界に入られたんですか?
せきぐちあいみ(以下、せきぐち):私は、元々ユーチューバーをやっていました。たまたまVRに触れる機会があり、その時に「空間に立体が描けるなんて、魔法みたい!楽しい!」という気持ちになり、そのままの本能のような気持ちでVRの世界に入っていきました。
伊藤:せきぐちさんがメタバースで絵を描いているシーンをビデオで見たことがあるんですが、とてもスラスラ描いていましたね。立体的に描くというのは技術の習得がとても難しそうに見えるんですが、かなり練習したんではないですか?
せきぐち:元々3Dペン(※)が好きで、立体造形をよく作っていました。なので立体を作るのに慣れてた部分はあるかもしれません。VRで絵を描くことに戸惑う人もいるようなんですが、慣れていないだけで今後はもっと増えてくると思いますよ。これまで、お子さんとかお年寄りの方にも教えたりしたことあるんですが、みんな「楽しい!」「ずっとやっていたい」とおっしゃる方も多いですね。
※空中に立体的に書くことができるペン。インクは樹脂や溶解プラスチックできており、これが瞬時に固まることで立体作品を作ることができる。
メタバースを中心に、アート作品を制作してきたせきぐちさんは、2021年にNFTに参入。OpenSeaに出品された作品は、オークションで約1300万円の値を付け即日落札された。
伊藤:一番最初にNFTが売れたときどんな気分でしたか?
せきぐち:すごくうれしかったですね。金額的にはちょっと信じられませんでした。NFTのことを初めて知ったときは、「いつかはそういうデータが、売り買いされる世界は当たり前に来るだろうな」と思っていましたが、こんなに早くしかもこんなに高額で自分の身に起こるとは思ってもいませんでした。
伊藤:やっぱり、デジタルアーティストが直接お金をもらえるなんて、これまでほとんどなかったですもんね。
せきぐち:そうなんです。NFT以前で、お仕事になってるのは企業やブランドから発注いただくクライアントワークがほとんどだったんです。それもすごくやりがいがありましたし、ブランドとコラボするのはすごく楽しかったんです。ただやっぱり、ゼロから自分で好きに作ったものに価値が生まれるっていうことがNFTでやっと可能になったので、それはすごく幸せだなと感じましたね。
現在、せきぐちさんは、メタバース上に神社を創建したり、仮想空間でライブペイントを実施し寄付を募るチャリティーイベントを開催したり、さらには脳波で絵を描く実験を行うなど精力的に活動を進めている。
さらにインタビューでは、神社とweb3の親和性などについても話が及んだ。詳しくは番組をお聴きいただきたい。
【新刊発売の予告です!】
6月はじめに、伊藤穰一の新しい本が出ます。
その名も『テクノロジーが予測する未来』。web3、メタバース、NFTはこれからどのように個人や、社会を変えていくのでしょうか? 最先端テクノロジーがもたらす驚きの未来を見通す一冊です。Web書店では予約がスタートしました。お楽しみに。
https://www.amazon.co.jp/dp/4815616469/
【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】
番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。
https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0
【編集ノート】
伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。
https://joi.ito.com/jp/archives/2022/04/25/005783.html
■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」
#27 メタバースは芸術家にとって革命的なプラットフォームとなるか?VR/ARアーティストのせきぐちあいみさんと語る