Open Innovation Platform
FOLLOW US

米アルテミス計画 月に戻る目的とは?

「アルテミス」計画第1弾として月へと向かう米航空宇宙局(NASA)のカプセル型宇宙船オリオンの船内。座席に置かれているのは試験用人体模型(2022年11月16日取得)。(c)AFP PHOTO : NASA

「アルテミス」計画第1弾として月へと向かう米航空宇宙局(NASA)のカプセル型宇宙船オリオンの船内。座席に置かれているのは試験用人体模型(2022年11月16日取得)。(c)AFP PHOTO : NASA

【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)は、火星への有人飛行を実現するには、まず月面への再着陸が必須だと主張している。その理由を検証する。

■長期宇宙ミッション

 人類が初の月面着陸を果たしたアポロ(Apollo)計画とは異なり、今回の有人月面探査計画「アルテミス(Artemis)」のミッション期間は数週間に及ぶ。そのためNASAは月に人が長期的に滞在できる環境を構築したいと考えている。目的は、数年にわたる火星への往復飛行に向けて、いっそう適切な準備を行うことだ。

 地球大気圏外の宇宙空間では、放射線による影響がはるかに大きく、深刻な健康リスクとなる。そのため、アルテミス計画では最初のミッションから、宇宙放射線が生物に及ぼす影響の調査と、放射線防護ベストの有効性の評価を目的とする実験を多数実施する予定だ。また、地球からの物資運搬コストの低減を目的に、NASAは月面上に存在する資源の活用法を学びたいと考えている。

 特に、月の南極に氷の形で存在することが確認されている水は、分解して水素原子と酸素原子を生成することで、ロケット燃料に変えられるかもしれない。

■最新機器のテスト

 NASAは、火星ミッションに向けて進化し続ける各種技術を、月でテストしたいと考えている。最初は、最新の船外活動用宇宙服だ。宇宙服の設計は、米宇宙企業アクシオムスペース(Axiom Space)が担当する。早ければ2025年に実施される最初の有人月面探査ミッションで使用される。

 この他、宇宙飛行士が移動に利用する加圧型/非加圧型の探査車や、月面前進基地の固定式居住設備が必要になる。さらにNASAは、エネルギー源の持続可能な利用のために、ポータブル核分裂システムの開発に取り組んでいる。

■中継点の建設

 アルテミス計画の主要な柱の一つは、月を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ(Gateway)」の建設だ。ゲートウェイは、火星飛行への中継点として機能する。

 ゲートウェイ計画の責任者、ショーン・フラー(Sean Fuller)氏は、AFPに「必要な機材を『複数回の打ち上げ』ですべて宇宙ステーションに送った上で、そこから火星に向けて出発できる」と語った。

■対中国の主導権維持

 火星に向けた中継地点ということだけでなく、米国にとっては中国との月面開発競争で先手を打つという意味もある。中国は、2030年までに宇宙飛行士を月へ送り込む計画を立てている。

 NASAのビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は、最近のインタビューで「いきなり中国が月に到達し、『わが国の排他的地域だ』と主張しだすような事態は望んでいない」と語っている。

■科学のために

 アポロ計画では、月の石を400キロ近く地球に持ち帰ったが、新たなサンプルは、月という天体とその形成に関する知識をさらに深めるものになると考えられる。

 NASAのジェシカ・メイヤー(Jessica Meir)宇宙飛行士は、AFPの取材に「アポロ計画で米国が採取したサンプルによって、太陽系に対する見方が変わった」と語る。「アルテミス計画にも同じことが期待できると思う」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件