「DART(二重小惑星進路変更実験)」のポスター。米メリーランド州ローレルのジョンズホプキンス大学応用物理学研究所で開かれた記者会見の会場で(2022年9月12日撮影)。(c)AFP/Jim WATSON
【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)は先月末、無人探査機「DART」を小惑星「ディモルフォス(Dimorphos)」に体当たりさせて軌道を変える、世界初の「地球防衛」実験を実施した。
DART(二重小惑星進路変更実験)ミッションは、宇宙船衝突よる衝撃を利用して小惑星の進路をそらす技術を検証している。いわば、ニュートンの運動法則を頼りに、宇宙空間でビリヤードをするようなものだ。
これは接近する天体から地球を守る方法の一つにすぎない──だが、現在の技術では唯一実行可能な方法だ。
NASAの地球防衛部門を統括するリンドリー・ジョンソン(Lindley Johnson)氏は、最近の記者会見で「今回の実証実験は、将来の実行可能な方法を増やしていく手始めとなる」と述べた。
この他には未来的な響きがする「重力トラクター」や、衝突が想定される天体を核兵器で爆破するというハリウッド(Hollywood)映画さながらのミッションなどの構想もある。
接近する天体を早期(地球に到達する数年~数十年前)に検知できた場合、宇宙船を送り込み、長時間にわたって天体と並んで飛行させて、宇宙船の重力で天体の進路をそらすことが可能となるだろう。これが、いわゆる重力トラクターだ。
DARTプログラムに携わる科学者トム・スタトラー(Tom Statler)氏は、昨年11月のDART打ち上げ時の会見で、この方法の長所は「小惑星を移動させる法則が十分に理解されていることだ。それは重力であり、われわれは重力がどのように働くかを理解している」と説明した。
しかし、宇宙船の質量には制限があるため、直径が500メートルを上回る小惑星に対しては、重力トラクターはあまり効果的ではないだろう。こうした大きい小惑星こそが、まさしく最大の脅威となる可能性がある。
もう一つの選択肢は、核爆弾を打ち上げて、小惑星を別方向に誘導するか、破壊する方法だ。
このテーマに関するNASAの論文は「最も危険な最大級(直径1キロ以上)の『キラー小惑星』に対して唯一有効となり得る戦略かもしれない」と評し、他の方法が失敗に終わった場合の「最後の手段」として、核による防衛を挙げている。
だが、核爆発は地政学的見地から議論を呼んでいる上、宇宙空間での使用は法的に禁止されている。
ロシアの科学者チームは2018年、学術誌「実験・理論物理学ジャーナル(Journal of Experimental and Theoretical Physics)」に発表した論文で、この直接爆破計画について考察している。
E・ユー・アリストワ(E. Yu. Aristova)氏のチームは、ミニチュアの小惑星モデルにレーザーを照射する実験を行った。その結果、直径200メートルの小惑星を爆破するには、1945年に広島に投下された原爆の200倍の威力を持つ爆弾が必要と考えられることが明らかになった。
その場合に最も効果的なのは、小惑星にドリルで穴を開け、爆弾を埋め込んでから爆発させる方法だろうと研究チームは指摘している。ハリウッド映画『アルマゲドン(Armageddon)』とまったく同じシナリオだ。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件