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ロボットがオフィスビルの「設備」になる ~ 東京ミッドタウン八重洲のロボット・インテグレーション

東京ミッドタウン完成イメージ図(竹中工務店提供:三井不動産プレスリリースより)

東京ミッドタウン完成イメージ図(竹中工務店提供:三井不動産プレスリリースより)

 東京駅八重洲口側の駅前に竣工予定の「東京ミッドタウン八重洲」(三井不動産)では、2022年8月にオフィスビルとして初めて、デリバリーや清掃を行う完全自律走行型ロボットの導入が予定されている。

 オフィスの自席でランチのフードデリバリーを注文した場合、多くのオフィスビルでは配達はビルのロビーまで。注文した人は、ランチを受け取りにロビーまで降りる必要がある。東京ミッドタウン八重洲では、ロビーでデリバリーロボットが配達員からランチ受け取る。ロボットは自分でエレベーターに乗り、注文者の席までランチを届けてくれる。

東京ミッドタウンでのロボット運用イメージ(三井不動産プレスリリースより)

 ビル清掃でも、これまでの清掃ロボットは階を移動するためエレベーター利用する際には、人間が同行する必要があった。ところが完全自律走行型ロボットは、自分でエレベーターを呼び、ビルを清掃して回る。これらロボットにより利便性だけでなく、人間同士の接触機会を大きく減らすこともできる。

 三井不動産の報道発表によると、「RICE」(アスラテック株式会社)がデリバリーロボットとして、また清掃ロボットに「RULO Pro」(パナソニック)が導入され、それぞれの業務を担う。(この他、運搬ロボットとして「サウザー」(Doog社)が稼働)

 このように「東京ミッドタウン八重洲」では、別々の会社のロボットが自律的に活動するため、ロボット・インテグレーション(統合管理)が必要になる。同ビルでは、TISインテックグループTIS株式会社が開発した複合ロボット管理プラットフォーム「RoboticBase」が採用されることになった。

さまざまなロボットを統合管理

「DX on RoboticBase」を説明する森氏

 取材のためTISを訪問すると、さっそくロボットが会議室まで案内してくれた。今回はロボティクス関連の包括的サービス「DX on RoboticBase」を推進するシニアエキスパート 荒木幹男氏、主査 森哲也氏にお話を伺った。TISには、AI&ロボティクスサービス部がある。ここでは、マルチベンダー・マルチサービスをポリシーとし、多くの企業と、サービスロボットの活用によるDX化の推進に取り組んでいる。

 ロボットの導入が進むことにより、前述のように、同じ空間で複数のメーカーが製造したロボットが協働するケースが増えてきている。

「マルチベンダー環境で、清掃やデリバリーロボットなどを統合管理する必要性に気づいたのがTISです。人とロボットがどう協働するか。マルチベンダー、マルチサービスで構築して管理できるようにしようという考えが柱になっています」(荒木氏)

 森氏は、顧客のニーズに合ったサービスロボットとIoTやAI技術を組み合わせ、人の業務を代行・分担する環境や仕組みを構築し、導入・運用するまでを「マルチロボットプラットフォーム(RoboticBase)」「マルチロボットインテグレーション」「マルチロボットコンサルティング」という3つのサービスで支援するものだと「DX on RoboticBase」を説明した。

 東京ミッドタウン八重洲で、人とロボットを協働させることについては、2020年から三井不動産とTISの間で話し合いが行われてきた。都心の再開発プロジェクトなどは長いスパンで行われる。そしてその間にもロボットや設備の技術は進化し続けている。これらに的確に対応していく必要があるが、荒木氏は「TISは近年目覚ましい技術革新を遂げ続けるIT業界に身を置くシステムインテグレーターとして貢献できます」と自信を見せた。

ロボットは「設備」になっていく

ロボットでDXを進めると話す荒木氏

 東京ミッドタウン八重洲のプロジェクトに先行して、三井不動産の「日本橋室町三井タワー」でロボット・インテグレーションの実証実験が行われた。ここでのさまざまな検証はおおむね順調に進んだ。「しかし、今回の試みのように、ロボットが自律的にエレベーターを使ってビルのあちこちを移動する場合、エレベーターやセキュリティゲートの問題があり、そしてそれは建物自身を管理する仕組みや、他のベンダーとの連携が関わってきます」(荒木氏)

 ここで荒木氏が面白いことを話してくれた。それは「ロボットは(ビルの)設備として考えるのです」ということだ。

 昔のビルにはエレベーターも自動ドアもなかったが、今ではそれらが設備としてあるのは当たり前だ。今後DXが進み、清掃やデリバリー、警備などをロボットが担うことが当たり前になり、「新しく作るビルはロボットとの協働が前提」となれば「ロボットはビルの“設備”とみなされる」ということだ。エレベーターや電気設備を集中管理するのと同様に、ロボットを管理するプラットフォームも必要となる。さらには、エレベーターや段差、自動ドア、セキュリティゲートなどをロボットが稼働しやすいように整えるなど、ビルの設計にも影響を及ぼすことになるだろう。

DXのさらなる普及には「リターン」が必要

「DX on RoboticBase」による、ロボット・インテグレーションは今後どういった施設に必要なのだろうか。荒木氏は、オフィスビルはもちろん、大型商業施設や医療施設への導入も考えられると述べた。

 郊外型の超大型商業施設は、広い敷地内に巨大な建物が並んでおり、広大な駐車場を備えている。あちこちで買った商品を抱えて施設内をめぐり、さらに駐車場に戻るのは大仕事だ。しかし、店で買った商品はその場でロボットに預け、車まで運んでもらえれば、時間の節約にもなりくたびれることもない。「ビルとロボットを使ったDXの“リターン”とは、人を豊かにするものだと考えています。」(荒木氏)

 医療現場での活用も考えられる、と荒木氏は続けた。「医療関係にはいろいろな法規制があり、なかなかむずかしい面がありますが」と断った上で、「医療現場がひっ迫する要因のひとつとして、高い医療スキルを持った医療従事者が実践しなくてもよい業務までこなしている現実があります。そんなことにもデリバリーロボットは活用できるはずでしょう」と語った。

 東京ミッドタウン八重洲では、ロボットと人間の協働が見られるはずだ。そして、それが風景として馴染むころ、ロボットがどこのビルでもあって当たり前の「設備」として捉えられる時代になるのかもしれない。

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