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【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.52 】注目のレイヤー1ブロックチェーンSuiを開発するMysten LabのEvan Chengに聞くブロックチェーンの未来

伊藤穰一(左)とEvan Cheng氏

伊藤穰一(左)とEvan Cheng氏

 元メタの開発者が作った新たなブロックチェーンが話題となっている。今月12日にメインネットローンチしたAptosのほか、現在開発中のSui、Lineraなど、旧フェイスブックの暗号資産プロジェクト「リブラ(『Libra』後に『Diem』に名称変更)」に携わっていたチームが、独自のレイヤー1ブロックチェーンの開発に取り組んでいる。

 伊藤穰一がナビゲーターを努めるポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST  ―変革への道― 」に出演した、Mysten Labの共同創業者Evan Chengもその一人。メタを退社後、レイヤー1ブロックチェーンであるSuiの開発に取り組んでいる。

 Evan Cheng氏は、アップルのSWIFTというプログラミング言語を、オープンソースプロジェクトとして立ち上げるなどの功績を残した後、フェイスブックに移籍し、Libraの開発に携わった。世界屈指のエンジニアであるCheng氏が、なぜ自らブロックチェーンを立ち上げることとなったのか?それは、Libraプロジェクトが大きく関わっていたという。Libraは2018年ごろに開発がスタートしたものの、その構想は実現せず、今年2月に終了している。

伊藤穰一(以下、伊藤):なぜ フェイスブックで仮想通貨事業は実現しなかったんですか?

Evan Cheng (以下、Cheng):理由はいくつかあるんです。政府からの圧力があったことがひとつ。もうひとつは、プロジェクトの位置付けや進め方で失敗したことですね。今にして思えば、インフラと製品を切り離すべきだったんでしょうね。さらに、プロダクトは多くの人を不安にさせてしまったように思います。おそらく最初の段階で正しく定義されなかったのだと思います。良かった面もありました。プログラミング言語Moveや、暗号技術などは優れていました。しかし、システム自体にブレークスルーがなかったんです。唯一の救いは、全てOSSにしたことでした。オープンソースこそが、未来ですからね。学びやコンポーネントなどを、未来に託すことができますから。

伊藤:フェイスブックを退職した時は、起業は決まっていたのですか?

Cheng:去年の中頃、起業するために退職したんです。Libraプロジェクトが頓挫してまいましたからね。我々が作ろうとしていたモノ自体が、大企業に不向きだったのでしょう。

ーー現在、Mysten Labは100人を超える大所帯だ。9月8日には、シリーズBラウンドで3億ドル(約430億円)の資金調達の完了を発表している。現在開発中のSuiは、レイヤー1ブロックチェーンの中でも、スピード、容量、コストなど多くの点でニーズを満たすブロックチェーンになるとその評判は高い。

伊藤:イーサリアムはPoSに移行して、エネルギー問題は解決しましたが、速度、スケーラビリティ、取引コスト、容量の問題はまだ残っていますよね。Suiではこういった問題をどういったスケールで解決していくのか教えていただけますか?

Cheng:ちょっと視点を変えて、その質問に答えてみてもいいですか?私は、スケーラビリティだけでは不十分なように思います。多くのブロックチェーンはスケーラビリティの問題を解決するために、レイヤーを構築してみたりとあれこれやっていますよね。これは、開発者の視点からすれば、まだ核心的な問題は解決できていません。開発者はスケーラビリティについて、あまり気にしていないからです。開発者は何も考えず、ただ「使えるインフラ」を欲しているのです。1秒間に何回取引できるかという観点で考えてはいないのです。彼らは、自分が開発している製品に何が必要かを常に考えています。「もし誰かがインフラの容量を消費していたら、自分のプロダクトに影響があるのか?」「運用コストにはどれくらい影響があるのか?」とね。そう考えると、本当に必要なのは「弾性」なんです。ある時点の需要に見合うように、生産能力を増強する能力です。需要というのは、必ずしも一定ではありませんからね。スケーラビリティについても同じことが言えると思うのです。

伊藤:Suiは、一体いつから使えるようになるのでしょうか?

Cheng:現段階では開発者がDevnetで使用しています。次のフェーズでは、Testnetに進みます。Mainnetに入る前に、さまざまなシナリオを検証しておきたいと思っています。Mainnetは来年1〜3月のローンチを予定しています。

伊藤:それは楽しみですね。半年以内に実現が可能ということですよね?

Cheng:他のシステム同様、準備もなく突然始めるのではなく、ニーズと運用準備のバランスを見ながら進めていきたいと思っています。

 番組では、資金調達の舞台裏、アップル時代に携わったオープンソースプロジェクトの話、日本に対する期待などさまざまな話が繰り広げられた。詳しくは番組をお聴きいただきたい。

【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】

 番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。

https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0

【編集ノート】

 伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2022/10/31/005837.html

JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#52注目のレイヤー1ブロックチェーンSuiを開発するMysten LabのEvan Chengに聞くブロックチェーンの未来

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